中小企業等経営強化法と中小企業2017年問題
日本の中小企業が弱っています。かつては東京や大阪の下町にある小さな会社が、他にまねできない技術を開発し独自の存在感を放っていました。ところが経営環境の激変に対応できない等の理由で会社存続の危機が迫っている中小企業が増えつつあります。
日本の企業のほとんどが中小企業なわけですから、中小企業が弱るということは日本経済全体が弱るということです。
元気を取り戻せ!がんばれ!中小企業。
中小企業等経営強化法
平成28年7月1日に、中小企業等経営強化法が施行されました。
法律の趣旨
中小企業等経営強化法の趣旨
労働人口の減少、企業間の国際的な競争の活発化等の経済情勢の変化に対応し、中小企業・小規模事業者・中堅企業の経営強化を図るため、事業所管大臣が事業分野ごとに指針を策定するとともに、当該取組を支援するための措置を講じます。
法律の概要
中小企業等経営強化法の概要
事業所管大臣は、事業者が行うべき経営力向上のための取組についての指針(「事業分野別指針」)を策定します。
具体的には、製造、卸・小売、外食・中食、宿泊、医療、保育、介護、障害福祉、貨物自動車運送、船舶、自動車整備、建設の12事業に対象になります。
経営力向上のための取組の支援
- 経営力向上計画の認定及び支援措置
- 認定経営革新等支援機関により支援
中小企業等は、人材育成、コスト管理のマネジメントの向上や設備投資等、事業者の経営力を向上させるための取組内容などを記載した事業計画(「経営力向上計画」)を作成します。計画の認定を受けた事業者は、機械及び装置の固定資産税が軽減され、金融支援等の特例措置を受けることができます。
また、いわゆる認定支援機関(私も認定されています。)による計画策定の支援が受けられます。
制度利用のポイント
ポイント
1 申請書類は実質2枚
「企業の概要」、「現状認識」、「経営力向上の目標及び経営力向上による経営の向上の程度を示す指標」、「経営力向上の内容」等、簡単な計画を策定することにより、認定を受けることができます。
2 計画策定をサポート
いわゆる認定支援機関による計画策定の支援が受けられます。また、ローカルベンチマークなどの経営判断ツールによる計画策定ができます。
3 認定計画に基づき取得した一定の機械及び装置の固定資産税が1/2に
計画認定を受けた場合、資本金1億円以下の会社、個人事業主等は、固定資産税の課税標準が3年間に亘って半額になります。
4金融支援
計画認定を受けた場合、政府金融機関の低利融資、民間金融機関の融資に対する信用保証、債務保証等の資金調達に関する支援を受けることができます。
中小企業等投資促進税制
法人税額等の計算に当たり次のように取り扱われます。
青色申告書を提出する中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けた中小企業者等が、平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に、中小企業投資促進税制及び特定中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得し、国内にあるその法人の指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した事業年度において、特別償却又は税額控除を認めるものです。
この制度の適用対象法人は、青色申告法人である中小企業者及び特定の中小企業者です。
次の図のとおりです。
生産性向上設備 | 収益性強化設備 | ||
機械装置 | 160万円以上/販売開始から10年以内 | 旧モデル比で経営力の向上に資するものの指標が年平均1%以上向上するもの | 投資計画における年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれるものであることについて経済産業大臣の確認を受けた投資計画に記載されたもの |
測定工具及び検査工具 | 30万円以上/販売開始から5年以内 | ||
器具備品 | 30万円以上/販売開始から6年以内 | ||
建物附属設備 | 償却資産として課税されるものに限る 60万円以上/販売開始から14年以内 |
||
ソフトウェア | 70万円以上/販売開始から5年以内 |
その取得価額の全額を償却することができます(即時償却)。
特定経営力向上説設備等の取得価額の7%相当額(中小企業者等においては10%)です。
中小企業2017年問題
2015年の廃業件数は、27,000件。廃業が相次いでいます。
そんな中、中小企業には、“2017年問題”という懸念があります。
団塊世代の経営者が70歳を迎える2017年以降、中小企業の廃業が急増するとみられているのです。背景には、後継者をめぐる問題があります。
子供たちがサラリーマンになっている。実家を離れて都会で暮らしている。
後継者不足が問題となるのは、このような状況にある場合が多いと思います。子供から見れば、今さら家業を継いで従業員を養っていくだけの自身はない。今の職場で、重要なポジションについた。
「継ぎたくない。」
また、従業員に引き継いでもらおうと思っても断られます。
自分の担当をこなすことで精一杯。会社全体のことを考えるなんて、自分にはできない。
「継ぎたくない。」
さらに、経営者の意識も変わってきました。
自分たちは必至で頑張ってきたが、会社経営はそんなに簡単なものではない。重い責任がある。その責任は子供たちに負わせたくない。
「継がせたくない。」
これに対して、さまざまな廃業防止の取り組みが始まっています。
企業健康診断
会社を外部の目から分析することで、企業価値を客観的に評価することができます。社長自身が気付かなかった良さも見えてきます。自社の強みを正しく認識できれば、さらに会社の成長が期待できます。ということは、社長も安心してバトンタッチができますし、後継者としてもやりがいを持てます。
ベンチャー型事業承継
これは、事業承継を若者の視点から後継者へ働きかける、という動きです。このプロジェクトを仕掛けたのは、近畿経済産業局。まるで起業するかのように会社を引き継ぐことを目指しています。
家業の資源+若者の発想
これによって、これまでにない価値を生み出すことも可能です。例えば、羽毛布団を売っていた会社がアパレル業界に進出する、金物工具店を引き継いでDIYサイトを成長させる等、夢は広がります。
「親と同じことをやらなくてもいい。」
事業承継において、この発想は非常に重要です。
中小企業数の全企業数に占める割合は99.7%です。社長が60代以上の中小企業は、全体の58%あります。
何もせず時間が過ぎれば、中小企業の廃業がさらに進んで行きます。経営者と後継者が、親子として将来について話し合うことが何より大切ではないでしょうか。