同族会社・役員間における賃借取引・売買取引のポイント
同族会社においては、会社・役員間の取引に関して、税務上の問題となる事項が発生する可能性が多くなります。ポイントをまとめましたので、参考にしてください。
同族会社における金銭貸借のポイント
同族会社においては、会社・役員間の金銭の貸借に関して、税務上の問題となる事項が発生する可能性が多くなります。
☆ 会社から役員に対する金銭の貸付において、適正利息より低い場合には、差額が役員に対する給与として課税されます。一方、役員から会社に対する金銭の貸付において、適正利息より高い場合には、差額が役員に対する給与として課税されます。
☆ 役員の会社に対する貸付金は、役員の死亡時に相続財産となりますが、貸付金債権のうち回収不能部分は除きます。
☆ 会社が役員から受ける債務免除益は益金に算入されます。しかし、損金不算入とされた未払給与に係る免除益については、一定の条件を満たす場合には益金の額に算入しないことができます。
☆ 役員からの債務免除により同族会社の株式の価額が増加したときは、債権放棄を行った役員から他の株主に対するみなし配当課税が発生します。
☆ 役員が会社の借入金に対する個人保証を履行し、会社に対する求償権が行使不能な場合、行使不能額は役員のいずれの所得の計算上何ら考慮されません。
しかし、保証債務を履行するために役員が自身の所有不動産を譲渡した場合は、譲渡所得の収入金額からのその行使不能額を差し引いて所得の計算を行うことができます。
同族会社における不動産賃借のポイント
同族会社においては、会社・役員間の不動産の貸借に関して、第三者間の貸借にはない税務上の制約があります。これは、恣意性が入る余地があり、税負担を不当に軽減する恐れがあるためです。
☆ 会社が役員へ建物を貸す場合、役員から収受する賃貸料が「通常の賃貸料の額」よりも低いときは、その差額が給与課税されます。
通常の賃貸料の額は、家屋及び敷地の固定資産税の課税標準に基づいて計算します。
☆ 会社が役員から建物を借りる場合、役員へ支払う賃貸料が標準の賃貸料の額よりも高いときは、その高い部分の金額が役員給与と認定される可能性があります。
☆ 会社と役員の間で、借地権の設定時に通常、権利金を収受する取引慣行があるにもかかわらず権利金を収受しない場合は、借地権の推定課税が行われます。
推定課税を回避するためには、相当の地代を収受するか、「土地の無償返還に関する届出書」を提出する必要があります。
☆ 土地の貸主が会社の場合、通常、権利金を収受する取引慣行があるにもかかわらず権利金を収受しないときは、収受すべき権利金を受領したものとして益金に算入するとともに、同額が役員に対する給与として認定課税が行われます。
☆ 土地の貸主が会社の場合、通常の権利金を収受しないときは、無償返還の届出書を提出しても、相当の地代を収受しない限り、会社は実施の地代と相当の地代との差額を収益計上するとともに、同額が役員に対する給与とみなされます。
同族会社における不動産売買のポイント
同族会社においては、会社・役員間の不動産の売買に関して、その売買価額の適正性をチェックする課税当局の目は厳しくなります。売買価額の決定に恣意性が介入することが十分に予想されるからです。また、その売買価額が適正ではないと判断された場合には、所得税、法人税、贈与税等が複雑に絡むため思わぬ税負担が生じる可能性があります。さらに、悪質な場合には取引そのものが否認される恐れもあります。
このように、安易な目的及び価額設定で行う不動産の売買は、リスクを伴います。
☆ 土地の時価の算定方法には、不動産評価に基づく方法、売買実例価額に基づく方法、公示価額に基づく方法、相続税評価額に基づく方法などがあります。これらを総合的に斟酌し時価を算定する必要があります。
☆ 建物の時価の算定方法には、不動産評価に基づく方法、売買実例価額に基づく方法、相続税評価額に基づく方法、再取得価額から減価償却を控除する方法などがあります。
☆ 一括譲渡した土地建物の譲渡価額が区分されていない場合の合理的な区分方法として、次の方法があります。
- イ 譲渡時における土地及び建物の時価の比率による方法
- ロ 相続税評価額や固定資産税評価額の比率をもとにする方法
- ハ 不動産鑑定評価額をもとにする方法
- ニ 土地譲渡益重課制度における取扱いにより区分する方法
☆ 役員が会社へ低額譲渡した場合、役員においては時価の1/2未満のときのみみなし譲渡課税が適用され、会社は常に譲渡価額と時価との差額が受贈益となります。また、その譲渡により株価が上昇したときは、その役員(株主)以外の株主に贈与税が課されます。
☆ 役員が会社へ高額譲渡した場合、時価との差額は、役員においては給与所得課税され、会社は損金不算入の役員給与を支給したものとされます。
☆ 会社が役員へ低額譲渡した場合、時価との差額は、役員においては給与所得課税され、会社は損金不算入の役員給与を支給したものとされます。
☆ 会社が役員へ高額譲渡した場合、会社は時価との差額が受贈益となり、その譲渡により株価が上昇したときは、その役員(株主)以外の株主に贈与税が課されます。