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公益法人立入検査を失敗しないための心構え

01/19/201812/26/2018公益法人及び移行法人会計

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新公益法人への立入検査について、まとめます。
従来の公益法人は、平成25年11月末までに、新公益法人あるいは一般法人へ移行申請をしなければなりません。その後、申請が認定された新公益法人に対して、行政庁から立入検査が実施されます。

立入検査は、法令で明確に遵守することを定められた事項に関して、事業の運営実態を確認するという観点から行われます。公益認定後第1回の立入検査は、できるだけ早期に実施すると指針が出ています。ここで「できるだけ早期」とは、公益認定後1年から3年を目途という意味です。第2回以降の立入検査は、直近の立入検査実施後3年以内に実施されます。
立入検査の対象になると、立入検査実施予定日の概ね1ヶ月前に、実施日時、場所等の通知があります。

立入検査では、定期提出書類等で得られた情報を活用し、立入検査を行わなければ確認が困難な事項に重点が置かれます。例えば、法人運営全般について、理事又は監事等法人運営に責任者へのヒアリングが行われます。これは、理事会がしっかり機能しているかを確かめるためです。

目次
  • 1. 定期提出書類の作成・提出・開示手続きの概要
  • 2. 新公益法人におけるガバナンス
  • 3. 公益法人の立入検査対策は不要
    • 3.1. 公益認定が取消される場合
    • 3.2. 立入検査のタイムテーブル

定期提出書類の作成・提出・開示手続きの概要

公益法人は、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するために活動することが求められることから、その事業運営において透明性が確保されていなければなりません。このような観点から、公益法人は、事業計画、事業報告等に関する書類の作成・提出・開示が必要になります。

公益法人は、毎事業年度開始の日の前日までに、当該事業年度の事業計画書、収支予算書及び資金調達及び設備投資の見込を記載した書類(以下「事業計画書等」という。)を作成し、当該事業年度の末日までの間、事業計画書を主たる事務所に、その写しを従たる事務所に備え置く必要があります。

また、法人法で定める計算書類(貸借対照表及び損益計算書、事業報告並びにこれらの附属明細書(監査報告を含む。)をいう。以下同じ。)のほか、毎事業年度経過後3箇月以内に、財産目録、役員名簿、役員等の報酬等の支給の基準を記載した書類、キャッシュ・フロー計算書、運営組織及び事業活動の状況の概要及びこれらに関する数値のうち重要なものを記載した書類を作成し、これらの書類を5年間主たる事務所に、これらの書類の写しを3年間従たる事務所に備え置く必要があります。
公益法人は、上記の書類や定款、社員名簿について、閲覧の請求があった場合、正当な理由なくこれを拒んではならないこととされています。

さらに、事業計画書等については毎事業年度開始の日の前日までに、行政庁へ提出する必要があります。財産目録、役員等名簿、役員等の報酬等の支給の基準を記載した書類、キャッシュ・フロー計算書、運営組織及び事業活動の状況の概要及びこれらに関する数値のうち重要なものを記載した書類、社員名簿並びに計算書類等については、毎事業年度経過後3箇月以内に、行政庁に提出する必要があります。

これらの書類をまとめて、定期提出書類と呼びます。

新公益法人におけるガバナンス

新しい公益法人制度の下では、法人自らの創意工夫による運営が重視されます。その前提として法人のガバナンスがしっかり効いていることが重要です。
ガバナンスとは、統治と訳されることが多いですが、多くの場合、コーポレートガバナンス(企業統治)の意味で使われます。会社組織における意思決定、執行、監督に関わる機構を整備して、健全に会社運営がなされるように上手に治めることです。営利企業においては、10年ほど前から頻繁に耳にするようになりました。

新公益法人にも同様のことが求められます。
新公益法人になれば、ガバナンスのあり方に変化が生じます。
認定申請の際に、「認定後は、理事会あるいは評議員会には、理事・監事・評議員本人が出席する必要があります。」とよく言われたと思います。これは、理事・監事・評議員は本来、各人の能力、資質等に基づいて選任されたのであるから、代理出席は認められない、ということです。ガバナンスを重視の表れです。
別の例では、「認定後は、監事・評議員いずれも、理事・使用人と兼務でききません。」というのもあります。

このように、公益認定後は従来とは違う状況がさまざまに表れて来ます。「今まで通りでよい。」のではありません。決して、申請書類だけの話ではないのです。
そして、新公益法人は先に示したディスクロージャー(情報公開)が重視されます。
国民に負担してもらう形で、税務上の優遇措置を受けているからです。

公益法人の立入検査対策は不要

新公益法人への立入検査次第では「認定取消」があるかもしれない、と危機感を煽りながら、立入検査対策と称して“立入予備検査”なるものを受けることを勧誘する案内が、かつては多く出回っていました。

しかし、それほど簡単に認定が取消されるわけではありません。認定取消の前に、法人運営上の問題点について所轄庁とさまざまなやり取りを何度も繰り返します。それは、「立入検査の中で、法人関係者から要請があった場合又は必要があると判断する場合には、新公益法人制度に関する理解を深め、適切な法人運営の支援をする観点から、制度の詳細について説明等を行う。」と指針が出ていることからも明らかです。

立入検査の結果公益認定が取り消されるのは、極めて法人運営が杜撰な場合であり、限定的にしか起こり得ません。立入検査は決して怖いものではありません。至らぬところを指導してもらえる、程度に考えれば良いのではないでしょうか。
立入検査対策のため、外部の業者に大枚を叩くことは全くナンセンスなことなのです。

問題なのは、公益認定申請書の記載内容と実態の法人運営が異なっている場合です。
これは、“認定を取る”ことのみを目的として、外部の業者に認定申請作業を丸投げしてしまったときに起りえます。通りやすいようにと事実とは異なる説明をしたときに。
これまで説明してきたとおり、新公益法人にはガバナンスが求められます。「書類の上だけでやったことになっている。」では済まされません。
もし、不幸にしてこのような状況にあるのでしたら、行政庁に十分相談するしかないと思います。そして、なるべく早く実態をあるべき姿に近づけることです。

公益認定が取消される場合

認定取消の具体例は次のとおりです。

必要的取消事由(認定法29条1項)

イ 欠格事由に該当するに至ったとき
(注)欠格事由の例

  1. 理事、監事、評議員のうちに禁固以上の刑に処せられた者がいる
  2. 定款や事業計画書の内容が法令や法令に基づく行政機関の処分に違反している
  3. 事業を行うに当たり法令上必要な行政機関の許認可を受けることができない
  4. 国税、地方税の滞納処分が執行されている
  5. 暴力団員等が事業活動を支配している

ロ 偽りその他不正の手段により公益認定、変更認定等を受けたとき

ハ 正当な理由なく、行政庁の命令に従わないとき

ニ 法人から公益認定取消の申請があったとき

任意的取消事由(認定法29条2項)

イ 認定基準(第5条第1号から第18号)のいずれかに適合しなくなったとき

ロ 認定法第14条から第26条の規定を遵守していないとき
(注)遵守すべき規定の例

  1. 収支相償
  2. 公益目的事業比率
  3. 遊休財産規制
  4. 寄付の募集に関する禁止行為
  5. 公益目的事業財産の使用、処分
  6. 収益事業等の区分経理
  7. 役員報酬等の支給
  8. 財産目録等の備置き、閲覧
  9. 事業計画書、事業報告書等の提出

ハ 前記のほか、法令又は法令に基づく行政機関の処分に違反したとき

なお、任意的取消事由に該当する場合には、ただちに認定取消ということではなく、基本的には法人に対する是正が求められます。レッドカードで“一発退場”にはなりません。
認定が取消された後は、一般法人へ移行し、公益目的取得財産残額を他の公益法人等に贈与しなければなりません。

立入検査のタイムテーブル

以下のようなタイムテーブルで、立入検査は実施されます。

10:00 立入検査の開始
10:00~10:10 立入検査に関する要領の説明
10:10~11:00 理事等から法人運営の全般に関する事項の聴き取り
11:00~12:00 各種書類等の調査・確認及び関係者に対する聴き取り調査
(休憩)
13:00~16:00 各種書類等の調査・確認及び関係者に対する聴き取り調査
16:00~16:30 事務所・設備等の確認
16:30~17:00 問題点の取りまとめ・検査結果の総括及び質疑応答
17:00 立入検査の終了

実際の指摘事項として、例えば、「監事が理事会に全く出席していない。」ということが挙げられています。監事が理事会に出席して、理事の議論を聞くことや必要な場合に意見を述べることが、ガバナンスの実行に他ならないためです。

繰り返しますが、立入検査は、決して“怖い”ものではありません。
対策も必要ありません。

公益法人及び移行法人会計

Posted by matsui


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