税金豆知識

04/15/2020

国税通則法 (14)

「仕事の都合で海外へ出張している」との理由は、国税通則法11に規定する「災害その他やむを得ない理由」に該当すると思う。
申告期限の延長はできるか?

この場合は、申告等する者の重症病その他の自己の責めに帰さないやむを得ない事実に当たらないから、災害その他やむを得ない理由」に該当しません。

なお、申告等の行為の不能に直接因果関係を有する事実としては、次のものがあります(国税通則法基本通達11条関係の1)。
イ 地震、暴風、豪雨、豪雪、津波、落雷、地滑り、その他の自然現象の異変による災害
ロ 火災、火薬類の爆発、ガス爆発、交通途絶その他の人為による異常な災害
ハ 申告等をする者の重症病、申告等に用いる電子情報処理組織で国税庁が運用するものの期限間際の使用不能その他の自己の責めに帰さないやむを得ない事実

期限後申告等があった場合の加算税の賦課決定期限は、法定申告期限から5年間であるから、法定申告期限から4年11か月後に自主的に期限後申告書を提出しようと思う。
問題はあるか?

令和2年4月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について、賦課決定することができなくなる日前3月以内にされた納税申告書の提出(調査による更生決定を予知してされたものを除く。)に係る無申告加算税(5%)の賦課決定については、当該申告書の提出がされた日から3月を経過する日までに行うことができます(国税通則法70④令和2年改正法附則52①)。

税務署から平成30年分から令和2年分までの実地調査に係る事前通知が届いた。
とりあえず修正申告をするつもりだが、問題はあるか?

平成29年1月1日以降に法定申告期限等が到来する国税については、調査対象税目、調査対象期間及び実地調査を行う旨の通知以降、かつ、その調査があったことにより更生を予知する前にされた修正申告に基づく過少申告加算税の割合については、5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%)とされました(国税通則法65①②、平成28改正法附則54③)。

したがって、この場合に調査対象の全年分について5%(加重分については10%)の割合で過少申告加算税が賦課されます

青色申告をしているので、令和X年分に生じた純損失の額について繰戻しによる還付請求をするつもりである。
所得税が減額になることに伴い、復興特別所得税も減額して還付請求していいか?

青色申告者のうち、その年に生じた純損失の金額の全部又は一部を前年分の所得金額から控除したところで税額を再計算すると税額が還付となる場合など、一定の要件を満たせば「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求手続」をすることができます。

しかし、この場合に還付請求ができるのは所得税のみであり、復興特別所得税については還付請求できません(所得税法142)。

政党等寄附金特別控除(税額控除)について、当初の申告で適用受けるのを忘れた。
更生の請求によって適用を受けることはできるか?

政党等寄附金特別控除(税額控除)は、確定申告書に控除に関する記載があり、計算に関する明細書や証明書類の添付がある場合に限り適用があるものとされている(租税特別措置法41の18③)から、更生の請求は認められません

ただし、寄附金控除については、政党等寄附金特別控除(税額控除)のような記載要件等はないことから、更生の請求により適用できます。

家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例について、当初の申告で特例計算をしなかった。
更生の請求によって適用を受けることはできるか?

家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例は、一定の場合に必要経費を55万円(令和元年分以前は65万円)とするという規定であって、「できる」規定ではありません。
また、特例計算をした旨の確定申告書への記載要件はありません(租税特別措置法27)。

したがって、この場合に更生の請求をすることができます。

当初の申告で医療費控除の適用を忘れてしまった。
「医療費控除の明細書」を添付して更生の請求書を提出すればいいか?

更生の請求書には、請求の理由の基礎となる「事実を証明する書類」を添付しなければなりません。
したがって、医療費控除の適用を求める場合には、「事実を証明する書類」として支払った医療費のすべてに係る「領収書」又は「医療費通知」を添付する必要があります(国税通則法23③、国税通則法施行令6②)。
これは、電子により更生の請求書を提出する場合についても同様です。

令和X年分の所得税について、申告義務のあった父が申告書を提出しないまま、令和X年の翌年1月31日に亡くなった。
準確定申告書の提出期限は、令和X年分の法定申告期限である令和X年の翌年3月15日か?

法定申告期限前に死亡した納税者の相談人は、原則としてその相続の開始があったことを知った日の翌日から4月以内、令和X年分及びその翌年分に係る準確定申告書を提出することになります(所得税法124、125)。

提出期限が3月15日である令和X年分からの青色申告承認申請書を令和X年3月15日の消印で郵送した。
令和X年分からの青色申請は承認されるか?

「青色申告承認申請書」は、発信主義が適用される「国税庁長官が定める書類」に該当するため、この場合は令和X年3月15日に提出されたものとみなされます。

つまり、令和X年分から適用されます。

確定申告書に記名押印するのは、慣習によるものか?

申告書、申請書、届出そのたの書類を提出する者は、その提出する書類に指名及び住所又は居所を記載しなければならないこととされています(国税通則法124)。

≪追記≫
令和3年度税制改正大綱において以下のような内容が明記されました。
「税務署長等に提出する国税関係書類において、実印・印鑑証明を求めている手続き等を除き、令和3年4月1日以後に提出する税務関係書類について押印義務が廃止されます。」
上記の見直しは、令和3年4月1日前においても、運用上、押印がなくても改めて求めないことになります。

つまり、令和2年分の確定申告から適用可能です。

居住用不動産の取得費の計算において、事業用資産の償却率を適用して償却費相当額を算出していいか?

非事業用資産の耐用年数は省令で規定する耐用年数に1.5を乗じて計算した年数を基に、残存価額を10%とする旧定額法に準じて計算することとなります。

なお、耐用年数に1.5を乗じて計算した年数に1年未満の端数が生じたときは、その端数は切り捨てて、また、また、経過年数の6か月以上の端数は1年とし、6か月未満の端数は切り捨てます(所得税法施行令85)。

令和×年の還付申告書を提出できる最終日は、法定申告期限日である令和×1年3月15日から5年後の令和×6年3月15日か?

所得税の還付申告書を申告できる期間は、申告書を提出できる日から起算して5年間です(国税通則法74①)。
還付申告書の提出期間は、翌年1月1日から3月15日までです。還付請求できる日は、申告義務の有無に関係なく翌年の1月1日に統一されています。

したがって、令和×年の還付申告書を提出できる最終日は、その5年後の応当日の前日である令和×5年12月31日です。

居住者が年の途中で日本を出国する(外国で暮らす)場合、納税管理人を定めていても、出国する日までにその年の確定申告書を提出しなければならないか?

所得税法上の「出国」とは、納税管理人を定めずに国内に住所及び居所を有しなくなる場合をいいます(所得税法2①四十二)。
したがって、問いの場合は「出国」に該当せず、納税管理人を通じて通常の確定申告期間(翌年2月16日から3月15日まで)に確定申告を行うことになります(国税通則法117、所得税法120、126、127)。

更正の請求は、どんなときに行うのか?

更正の請求書が提出されると、税務署ではその内容の検討をして、納め過ぎの税金がある等(繰越損失の金額が増える場合を含む。)と認めた場合には、減額更正(更正の請求をした人にその内容が通知されます。) をして税金を還付することになります。

したがって、所得金額の増減や所得控除の追加があっても、最終的な税額に異動がない場合は、更正の請求はできません。
更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。

土地等譲渡所得 (28)

通勤用に使用していた自動車を売却したところ譲渡損失が発生したため、他の所得と通算して申告を行った。
問題はあるか?

通勤用自動車は「生活の用に供する資産」として取り扱われるため、利益が出ても課税されない反面、損失についても生じなかったことになり、他の所得から差し引きことはできません(所得税法9①九、②一、所得税法施行令25)。

購入時より値下がりした土地(取得時3億円、交換時1億円)を、他の者の保有する土地(1億円)と等価交換した。
固定資産の等価交換の特例を適用できるか?

所得税第58条に規定する固定資産の交換の趣旨は、その譲渡所得課税を将来に繰り延べるものであり、譲渡損失を繰り延べるものではありません。

したがって、譲渡損失が発生する場合については、所得税第58条の適用はありません。

甲が所有している居宅(500万円)及びその敷地(1,000万円)と乙が所有している居宅(1,000万円)及びその敷地(500万円)を等価交換した。
固定資産の等価交換の特例を適用できるか?

双方が所有する土地及び建物を交換した場合には、土地は土地、建物は建物とそれぞれ交換したものとみなされます。

この場合において、それぞれの土地又は建物の価額の差額がこれらの価額のうちいずれか多い価額の100分の20を超えるときは、土地又は建物の交換について所得税58条の適用は認められません(所得税法58①、②、所得税基本通達58-4)。

土地の譲渡の日及び取得の日の状況は、次のとおりであった。
≪譲渡の日≫契約:令和2年、引渡し:令和3年
≪取得の日≫契約:平成27年、引渡し:平成28年

令和3年分(引渡しベース)として譲渡所得を申告するのであれば、取得の日も引渡しを受けた平成28年とすべきか?
分離短期譲渡所得としての計算をすることになるが。

譲渡の日を引渡しのあった令和3年としても、取得の日を契約のあった平成27年とし、分離長期譲渡所得として申告することは可能です(所得税基本通達33-9で準用する36-12)。

なお、土地等又は建物等を譲渡した場合における分離長期譲渡所得及び分離短期譲渡所得の区分は、当該譲渡をした年の1月1日において所有期間が5年を超えるか否かにより判定します(租税特別措置法31①、32①)。

建物を取り壊し、更地にして土地を売却した際、取壊し費用のみを譲渡費用として譲渡所得の計算を行った。
問題はあるか?

譲渡費用には、土地を譲渡するためにその土地の上にある建物等の取壊しを行った費用の他、資産損失の金額(建物の未償却残高相当額)も含まれます(所得税基本通達33-7(2)、33-8)。

売買契約を締結した後、さらに有利な条件でその不動産を売却するため、受領した手付金50万円の倍返し(手付金の返還部分50万円と違約金部分50万円の計100万円)により売買契約を解除した。
その後、さらに有利な条件でその不動産を売却した場合の譲渡所得の計算上、倍返しした全額(100万円)は譲渡費用に算入できるか?

違約金部分の50万円は譲渡費用になります(所得税基本通達33-7(2))。

ただし、手付金の返還部分(50万円)は、先に受領した金員の返還であるため、譲渡費用には該当しません。

贈与により取得した不動産を売却したが、取得した際に支払った登記費用や不動産取得税を取得費に含めずに譲渡所得の計算を行った。
問題はあるか?

相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(租税特別措置法39)は、取得費に相当する金額に、相続税額のうち譲渡した資産に対応する部分として政令で定めるところにより計算した金額を加算するものです(租税特別措置法39①、租税特別措置法施行令25の16①、所得税33③、38①)。

したがって、概算取得費により計算した取得費に、譲渡した資産に対応する相続税額を加算することができます(所得税38①、租税特別措置法31の4①、租税特別措置法基本通達31の4-1)。

相続により取得した不動産を売却したが、概算取得費を適用する場合には相続税額の取得費加算は適用できないか?

相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(租税特別措置法39)は、取得費に相当する金額に、相続税額のうち譲渡した資産に対応する部分として政令で定めるところにより計算した金額を加算するものです(租税特別措置法39①、租税特別措置法施行令25の16①、所得税33③、38①)。

したがって、概算取得費により計算した取得費に、譲渡した資産に対応する相続税額を加算することができます(所得税38①、租税特別措置法31の4①、租税特別措置法基本通達31の4-1)。

居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算の特例及び繰越控除の特例の適用に当たって、売却した居住用不動産の敷地面積が600㎡であったため、500㎡を超える部分に相当する譲渡損失の金額をないものとして、給与所得の損益通算を行った。
問題はあるか?

譲渡資産の土地等の面積が500㎡を超える場合であっても、譲渡損失の全額を譲渡した年分の損益通算の対象とすることができます(租税特別措置法41の5①)。

また、損益通算をしてもなお控除しきれない金額で翌年に繰り越される損失の金額のうち、譲渡資産の土地等の面積が500㎡を超える部分に相当する金額は繰り越すことができません(租税特別措置法41の5⑦三)。

母が亡くなるまで居住していた家屋とその敷地を相続し、年内に売却した。
母の死に伴い、相続税の申告・納税を行った。
譲渡所得の申告に当たって、被相続人の居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例(租税特別措置法35③)と相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(租税特別措置法39)を併用して申告していいか?

被相続人の居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例(租税特別措置法35③)と相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(租税特別措置法39)は選択適用となります(租税特別措置法35③、租税特別措置法基本通達35-8)。

ただし、譲渡資産が被相続人の居住用部分と非居住用部分とから成る被相続人居住用家屋又はその敷地等である場合において、非居住用部分の譲渡についてのみ租税特別措置法39条の規定の適用を受けるときは、居住用部分の譲渡が租税特別措置法35条3項の規定による要件を満たすものである限り、租税特別措置法35条3項の適用があります。

特例の内容は何か?

個人が、平成21年に取得した国内にある土地又は土地の上に存する権利(以下「土地等」といいます。)を平成27年以降に譲渡した場合又は平成22年中に取得した土地等を平成28年以降に譲渡した場合には、その土地等に係る譲渡所得の金額から1,000万円を控除することができます(租税特別措置法35の2①)。

譲渡所得の金額が1,000万円に満たない場合にはその譲渡所得の金額が控除額になります。

母から実家を相続した長男は、その後実家に居住することなく実家を売却した。
相続する1年前までは長男も実家に住んでいたことから、居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例(租税特別措置法35①)を適用してもいいか?

長男は、相続した家屋に所有者として居住した事実がないため、租税特別措置法35条1項の規定は適用できません(租税特別措置法31の3の6(1)。35-6)。

ただし、同条3項の被相続人の居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例の要件を満たす場合には、3,000万円の特別控除が受けられます。

保証債務を履行するために資産を売却したが、なかなか買手がつかなかったので、銀行借入によって履行した。
その後土地を売却し、売却代金を銀行からの借入金返済に充当した。
このとき、保証債務を履行するために資産を譲渡した場合の課税の特例を適用してもいいか?

借入金を返済するための資産の譲渡が、実質的に保証債務を履行するためのものであると認められるときは、「保証債務を履行するための譲渡があった場合」に該当します。

なお、その譲渡が保証債務を履行した日からおおむね1年以内に行われている場合は、実質的に保証債務を履行するために譲渡があったものとして差支えありません(所得税基本通達64-5)。

不動産を売却する際に支払った抵当権抹消登記費用を譲渡費用に加算して譲渡所得の計算を行っていいか?

抵当権を抹消することが不動産を売却する前提として必要であったとしても、売買を実現するために直接要した費用ではないため、譲渡費用には含まれません(所得税基本通達33-7)。

所有する不動産を売却したところ、譲渡損失が発生した。
その譲渡損失と給与所得を損益通算していいか?

不動産の譲渡により生じた損失の額を、他の所得と損益通算することは原則としてできません(租税特別措置法31①、32①)。
ただ、不動産の売却であっても、次の特例を適用することにより、譲渡損失の金額と他の所得との損益通算及び翌年以降への損失の繰り越しが認められます。

・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(租税特別措置法41の5)。
・特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(租税特別措置法41の5の2)。

特例の内容、要件は何か?

保証債務の履行とは、本来の債務者が債務を弁済しないときに保証人などが肩代りをして、その債務を弁済することをいいます。
保証債務を履行するために土地建物などを売った場合には、所得がなかったものとする特例があります(所得税法64)。

所得がなかったものとする部分の金額は次の3つのうち一番低い金額です。
① 肩代りをした債務のうち、回収できなくなった金額
② 保証債務を履行した人のその年の総所得金額等の合計額
③ 売った土地建物などの譲渡益の額

この特例を受けるには、次の3つの要件すべてに当てはまることが必要です。
① 本来の債務者が既に債務を弁済できない状態であるときに、債務の保証をしたものでないこと
② 保証債務を履行するために土地建物などを売っていること
③ 履行をした債務の全額又は一部の金額が、本来の債務者から回収できなくなったこと
この「回収できなくなったこと」とは、本来の債務者が資力を失っているなど、債務の弁済能力がないため、将来的にも回収できない場合をいいます。

父が平成21年に4,000万円で購入した土地を平成25年に相続により取得し、令和元年に当該土地を5,000万円で売却した。
特定の土地等の長期譲渡所得の特別控除を適用して申告していいか?

取得期間内に土地等を取得した個人(父)から相続、遺贈及び贈与により取得した土地等を譲渡した場合は、特定の土地等の長期譲渡所得の特別控除の対象とはなりません(租税特別措置法35の2①、租税特別措置法基本通達35の2-1)。

なお、父が土地を取得した価額及び取得した時期は引き継ぐこととなります(所得税60)。

公益財団法人に対し土地を寄附したが、所得税は非課税であるとして、何の手続きもしなかった。
問題はあるか?

公益法人等に土地等を寄附した場合には、原則として、寄附等の時価により譲渡があったものとみなされ、これらの財産の値上がり益に対して所得税が課されます(所得税法59①)。

しかしながら、その寄附が、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること等一定の要件を満たすものとして、国税庁長官の承認を受けたときは、その所得税について非課税となります(租税特別措置法40①)。

居住用不動産の取得費の計算において、事業用資産の償却率を適用して償却費相当額を算出していいか?

非事業用資産の耐用年数は省令で規定する耐用年数に1.5を乗じて計算した年数を基に、残存価額を10%とする旧定額法に準じて計算することとなります。
なお、耐用年数に1.5を乗じて計算した年数に1年未満の端数が生じたときは、その端数は切り捨てて、また、また、経過年数の6か月以上の端数は1年とし、6か月未満の端数は切り捨てます(所得税法施行令85)。

売却した不動産は、過去に特定の居住用財産の買換えの特例の買替資産として取得したものである。
実際の取得価額を基に譲渡所得の計算を行っていいか?

特定の居住用財産の買換えの特例(租税特別措置法36の2)の適用を受けた買替資産を売却した場合の取得価額は、実際の取得に要した価額ではなく、買換えの特例の適用を受けた譲渡資産の取得価額と譲渡費用の合計額を基に所定の方法により計算した金額となります(租税特別措置法36の4、租税特別措置法施行令24の3)。

父から相続した不動産を売却したが、当該不動産は相続税の課税対象とされていたため、その相続税評価額を取得費として譲渡所得の計算を行っていいか?

相続により取得した不動産は、被相続人が実際に取得した時期と価額を引き継ぐことになります(所得税法60①一)。
なお、相続開始の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合には、相続税額のうち、一定の計算方法により計算した額を譲渡所得の金額の計算上取得費として加算することができます(租税特別措置法39①)。

所有する土地を売却するために借地人に支払った立退料は、譲渡費用に当たるとして譲渡所得の計算を行っていいか?

借地権を消滅させた後にその土地を売却したことは、旧借地権部分と旧底地部分をそれぞれ譲渡したことになります。
そして、借地権を消滅させるために借地人に支払った対価(立退料)は、旧借地権の取得費となり、旧借地権部分は短期譲渡所得となります(所得税基本通達33-11の2、38-4の2)。

妻と離婚することになり、居住用不動産を財産分与したが、慰謝料として渡したものであるため、譲渡所得の申告は不要と考えていいか?

不動産を分与(所有権移転)した場合、その時の不動産の時価で譲渡が行われたことになるため、その不動産の時価を譲渡価額として譲渡所得の計算を行います(所得税法36①②、所得税基本通達33-1の4)。

なお、分与した不動産が財産分与者の居住用である場合は、各種居住用財産の特例の適用が受けられることがあります。
しかし特例を適用するためには正式に離婚が成立している必要があるので、タイミングに注意してください。

(妻サイド)
離婚後に財産分与によって受け取った財産については原則非課税です。
しかし、財産が過大に分けられた場合には贈与税がかかります。

父の相続財産の遺産分割において、長男が全ての財産を相続する代わりに、従来から所有していたA不動産を代償財産として弟に引き渡した。
譲渡所得の申告は不要と考えていいか?

長男が弟にA不動産を引き渡した時点で、A不動産を時価により譲渡したことになり、譲渡所得の課税対象になります(所得税法36①②、所得税基本通達33-1)。

相続財産のほとんどが不動産の場合、法定相続割合で共有にしてしまうと後々トラブルが予想されるが、どうしたらいいのか?

代償分割とは、遺産の分割に当たって共同相続人などのうちの1人又は数人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が他の共同相続人などに対して代償金を与える方法です。

つまり、ある相続人にその不動産を相続させる代わりに、他の相続人に対して代償金を支払うのです。

父は、自身が所有する時価3,000万円の不動産を1,000万円で長男に売却した。
譲渡価額は3,000万円として譲渡所得の計算をしていいか?

父は、譲渡価額を1,000万円として譲渡所得の計算を行い、長男は、時価と売買価格との差額2,000万円について贈与税が課されます(所得税法36①、相続税法7)。
なお、問いは、時価の2分の1未満の価額で譲渡した場合に該当するので、父の譲渡価額が取得費と譲渡費用の合計額に満たないときは、その不足額は譲渡所得の金額の計算上なかったものとみなされます(所得税法592、所得税法施行令169)。

法人に対して、時価3,000万円の不動産を1,000万円で売却したため、譲渡価額は1,000万円として譲渡所得の計算をしていいか?

個人が法人に対して、時価の2分の1未満の価額で譲渡した場合には、時価により譲渡したものとみなされます(所得税法59①二、所得税法施行令169)。
したがって、譲渡価額は3,000万円です。

売買契約において、売却後の期間に対応する固定資産税精算金を買主が支払う旨の特約があったが、売買価格のみをもって譲渡価額としていいか?

売買契約書の特約条項欄の内容を確認し、固定資産税の精算金があり、売買価格とは別に受領している場合は、その金額を譲渡価額に加算します(所得税法36①)。
一方、買主も同様にその金額を取得価額に加算します。

所得税 (43)

不動産所得及び事業所得を営む者が青色申告特別控除55万円の適用を受けるには、事業所得に係る損益計算書と貸借対照表を添付すればよいか?

不動産所得、事業所得若しくは山林所得を生ずべき業務のうち2以上の業務を営む場合又は事業所得を生ずべき業務のうち農業と農業以外の業務を営む場合には、損益計算書はそれぞれの業務に係るものの区分ごとに各別に作成し、貸借対照表は全ての業務に係るものを合併して作成します(所得税法基本通達148-1)。

新型コロナウイルス感染症の影響により、生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金の特例貸付事業により資金を借りた場合において、その貸付に係る債務免除を受けた場合は、当該免除により受ける経済的利益は課税されるか?

生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金の特例貸付事業や総合支援資金の特例貸付事業による金銭の貸付など、都道府県社会福祉協議会が個人に対して行う金銭の貸付について、当該貸付を受けた者等が、当該貸付に係る債務の免除を受けた場合には、当該貸付により受ける経済的な利益の価額については、非課税となります。

ただし、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた者に対してその者の生活費を援助するために行う金銭の貸付として一定のものに限られます。

新型コロナウイルス感染症に関連して、市町村から家計へ支援の観点で給付される令和3年度の一般会計補正予算(第1号)における子育て世帯等臨時特別支援事業費補助金を財源として給付される給付金は、課税されるか?

都道府県や市町村から新型コロナウイルス感染症に関連して給付される給付金で次に掲げるものについては、非課税となります。

① 家計への支援の観点から給付される給付金
・特別低額給付金給付事業費補助金を財源として給付される給付金
・子育て世帯等臨時特別支援事業費補助金を財源として給付される給付金
・新型コロナウイルス感染症セーフティーネット強化交付金を財源として給付される給付金

② 子育て世帯への経済的な影響の緩和の観点から児童扶養手当受給者等の一定の者に対して給付される給付金
・令和2年度の子育て世帯臨時特別支援事業費補助金を財源として給付される給付金
・令和3年11月26日の閣議決定「令和3年度一般会計コロナウイルス感染症対策予備費使用について」に基づき使用される予備費又は令和3年度の一般会計補正予算(第1号)における子育て世帯臨時特別支援事業費補助金を財源として給付される給付金

ただし、持続化給付金や雇用調整助成金など、事業者の営業自粛に伴う収益の補償や経費の補填として給付される金品等については、事業所得等として課税されます(所得税法施行令30本文括弧書、94①)。

海外赴任中の者は適用できないのか?

平成28年4月1日以後に住宅の取得等をする場合、居住者が満たすべき要件と同様の要件の下で、非居住者にも適用されます(租税特別措置法41)。

Aは離婚に伴う財産分与により前夫B所有の住宅を取得した。
この場合には、居住要件等その他の要件を満たしていたとしても、は住宅ローン控除を適用できないか?

Aの取得した住宅は、前夫から贈与でなく財産分与により取得したものです。
また、既に離婚していることから生計を一にする親族等からの既存住宅の取得にも該当しないので、Aは住宅ローン控除を受けることができます(租税特別措置法41①、租税特別措置法施行令26③)。

なお、財産分与により取得した家屋が既に住宅ローン控除の適用を受けている共有家屋の持ち分である場合には、当初から保有していた共有部分と追加取得した共有部分のいずれについても住宅ローン控除を受けることができます。

納税者及び納税者と生計を一にする配偶者それぞれの合計所得金額は、48万円を超え133万円以下であった。
この場合夫婦の間で、お互いに配偶者特別控除を適用することはできるか?

配偶者の一方が他の配偶者を配偶者特別控除の対象にしている場合、他の配偶者は一方の配偶者を配偶者特別控除の対象にすることはできません。

これは、夫婦の双方がお互いに配偶者特別控除の適用を受けることは認めない趣旨によるものです(所得税法83の2②)。

Aは、父B(特別障害者)及び母Cと別居しているが、生計を一にしており、B・Cに係る扶養控除の適用を受けている(BとCは同居)。
この場合BとAは別居しているため、Aの同居特別障害者には該当しないのか?

同居特別障害者における「同居」とは、
① 納税者本人
② 納税者の配偶者
③ 納税者と生計を一にするその他の親族
のいずれかとの同居を常況としている場合と規定されています。

したがって、Bは、Aと生計を一にする親族であるCと同居しているため、Aの同居特別障害者となります(所得税法79③)。

介護保険法上の要介護の認定を受けている者は、障害者控除の対象になるか?

介護保険法における要介護状態とは、身体又は精神の障害のために、入浴、排せつ、食事等日常生活での基本的な動作について、6か月にわたり継続して常時介護を要すると見込まれる状態をいいます。
要介護者の一部には、福祉事務所長等の認定を受けることにより、所得税法に規定する障害者に該当する者が存在します。

しかし、介護保険法上の要介護認定と福祉事務所長等による認定は別の認定行為であり、介護保険法上の介護認定を受けたことをもって、直ちに所得税法上の障害者に該当するものではありません(所得税法施行令10①七、介護保険法7①③)。

特別養護老人ホームに支払った施設サービスのうち、介護費、食費及び居住費の自己負担額は、全額医療費控除の対象になるか?

指定介護老人保健施設、指定地域密着型介護老人福祉施設に支払った施設サービスのうち、介護費、食費及び居住費に係る自己負担額の2分の1が医療費控除の対象となります(所得税法73②、所得税法施行規則40の3②、介護保険法8(28))。

「振り込め詐欺」により金銭を搾取された場合においても、その損失は雑損控除の対象になるか?

雑損控除は「災害又は盗難若しくは横領」によって生じた損失に限定されていることから、「詐欺」によって生じた損失は対象とはなりません。

したがって、「振り込め詐欺」により金銭を搾取された場合における損失は、雑損控除の対象になりません(所得税法72①、所得税法施行令9)。

居住用財産の譲渡損失が生じた場合、期限内に損失申告書を提出すれば、特に他に要件もなく翌年以後に繰越できるか?

譲渡した居住用財産が、売った年の1月1日現在で所有期間が5年を超える場合で、居住用財産の買換えを行うこと、買替資産につき住宅ローン残高を有していること(金額は不問)、控除年の合計所得金額が3,000万円以下であるなど、一定の要件に該当しなければ、その損失額を翌年以後に繰り越すとはできません(租税特別措置法41の5)。

この制度は、純損失の金額から「譲渡資産」の譲渡損失の金額(租税特別措置法41の5⑦、租税特別措置法施行令26の7⑪)を抜き出して青白を問わず適用されることとされており、純損失の繰越控除(所得税法70)とは別の制度です。

(注)「特定居住用財産の譲渡の損益通算及び繰越控除制度」は、上記の取扱いと異なり、住宅ローン残高を有する居住用財産を譲渡して、買換えをせずに借家等に住み替える場合に他の所得との損益通算及び繰越控除が認められます(租税特別措置法41の5の2)。

事業所得の赤字と一時所得又は総合長期譲渡所得とを通算する際に、一時所得又は総合長期譲渡所得の金額を2分の1した後の額から差し引いた。
問題はあるか?

一時所得又は総合長期譲渡所得と損益通算する場合は、50万円特別控除後で、2分の1をする前の金額と通算します(所得税法22②、33③ニ、34②、69①、所得税法施行令198三)。

年の途中で業務用不動産を購入するに当たり、不動産の売買代金とは別に、その不動産に係る固定資産税相当額を所有期間に応じて月割りで計算して売主に支払ったので、租税公課として必要経費に算入した。
問題はあるか?

業務の用に供した資産に係る固定資産税は必要経費に算入するとされています(所得税法基本通達37-5)が、固定資産税は、その年の1月1日における所有者に課税される(地方税法343、359)ことから、年の途中で不動産を売買した場合で、買主が当該不動産に係る固定資産税相当額を所有期間等で按分して売主に支払ったとしても、買主は、その不動産に係る固定資産税の納税義務者ではないので所得税法基本通達37-5は適用されません。

この場合は、買主が支払った固定資産税相当額は当該不動産の取得価額に算入することになります。

事業資金を借り入れる際に、信用保証協会に支払った保証料を全額一時に必要経費に算入した。
問題はあるか?

この場合は、前払費用又は繰延資産として経理し、保証期間にわたって必要経費に算入します(所得税法施行令7①三ホ)。

令和X年中に購入した取得価額10万円以上20万円未満の器具備品について、一括償却資産として申告(3分の1の金額を必要経費算入)したが、その翌年にその一部を除却したので、その未償却残高を除却損として必要経費に算入した。
問題はあるか?

一括償却資産としたものについては、その年以後にその全額又は一部につき滅失、除却等(譲渡した場合も含む。)の事実が生じたときであっても、業務の用に供した日以後3年間にわたって、その取得価額の3分の1に相当する金額を必要経費に算入(事業廃止及び死亡の場合を除く。)することになります。

所得補償保険の保険料は事業所得の必要経費か?
(*)所得補償保険とは、被保険者が、保険期間中に病気やケガにより働けなくなった場合の所得の損失に備える保険をいいます。

事業主が自己を被保険者として支払う所得補償保険の保険料は必要経費になりません(所得税法基本通達9-22(注))。

なお、保険金を受け取った場合には、「身体の障害に基因して支払いを受けるもの」として非課税所得になります(所得税法基本通達9-22)。

国民年金の受給者であった父が受け取るべき年金の給付を受けずに死亡した。
私が受領した一時金(遺族年金とは異なる)は相続財産であるから、所得税の申告はしなくてもいいか?

国民年金や厚生年金に係る未支給年金の受給請求権は、遺族に認められた固有の権利であり、これに基づき受領した一時金は相続財産には該当せず、当該遺族の一時所得になります(国民年金法19①ほか)。

退職した翌年に退職金の支給を受けたので、支給を受けた年分の退職所得とした。
問題はあるか?

退職所得の収入時期は、原則としてその支給の基因となった退職日によります。

ただし、会社役員等の場合で、その支給について株主総会等の決議を要するものについては、その役員の退職後その決議があった日とされます(所得税法基本通達36-10本文及び(1))。

未分割の相続財産から生ずる不動産所得について法定相続分で申告したが、後日、法定相続分と異なる遺産分割が行われた場合は、相続時に遡及して修正しなければならないのか?

未分割の相続財産(不動産)から生ずる収入は、遺産とは別個のものであって、法定相続人各人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものであるから、その帰属につき事後の遺産分割の影響を受けることはありません(最高裁平17.9.8判決)。

なお、遺産分割確定日以後の不動産収入についてはその遺産分割による相続分により申告することになります。

令和3年中に自治体から受けた認可外保育施設の利用料に対する助成金は、雑所得として課税されるのか?

令和3年分以後の所得税について、保育を主とする国や自治体の実施する子育てに係る次のような助成等については非課税とされました。

イ ベビーシッターのり利用料に対する助成
ロ 認可外保育施設等の利用料に対する助成
ハ 一時預かり、病児保育などの子どもを預ける施設の利用料に対する助成

(注)上記の助成を一体として行われる生活援助、家事支援、保育施設等の副食費・交通費等についても非課税となります。

通勤費を加算せずに給与が支給されている場合でも、実際の通勤費が明確にできれば、その金額は非課税にできるか?

通勤費で非課税にできるのは、所得税法で「給与所得を有する者で通勤するものがその通勤に必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のために支出する費用に充てるためのものとして通常の給与に加算して受ける通勤手当のうち、一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分として政令で定めるもの」と規定されています(所得税法9①五)。

つまり、給与所得者が通常の給与のほかに通勤手当の支給を受ける場合に限り通勤手当の非課税化の取扱いを受けるのであり、通常の給与に通勤手当が加算されていない場合には、実際の通勤費が算出できたとしても、当該金額は非課税になりません

新型コロナウイルス感染症に関連して、市町村から家計への支援の観点から給付される令和2年度の一般会計補正予算(第1号)における特別低額給付事業費補助金を財源として給付される給付金は課税されるのか?

当該給付金(給付対象者1人につき10万円給付される特別低額給付金)については課税されません(新型コロナウイルス税特例法4①一、新型コロナウイルス税特例規則2①)。
ただし、持続化給付金や雇用調整助成金など事業者の営業自粛等に伴う収益の補償や経費の補填として給付される金品等については事業所得等として課税されます(所得税法施行令30本文括弧書、94①)。

心身に加えられた損害に対して支払いを受ける損害賠償金のうち、業務に従事することができなかったことによる収益の補償として受けるものは、収益補償であるから課税されるのか?

心身に加えられた損害に対して支払いを受ける慰謝料その他の損害賠償金(これらに類するものを含む。)については非課税であり、その損害賠償金等には、その損害に基因して勤務又は業務に従事できなかったことによる給与又は収益の補償として受けるものも含まれます(所得税法9①十八、所得税法施行令30①一)。

分譲マンションの一室を所有しこれを賃貸して不動産所得を得ています。
マンションの管理規約にしたがい管理組合に毎月修繕積立金を支払っていますが、不動産所得の計算上、いつの年分の必要経費に算入するのか?

修繕積立金は、原則として、実際に修繕が行われその修繕が完了した日の属する年分の必要経費になります。
しかし、管理組合が解散しない限り修繕積立金が区分所有者に返還されない等一定の要件を満たす場合には、支払った日の属する年分の必要経費とすることができます。

住宅購入時には、その購入資金には妻単独名義による借入金(夫は連帯保証人)を充て、その後に半額を夫名義になるように借入契約を変更しました。
この場合、変更の年以降は夫も住宅ローン控除の適用を受けられるか?

夫は連帯にすぎず、家屋の取得時において借入金を有していません。
したがって、家屋の取得後に債務の一部を夫に移したとしても、住宅ローン控除の適用を受けることはできません(租税特別措置法第41条第1項)。

次のよう家屋の新築に係る借入金を借り換えた場合、住宅ローン控除を適用できるか?
・平成30年4月1日 A銀行より3,000万円
・令和3年5月1日 B銀行より3,000万円

借り換えた借入金が当初の借入金を消滅させるためのものであることが明らかであり、かつ、新築のための資金に充てるものである場合には、その新たな借入金が10年以上の償還期間であること等住宅借入金等特別控除の適用要件を満たしていれば、適用が可能です(租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて第41条-16)。

源泉徴収義務者が給与所得者等から源泉徴収した税額を納付していない場合、その給与所得者等は還付申告により還付を受けることはできないのか?

給与の支払いを受けた者の所得税の還付については、源泉徴収義務者が所得税を徴収して国に納付すべき日に、その納付があったものとされます(所得税法223)。
したがって、源泉所得税が未納になっていても、還付を受けることができます

一方、給与自体が未払の場合は、源泉徴収票に内書され、源泉所得税が納付されるまで(給与が支払われるまで)、還付は留保されます(所得税法138②)。

消費税率引き上げ後に、A(給与所得者)からマンションを購入した納税者は、当該取引を特定取得として処理できるか?

特定取得とは、住宅の取得等の対価の額又は費用の額に含まれる消費税額等が、8%又は10%の税率により課されるべき消費税額等である場合におけるその住宅の取得等をいいます(租税特別措置法41⑤)。
消費税増税の影響を軽減することを目的として、増税後に物件を取得するときは住宅ローン控除限度額が多くなる措置が講じられました。これが特定取得の効果です。

問いの場合、個人間の売買契約であり、住宅の取得等に係る対価の額又は費用の額に含まれる消費税等がないため、特定取得に該当しません。

土地の所有者を父、家屋の所有者を子として土地付き家屋を購入した場合、それぞれに住宅ローン控除を適用できるか?

住宅ローン控除の対象となる借入金は、家屋の購入とともにするその家屋の敷地に要する資金に充てるための借入金とされています。
父は土地購入の借入金しか有していないため、住宅ローン控除の適用を受けることはできません(租税特別措置法施行令26⑧)。

介護保険法上、要介護認定を受けている者について、障害者控除の対象としていいか?

介護保険法における要介護状態とは、身体又は精神の障害のために、入浴、排せつ、食事等日常生活での基本的な動作について、6か月にわたり継続して常時介護を要すると見込まれる状態をいいます。要介護状態の者の一部には、福祉事務所長等の認定を受けることにより、所得税法に規定する障害者に該当する者が存在することになります。

しかし、介護保険法上の要介護認定と福祉事務所長等による認定とは別の認定行為であり、介護保険法上の介護認定を受けたことをもって、直ちに所得税法上の障害者に該当するものではありません(所得税法施行令10①七、介護保険法7①③)。

給与所得者がゴルフ会員権を売却し譲渡損失が発生した場合、給与所得を損益通算することはできるか?

生活に通常必要でない資産の譲渡損失は、他の所得と損益通算することはできません(所得税法69②、所得税法施行令200)。
ゴルフ会員権も生活に通常必要でない資産に該当します

扶養している妻の年金から後期高齢者医療保険の保険料が天引きされている。これは、夫の社会保険料控除の対象になるか?

社会保険料控除は、居住者が、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合は、支払った金額を控除することとされています
(所得税法74①)。
したがって、問いの場合のように、妻の公的年金から徴収された保険料は、妻が支払ったものであるから、夫の社会保険料控除の対象にすることはできません
なお、夫が妻の保険料を支払った(普通徴収)場合には、夫の社会保険料控除の対象になります。

指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に支払った施設サービス費のうち、介護費、食事及び居住費の自己負担額は、全額が医療費控除の対象となるか?

指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護福祉施設に支払った施設サービス費のうち、介護費、食事及び居住費の自己負担額の2分の1が医療費控除の対象となります。

支払った医療費の額を上回る補填金(A病気に係るもの)の額は、他の医療費(B病気に係るもの)から差し引くのか?

補填の対象となる医療費ごとに補填金の差引計算をします(所得税法73①)。
なお、支払った医療費の額を上回る補填金が支給された場合に、その上回ることとなった金額について所得税は課されません(所得税法9①十七、所得税法施行令30一)。

振り込め詐欺により金銭を搾取された場合に、その損失は雑損控除の対象になるか?

雑損控除は、「災害又は盗難若しくは横領」により生じた損失に限定されています(所得税法72①、所得税法施行令9)。
したがって、振り込め詐欺により金銭を搾取された場合の損失は、雑損控除の対象とはなりません。

税込経理方式を採用し、納付すべき消費税等について未払金経理をしている事業所得者が所得税と消費税の修正申告をすることになった。
修正申告により追加納付する消費税等の金額を、修正申告の対象年分の事業所得の計算上、必要経費に算入していいか?

修正申告により追加納付する消費税等の金額は、消費税等の修正申告を提出する日の属する年分の事業所得の計算上、必要経費に算入することとなります。

したがって、修正申告の対象年分では損金算入できません。

年の途中で業務用不動産を購入するに当たり、不動産の売買代金とは別に、その不動産に係る固定資産税相当額を所有期間に応じて月割計算して売主に支払った場合、租税公課として必要経費に算入してもいいか?

業務用に供される資産に係る固定資産税は必要経費に算入するとされています(所得税基本通達37-5)。

固定資産税は、その年の1月1日における所有者に課税されますから、年の途中で不動産を売買した場合で、買主が当該不動産に係る固定資産税相当額を所有等で按分して売主に支払ったとしても、買主はその不動産に係る固定資産税の納税義務者ではないので所得税基本通達37-5は適用されません。
問いの場合、買主が支払った固定資産税相当額は、当該不動産の取得価額に算入することとなります。

一括償却資産として申告したものの一部を除却したので、その未償却残高を除却損として必要経費に算入してもいいか?

一括償却資産は、その年以後にその全部又は一部につき滅失、除却等の事実が生じたときであっても、業務の用に供した日以後3年間にわたって、その取得価額の3分の1に相当する金額を必要経費に算入することとなります(所得税基本通達49-40の2)。

家内労働者等に必要経費を認めてくれるのか?

家内労働者等とは、家内労働法に規定する家内労働者や、外交員、集金人、電力量計の検針人のほか、特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする人をいいます。
事業所得又は雑所得の金額は、総収入金額から実際にかかった必要経費を差し引いて計算することになっています。しかし、家内労働者等の場合には、必要経費として65万円(令和2年分以降は55万円)まで認められる特例があります

自宅で音楽教室を開いて複数の生徒に音楽の指導を行って授業料を受領しているのだが、家内労働者等の必要経費の特例が適用されるのか?

家内労働者等の必要経費の特例は、特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする者に対して適用されます。
したがって、問いの場合のように、複数の者に対して役務の提供を行うのであれば、この特例の適用はありません(租税特別措置法27、租税特別措置法施行令18の2、家内労働法2②)。

一括償却資産の償却は、どうするのか?

一括償却資産とは、取得価額が20万円未満の減価償却資産で、当該減価償却資産の全部又は特定の一部を一括したものをいいます(所得税法施行令139)。
税務上、償却費は、取得価額の合計額×当期の月数÷36で計算します。

不動産貸付けが事業として行われているかどうかの判定は、どうするのか?

不動産の貸付けが事業として行われているかどうかについては、原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって、実質的に判断します。
ただし、建物の貸付けについては、次のいずれかの基準に当てはまれば、原則として事業として行われているものとして取り扱われます
① 貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること。
② 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

上場株式の配当を申告する際に、所得税の計算上、源泉徴収された税額のすべてを源泉徴収税額として差し引いていいのか?

平成26年1月1日以後、上場株式等の配当等の支払いを受ける際には、所得税(復興特別所得税を含む。)15.315%、住民税5%の割合で源泉徴収されています。
したがって、確定申告に当たり、所得税の納付税額は所得税の源泉徴収税額のみ差し引いて計算し、住民税は差し引けません
なお、住民税の5%は、確定申告書第二表の「住民税に関する事項」の「配当割額控除額」欄に記載します。

株式等譲渡所得 (9)

令和元年に上場会社であるA株式会社及びB株式会社から受領した配当の確定申告を行うに当たり、A株式会社に係る配当については総合課税を選択し、B株式会社に係る配当については申告分離課税を選択した。
問題はあるか?

上場株式等の配当等に係る配当所得を確定申告する場合には、その申告をする上場株式等の配当等に係る配当所得のすべてについて、総合課税又は申告分離課税のいずれか一方を選択することになります租税特別措置法8の4②)。

過去3年の各年分に生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額があり、当年も上場株式等に係る譲渡損失が生じている場合、当年の上場株式等に係る配当所得からこれらの損失を差し引く順序は、納税者に有利なように、一番古い年分からと考えていいか?

損益通算と繰越控除の両方がある場合、上場株式等に係る配当所得等(上場株式等に係る利子所得又は申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得)から損失を控除する順序は次のとおりとなります(租税特別措置法37の12の2⑤、租税特別措置法施行令25の11の2⑧)。

① 本年分(損益通算)
② 本年の3年前分
③ 本年の2年前分
④ 本年の前年分

令和元年分の上場株式等の配当等に係る配当所得について、申告分離課税を選択するとともに配当控除を適用して申告した。
問題はあるか?

申告分離課税を選択した上場株式等の配当等に係る配当所得についは、配当控除をすることはできません(租税特別措置法8の4①)。

平成30年に上場株式等に係る譲渡損失の金額があったが、確定申告をしていなかった。
令和元年分で上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除はできるか?

上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除を適用するためには、譲渡損失が生じた年分について確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)を添付した確定申告書を提出するとともに、その後の年分についても確定申告書付表を添付した確定申告書を連続して提出する必要があります。
この確定申告書には期限後申告書が含まれます。

したがって、平成30年分について特例を適用した期限後申告書を提出すれば、令和元年分の当初申告において繰越控除の適用を受けることができます。
なお、令和元年分の申告をした後に平成30年分の期限後申告書を提出し、令和元年分について繰越控除を求める更生の請求をすることはできません

所有していた株式の発行会社が倒産したため、取得価額の全額を譲渡損失として、株式の譲渡益を損益通算して申告していいか?

所有していた譲渡所得の起因となる株式の発行会社の倒産等によりその所有する株式の価値がなくなったとしても、譲渡したことにはならないので、譲渡損失とすることはできません

ただし、倒産等で事業所得又は雑所得の起因となる株式の価値がなくなった場合、取得価額相当額は、その事業所得又は雑所得の必要経費に算入します(所得税法37①、51④、租税特別措置法37の10、37の11)。

なお、特定口座で管理されている株式の会社が上場廃止後、清算決了等をした場合で一定の要件を満たす場合には、譲渡による損失の金額とみなすとともに、その損失の金額は上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の適用が受けられます(租税特別措置法37の11の2①)。

専業主婦の妻が源泉徴収選択口座で50万円の利益を出したため、夫の所得税の計算において配偶者控除の適用は受けられないとする申告を行った。
問題はあるか?

申告不要の意思をした源泉徴収選択口座における所得又は損失の金額は、所得税法2条1項30号(寡婦)から34条の4(老人扶養親族)の判定に用いられる「合計所得金額」及び所得税法施行令11条(寡婦の範囲)2項、11条の2(寡夫の範囲)2項に規定する「その年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額」に含まれません(租税特別措置法施行令25の10の12①一)。

したがって、妻が源泉徴収選択口座における所得を申告しないのであれば、50万円は妻の合計所得金額には含まれず、「合計所得金額が38万円以下である者」という要件を満たすことから、夫の所得税の計算において配偶者控除の適用を受けることができます(所得税法2①三十三、三十三の二)。

令和元年分の上場株式の取引で損失が発生した。これ以外に給与所得と上場株式等の配当所得があるので、上場株式等の配当所得について総合課税を選択の上、上場株式等に係る譲渡損失の金額と損益通算して申告した。
問題はあるか?

上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合には、上場株式等に係る配当所得の金額と損益通算することができますが、この損益通算の対象となる上場株式等に係る配当は、申告分離課税を選択したものに限られます(租税特別措置法8の4①、37の12の2①)。

なお、平成27年1月1日以後の譲渡から、この損益通算の対象に、特定公社債等の利子所得(特定公社債等の利子、公募公社債投資信託の収益の分配等)が追加されています。

令和元年中に証券会社を通じて売却した上場株式の譲渡損と同年中の非上場株式の譲渡益を通算して申告していいか?

平成28年1月1日以後、株式等の譲渡については、一般株式等に係る譲渡所得等と上場株式等に係る譲渡所得等に区分して計算することとなり、それぞれの所得の損失については生じなかったものとみなされます。

したがって、一般株式等に係る譲渡所得等と上場株式等に係る譲渡所得等の損益を通算することはできません(租税特別措置法37の10①、37の11①、租税特別措置法関係通達37の10・37の11共-3)。

「整理ポスト」、「監理ポスト」内にある銘柄を譲渡したが、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は適用できるか?

「整理ポスト」、「監理ポスト」に割り当てられた株式等は、まだ上場廃止となっていないので、上場株式等に該当し、上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は適用対象となります(租税特別措置法37の12の2)。

消費税 (15)

小売店が販売するものは、販売先が事業者であっても、その売上は第二種事業に該当するか?

第一種事業の卸売業とは、他の者から購入した商品を、その性質や形状を変更しないで「他の事業者」に販売する事業をいいます。

したがって、販売先が事業者であれば、小売店が販売するものであっても卸売業となり、第一種事業に該当します(消費税法施行令57⑥)。

遠距離通勤の従業員に対し、1ヶ月当たり10万円を超える通勤費を支給している。
その超過額については所得税法上の給与として取り扱うため、消費税においても同様に10万円部分のみが課税仕入の対象になるのか?

事業者が使用人等に支給する通勤手当のうち、通勤のために通常必要とする範囲内のものは、所得税法上非課税とされる金額を超える場合であっても、その全額が課税仕入に該当します(消費税基本通達11-2-2)。

現実に資産の譲渡等が行われていない場合でも、前受金、仮受金、預り分等として金銭を受領した場合は、その時点で消費税が課されるのか?

所得税法第67条(小規模事業者の収入及び費用の帰属時期)の規定の適用を受ける場合を除き、前受金、前払金、未収金、未払金等として入出金があっても、その時点で資産の譲渡等及び課税仕入れ等があったことにはなりません。

現実に資産の引渡しやサービスの提供があった時点が資産の譲渡等及び課税仕入れ等の時期となります(消費税法18、消費税基本通達9-1-27、11-3-1)。

本邦に入国後1年以上経過している外国人に対する販売は免税になるか?

輸出物品販売場において免税販売できるのは、「非居住者」に対する販売に限られます(消費税法8①)。
ここでいう「非居住者」とは、外国為替及び外国貿易法第6条第1項第6号に規定する者のことです(消費税法8①、消費税法施行令1②二)。

したがって、原則、本邦に入国後6か月以上経過するに至った者に対する販売は、「非居住者」に対する販売とはならないため、免税販売にすることはできません。

卸売業を営んでいる者が事業に使用していた固定資産を譲渡した場合、この事業用固定資産の譲渡も、第一種事業に該当するのか?

事業者が自己において使用していた固定資産の譲渡を行う事業は、第四種事業に該当します(消費税基本通達13-2-9)。

営業所として使用していた土地及び建物を第三者へ一括譲渡した場合において、売買契約書上土地部分と建物部分の対価が区分されておらず、消費税額の明示もなかった。
この場合に、譲渡代金全額を非課税としてもいいか?

土地とその上に存する建物を一括して譲渡した場合には、譲渡代金を土地と建物部分に合理的に区分した上で、土地部分は非課税、建物部分は課税となります(消費税基本通達10-1-5)。

個人事業者(消費税の課税事業者)が、副業として月額10万円の店舗一戸の賃貸も行っている場合、この貸店舗の賃貸料は消費税の課税対象になるか?

消費税は、国内において事業者が「事業」として対価を得て行う資産の譲渡等を課税の対象としており、この場合の「事業」とは、所得税法上の所得区分にかかわらず「同種の行為を反復、継続かつ独立して遂行すること」をいい、規模を問わないのが基本的な考え方です。

したがって、建物の賃貸を反復、継続かつ独立して遂行しているものと認められる場合には、その規模の大小にかかわらず、「事業」として行われる資産等の譲渡対価として消費税の課税対象となります(消費税法2①八、4①、消費税基本通達5-1-1)。

個別対応方式と一括比例配分方式は、毎年有利な方を自由に選択していいか?

一括比例配分方式を適用した事業者は、2年間以上継続して適用しなければなりません(消費税法30⑤)。

この場合において、一括比例配分方式を適用した翌課税期間の課税売上割合が95%以上になったことにより、課税仕入の税額が全額控除された場合も、一括比例配分方式を継続適用したことになります(消費税基本通達11-2-21)。

個人事業者が2階建ての店舗兼住宅を取得し、1階を店舗、2階を居住用として使用する場合、その支払対価の全額が課税仕入に該当するか?

家事共用資産を取得した場合は、その家事消費又は家事使用に係る部分は、課税仕入に該当しません

この場合には、支払対価の額をその資産の消費又は使用の実態に基づく使用率、使用面積割合等の合理的な基準により、按分して計算します(消費税基本通達11-1-4)。

前々年(基準期間)の中途で新たに個人事業を開始した場合、その基準期間の課税売上高を年換算したところで納税義務の判定をするのか?

基準期間において事業を行っていた期間が1年に満たない場合であっても、個人は法人とは異なり、課税売上高を1年に換算する必要はありません(消費税基本通達1-4-9)。

相続により父親の事業を承継した。
父親の基準期間の課税売上高は1,000万円を超えていたが、自身の課税売上高は1,000万円以下であったので、納税義務はないと判断していいか?

自己が免税事業者である相続人の場合、相続があった年の納税義務は、被相続人の基準期間における課税売上高により判定します(消費税法10①)。

また、その翌年又は翌々年については、相続人と被相続人の課税売上高の合計が1,000万円を超えているかどうかで判断します(消費税法10②)。
なお、いずれの場合も共同相続の場合には、被相続人の基準期間における課税売上高は、その相続分に応じた割合を乗じた金額となります。

簡易課税制度では、事業形態ごとに仕入控除税額を計算するのか?

簡易課税制度とは、実際の仕入に係る消費税額を計算せずに、一定の率を用いて簡易に仕入に係る消費税額を計算する制度をいいます。
簡易課税制度においては、事業形態により、以下の率を適用して仕入控除税額を計算します。

 

事業区分 該当する事業 みなし仕入率
第一種事業 卸売業 90%
第二種事業 小売業 80%
第三種事業 製造業 70%
第四種事業 飲食店業、その他の事業 60%
第五種事業 金融及び保険業 、運輸通信業、サービス業(飲食店業を除く)。 50%
第六種事業 不動産業 40%

賃貸人と賃借人との間で、その用途を住宅として契約し、賃借人が賃貸人に無断で事務所として使用した場合、当該建物の賃借料は賃借人の課税仕入に該当するか?

消費税法において住宅の貸付が非課税となるのは、契約において人の居住の用に使用することが明らかにされている場合に限られています(消費税法6①、同法別表1十三、消費税基本通達6-13-8(注))。

したがって、その契約を変更しない限り当初の契約により非課税となり、賃借人は仕入課税控除の対象とすることはできません。

貸店舗の賃料を地代と家賃に区分する契約を行っていた場合、土地部分は非課税になるか?

建物その他の施設の貸付等にともなって土地を使用させる場合において、建物の貸付等に係る対価と土地の貸付等に係る対価を区分しているときであっても、その貸付は建物の貸付であって、建物の貸付等に係る対価を便宜的に区分しているにすぎないと認められます(消費税法施行令8、消費税基本通達6-1-5(注)2)。

したがって、その全体の賃貸料が資産の貸付等の対価として、課税の対象になります。

賃貸マンション売却の際に、買主との合意に基づき固定資産税の未経過分を別途買主から受領した。
これは課税標準に含めるべきか?

未経過分に相当する金額を、当該資産の譲渡について収受する金額とは別に収受している場合であっても、当該未経過分に相当する金額は当該資産の譲渡の金額に含まれることになります。

したがって、固定資産税の未経過分を含めた譲渡金額のうち、建物部分が課税の対象になります(消費税基本通達10-1-6)。

贈与税 (10)

祖父から1,000万円の贈与を受け、教育資金の非課税制度の適用を受けている受贈者が40歳に達した。
1,000万円のうち800万円は学校等へ支払い、教育資金口座には200万円の残高があったが、教育資金の贈与であるため非課税としていいか?

教育資金口座に係る契約は、次のいずれかの場合に終了します(①の括弧書き、②及び③については、令和元年7月1日以後に限る。)。

① 受贈者が30歳に達したこと(その受贈者が30歳に達した日において学校等に在学している場合又は教育訓練を受けている場合(これらの場合に該当することについて取扱金融機関の営業所等に届け出た場合に限る。)を除く。)。
② 30歳以上の受贈者がその年中のいずれかの日において学校等に在学した日又は教育訓練を受けた日があることを、取扱金融機関の営業所等に届け出なかったこと。
③ 受贈者が40歳に達したこと。
④ 受贈者が死亡したこと。
⑤ 口座等の残高がゼロとなり、教育資金口座に係る契約を終了させる合意があったこと。

なお、①から⑤のいずれか(④を除く。以下「終了事由」という。)に該当した場合に、贈与を受けた金額から教育資金として支出した金額を控除した残額があるときは、その残額は、終了事由に該当した日の属する年の贈与税の課税価格に算入されます(租税特別措置法70の2の2)。ただ、④に該当した場合には、贈与税の課税価格に算入されるものはありません。
したがって、教育資金口座の残額200万円について、贈与税の課税価格に算入されます

贈与を受けた金銭について、教育資金非課税申告書を提出していないが、教育資金であるため非課税としていいか?

教育資金の非課税の特例の適用を受けるためには、教育資金口座の開設等を行った上で、その適用を受けようとする受贈者が教育資金非課税申告書を取扱金融機関の営業所等を経由して、預貯金等の預入等をする日までに、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません(租税特別措置法70の2の2)。

したがって、預入等期限までに教育資金非課税申告書の提出がない場合には、その特例を受けることはできません。

祖父から1,000万円の贈与を受け、結婚・子育て資金の非課税制度の適用を受けていたが、その祖父が亡くなった。
1,000万円のうち700万円は子育て資金として使用し、結婚・子育て資金口座には300万円の残額があるが、何も手続きをしなくてもいいか?

贈与者が死亡した事実を知ったときは、速やかに贈与者が死亡した旨を取扱金融機関の営業所等に届け出なければなりません(租税特別措置法70の2の3⑩一)。

また、贈与者が死亡した日において管理残額があるときはその管理残額は、その贈与者から相続又は遺贈により取得したものとみなされます(租税特別措置法70の2の3⑩二)。

したがって、受贈者は取扱金融機関の営業所等に管理残額を確認し、この残額と祖父から相続又は遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した各人の課税価格の合計が、遺産に係る基礎控除額を超える場合は、相続税の申告をする必要があります。

令和元年10月に妻が父から2,000万円の贈与を受けて土地を購入し、令和2年2月に夫が自己資金で住宅用家屋を新築した。
妻が父から受けた2,000万円の贈与について、住宅取得等資金の贈与税の非課税の適用は受けられるか?

新築された住宅用家屋を受贈者である妻が取得(共有持分の取得を含む。)していない場合は、特定の適用はありません。

父からの住宅用家屋の贈与について、住宅取得等資金の贈与の特例の適用を受けられるか?

住宅取得等資金の贈与の適用の対象となる財産は、住宅用家屋の新築もしくは取得又は増改築の対価にあてるために贈与を受けた金銭のみです

したがって、住宅用家屋そのものの贈与については、その特例を受けることはできません(租税特別措置法70の2①、70の3①)。

相続時精算課税を選択して贈与税の計算をしている者が、特定贈与者から100万円の現金贈与を受けたが、贈与税の基礎控除額である110万円以下の金額であるため申告は不要とした。
問題はあるか?

相続時精算課税を選択した場合、その年分以後その特定贈与者からの贈与については、暦年課税に係る贈与税の基礎控除の規定は適用されないため、110万円以下であっても申告する必要があります(相続税法21の11、21の9③)。

相続税精算課税制度、暦年課税制度は改正されました。
令和6年1月1日以後の贈与から、以下のようになります。
相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与を受けた財産に対する贈与税について、従来の特別控除額2,500万円とは別に、課税価格から基礎控除として110万円を毎年控除できます

64歳の父と62歳の母から、それぞれ2,500万円ずつの現金の贈与を受け、それぞれ相続時精算課税を選択した。特別控除額の合計額は2,500万円であるとして贈与税の計算を行っていいか?

相続時精算課税に係る特別控除額は、選択した特定贈与者ごとにそれぞれ適用されます

したがって、同年中の贈与であっても、父、母からの贈与についてそれぞれ2,500万円ずつ特別控除額を適用の上、課税価格をゼロとして申告することとなります(相続税法21の12①)。

贈与を受けた年の年末で婚姻期間が20年となるため、贈与税の配偶者控除を適用できるか?

婚姻期間20年は、婚姻の届出日から贈与の日までの期間であり、1年未満の端数は切捨てとなります(相続税法21の6①④、相続税法施行令4の6②、相続税基本通達21の6-7)。

そのため、贈与を受けた年の年末で、婚姻期間が20年となる場合であっても、贈与を受けた日では婚姻期間が19年となり、贈与税の配偶者控除の適用はありません。

利害関係のない法人から現金200万円を受け取ったが、贈与税の申告をしなければならないか?

法人からの贈与については、贈与税ではなく、一時所得として所得税の対象となります(相続税法21の3①一、所得税基本通達34-1(5))。

長男は、借地の上に建っている父所有の建物の贈与を受けるとともに、土地の賃貸借契約書の名義も父から長男に変更した。
建物の評価のみで、贈与税の計算をしてもいいか?

借地権部分についても評価し、父から贈与を受けたとして贈与税の申告をする必要があります

ただし、契約書の名義を変更せず、使用貸借により借地権を父から長男に転借する場合は、建物だけの贈与となります。このとき、「借地権の使用貸借に関する確認書」の提出をする必要があります。

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土地等譲渡所得 (1)

公益財団法人に対し土地を寄附したが、所得税は非課税であるとして、何の手続きもしなかった。
問題はあるか?

公益法人等に土地等を寄附した場合には、原則として、寄附等の時価により譲渡があったものとみなされ、これらの財産の値上がり益に対して所得税が課されます(所得税法59①)。

しかしながら、その寄附が、教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること等一定の要件を満たすものとして、国税庁長官の承認を受けたときは、その所得税について非課税となります(租税特別措置法40①)。

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Posted by matsui