認定NPO法人の認定基準は全部で9つ
認定NPO法人は、平成13年に創設された制度です。一定の基準を満たし、国税庁長官から認定を受けた認定NPO法人は、税務上の優遇措置を受けることができました。しかし、その認定基準が厳しいため、認定NPO法人の数はなかなか増加しませんでした。
そこで、平成23年6月にNPO法の改正及びそれに伴う租税特別措置法の改正が行われ、平成24年4月1日から施行されました。
NPO法第44条に、認定NPO法人について規定されています。
認定NPO法人の概要
認定NPO法人としての認定を受けるためには
次の書類を所轄庁に提出しなければなりません。
- 実積判定期間内の日を含む各事業年度の寄附者名簿
(ただし、条例個別指定の基準に適合するNPO法人及び仮認定NPO法人は不要) - 認定基準に適合する旨を説明する書類
- 寄附金を充当する予定の具体的な事業内容を記載した認定申請書類
主な改正点
次の通りです。
・認定機関が、国税庁長官から都道府県等に変更
・パブリック・サポート・テスト(PST)基準の緩和
・設立5年以内のNPO法人にPSTを免除した仮認定制度の創設
・初めての認定申請に限り、実績判定機関を5年から2年に短縮
PST基準の緩和や仮認定NPO法人制度の創設により、認定NPO法人制度のメリットが受けやすくなりました。
参考までに、認定NPO法人等(仮認定NPO法人を含みます。)に対する税務上の優遇措置とは、次の事項をいいます。
- 認定NPO法人のみなし寄附金の特例措置
- 認定NPO法人等へ寄附をした者への特例措置
- 認定NPO法人に相続財産を贈与した場合の相続税非課税の特例措置
「等」がついているのは②だけです。「等」とは、具体的に仮認定NPO法人を指します。つまり、仮認定NPO法人には①及び③の適用はありません。
認定NPO法人になるための認定基準
(1)PST(パブリック・サポート・テスト)に関する基準(NPO法第45条第1項第1号)
PSTとは、NPO法人が広く市民からの支援を受けているかどうかを判断するための基準であり、次の3つの基準のいずれかに適合することが必要です。詳細は、後ほどご説明します。
① 相対値基準
② 絶対値基準
③ 条例個別指定基準
(2)活動の対象に関する基準(NPO法第45条第1項第2号)
実積判定期間における事業活動のうち、次の4つの活動の占める割合のすべてが50%未満になることが必要です。詳細は、別の機会に説明します。
① 会員又はこれに類する者に対する資産の譲渡若しくは貸付又は役務の提供、会員等相互の交流、連絡又は意見交換その他その対象が会員等である活動
② 特定の範囲の者(会員等、特定の団体の構成員、特定の職域に属する者、地縁に基づく地域に居住し又は事務所その他これに準ずるものを有する者)に便益が及ぶ活動
③ 特定の著作物又は特定の者に関する普及啓発、広告宣伝、調査研究、情報提供その他の活動
④ 特定の者に対し、その者の意に反した作為又は不作為を求める活動
(3)運営組織及び経理に関する基準(NPO法第45条第1項第3号)
組織運営及び経理に関して、次の4つの基準をすべて満たすことが必要です。
① 各役員について、次に掲げる者の数の役員の総数に占める割合が、それぞれ3分の1以下であること
・役員並びに当該役員の配偶者及び三親等以内の親族並びに当該役員と特殊の関係のある者
・特定の法人(当該法人との間に発行済株式又は出資(その有する自己の株式又は出資を除く)の総数又は総額の50%以上の株式又は出資の数又は金額を直接又は間接に保有する関係のある法人を含む)の役員又は使用人である者並びにこれらの者の配偶者及び三親等以内の親族並びにこれらの者と特殊な関係のある者
② 各社員の表決権が平等であること
③ その会計について公認会計士若しくは監査法人の監査を受けていること又は青色申告法人と同等の帳簿及び書類を備え付けてこれらにその取引を記録し、かつ、当該帳簿及び書類を保存していること
④ その支出した金銭でその費途が明らかでないものがあることその他の不適切な経理が行われていないこと
(4)事業活動に関する基準(NPO法第45条第1項第4号)
その事業活動に関して、次の4つの基準をすべて満たすことが必要です。
① 次に掲げる活動を行っていないこと
・宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成すること
・政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対すること
・特定の公職の候補者若しくは公職にある者又は政党を推薦し、支持し、又はこれに反対すること
② その役員、社員、職員若しくは寄附者若しくはこれらの者の配偶者及び三親等以内の親族又はこれらの者と特殊な関係のある者に対し特別の利益を与えないこと
③ 実積判定期間における事業費の総額のうちに特定非営利活動に係る事業費の額の占める割合又はこれに準ずるものの割合が80%以上であること
④ 実積判定期間における受入寄附金総額の70%以上を特定非営利活動に係る事業費に充てていること
(5)情報公開に関する基準(NPO法第45条第1項第5号)
事業報告書等、役員名簿及び定款等について閲覧の請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これをその事務所において閲覧させることが必要です。
(6)事業報告書等の提出に関する基準(NPO法第45条第1項第6号)
都道府県等の条例で定めるところにより、毎事業年度1回、事業報告書等を所轄庁に提出することが必要です。
(7)不正行為等に関する基準(NPO法第45条第1項第7号)
法令又は法令に基づく行政庁の処分に違反する事実、偽りその他不正により利益を得、又は得ようとした事実その他公益に反する事実がないことが必要です。例えば、事業報告書等の期限後提出があった場合には、法令違反となり認定の基準に合致しないこととされるため、留意が必要です。
(8)設立後の経過期間に関する基準(NPO法第45条第1項第8号)
認定NPO法人の申請書を提出した日を含む事業年度の初日において、その設立の日以後1年を超える期間が経過していることが必要です。
(9)認定基準適合期間に関する基準(NPO法第45条第1項第9号)
実績判定期間において、上記(3)、(4)①及び②並びに(5)から(7)までに掲げる基準(当該実績判定期間中に、認定NPO法人の認定等を受けていない期間が含まれている場合には、当該期間については上記(5)④から⑩までに掲げる基準を除く)に適合していることが必要です。
PST(パブリック・サポート・テスト)
PST(パブリック・サポート・テスト)とは、NPO法人が広く市民からの支援を受けているか否かを判断するための基準であり、次の3つの基準のいずれかに適合する必要があります。
(1)相対値基準(NPO法第45条第1項第1号イ)
実績判定期間における総収入金額に占める受入寄附金総額の割合が20%以上になることが必要です。
(分子) 受入寄附金総額
(分母) 総収入金額
ただし、「一定の額を分子、分母に加減」して計算を行います。上記とは別に、小規模NPO法人には、簡便的な計算方法が認められています。
この場合の小規模NPO法人とは、実績判定期間における平均総収入金額が800万円以下であり、1者につき3,000円以上の寄付金で寄附者が明らかなものを50者以上の寄附(役員及び社員を除く)から受け入れているNPO法人のことをいいます。
「簡便」の意味は、「一定の額を分子、分母に加減」の範囲が狭くなっていることにあります。
(2)絶対値基準(NPO法第45条第1項第1号ロ)
実積判定期間内の各事業年度の寄附金総額が3,000円以上である寄附者の数の合計が年平均100名以上になることが必要です。
寄附者数の算定には、次の事項に留意してください。
☆氏名又は名称及び住所又は主たる事務所の所在地が明らかな寄附者に限定されます。
☆寄附者本人と生計を一にする者も含めて1名と数えます。
☆NPO法人の役員及び役員と生計を一にする寄附者は対象外となります。
絶対値基準において寄附金として認められるためには、次の2要件を満たさなければなりません。
① 支出する側に任意性があること
寄附金(物品)を出す寄附者自身が、支払うか否か、その金額を自由に決めることができること。
② 直接の反対給付がないこと
寄附者が、支出した寄附金の代わりに一般に流通するような商業的価値を持つ物品やサービルを受け取らないこと。
会費や協賛金という名目であっても、上記の2要件を満たせば寄附金として取り扱うことができます。しかし、協賛企業について、その名称だけでなく住所や電話番号まで公表した場合は、広告宣伝というサービスを受領した(対価性あり)とみなされ、寄附金とは認められない可能性があります。
(3)条例個別指定基準(NPO法第45条第1項第3号)
都道府県又は市町村が個人住民税の寄付金税額控除の対象として条例で個別に指定したNPO法人については、認定NPO法人の認定を受けるに当たり、PSTの要件を満たすことになります。この場合、認定申請書を提出する日の前日において、都道府県又は市町村の条例で個別に指定を受けており、かつ、その条例の効力が生じていることが必要です。
活動の対象に関する基準
活動の対象に関する基準とは、実積判定期間における事業活動のうち次の4つの活動の占める割合のすべてが50%未満であることをいいます。つまり、会員のため、特定の者のために活動する割合が全体の50%内に収まっていないと認定されません。
① 会員又はこれに類する者に対する資産の譲渡若しくは貸付又は役務の提供(以下、「資産の譲渡等」という)、会員等相互の交流、連絡又は意見交換その他その対象が会員等である活動
② 特定の範囲の者(会員等、特定の団体の構成員、特定の職域に属する者、地縁に基づく地域に居住し又は事務所その他これに準ずるものを有する者)に便益が及ぶ活動
③ 特定の著作物又は特定の者に関する普及啓発、広告宣伝、調査研究、情報提供その他の活動
④ 特定の者に対し、その者の意に反した作為又は不作為を求める活動
上記のうち、①について説明します。
「会員に類する者」とは、次に掲げる者をいいます。
イ. NPO法人から継続的に若しくは反復して「資産の譲渡等」を受ける者又は相互の交流、連絡若しくは意見交換に参加する者としてNPO法人の帳簿又は書類その他に氏名(法人にあっては、その名称)が記載された者であって、NPO法人から継続的に若しくは反復して「資産の譲渡等」を受け、又は相互の交流、連絡若しくは意見交換に参加する者
ロ. NPO法人の役員
次に掲げる活動は、①の活動から除かれます。
イ. NPO法人が行う「資産の譲渡等」で、その対価として当該資産の譲渡等に係る通常の対価の額のおおむね10%に相当する額以下のもの及び交通費、消耗品費その他当該資産の譲渡等に付随して生ずる費用でその実費に相当する額(以下、「付随費用の実費相当額」という)以下のものを会員等から得て行うもの
ロ. NPO法人が行う役務の提供で、地域別最低賃金の額を会員等がNPO法人に支払う当該役務の提供の対価の額の算定の基礎となる額とみなして、これと当該役務の提供の従事者の作業時間数に基づいて算出される金額におおむね相当する額以下のもの及び「付随費用の実務相当額」以下のものをその対価として会員等から得て行うもの
ハ.非特定営利活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動又はこれに準ずる活動として都道府県等の条例で定める活動を主たる目的とするNPO法人が行うその会員等の活動(公益社団法人若しくは公益財団法人である会員等又は認定NPO法人である会員等が参加しているものに限る)に対する助成