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社会福祉法人会計基準 移行年度の処理を再点検

01/22/201812/26/2018社会福祉法人会計

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新しい社会福祉法人会計基準では、「別紙2 社会福祉法人会計基準への移行時の取扱い」 において、従来の各種会計基準から新会計基準に移行する場合の取扱いを定めています。

「移行時の取扱い」の概要を説明していきます。
≪共通事項≫及び≪現行基準からの移行≫を取り上げますが、その詳細及びこれ以外の項目については、次の本をご参照ください。私も執筆者の一人です。

『実務に役立つ 社会福祉法人の会計基準Q&A』(清文社)

目次
  • 1. 共通事項
    • 1.1. 会計基準への移行時における基本的な考え方
    • 1.2. 会計基準移行年度の事業活動計算書及び貸借対照表における前年度との対比
    • 1.3. 会計基準移行年度における過年度分の収益又は費用の取扱いについて
  • 2. 新基準において新設
    • 2.1. 事業区分・拠点区分・サービス区分の設定
    • 2.2. 貸借対照表の組替え
  • 3. 従来基準からの変更
    • 3.1. 有価証券に係る調整
    • 3.2. ファイナンス・リース取引に関する調整
    • 3.3. 退職給付引当金に係る調整
    • 3.4. 第4号基本金計上金額に係る調整
    • 3.5. 国庫補助金等特別勘定積立金取崩額の計算
    • 3.6. 設備資金借入金元金償還補助金に係る国庫補助金等特別積立金の設定

共通事項

会計基準への移行時における基本的な考え方

移行年度期首の貸借対照表残高を拠点区分ごとに把握した上で、新会計基準の勘定科目に組替えます。その後以下に述べる移行時の取扱いにより必要になる会計処理を、移行年度期首において仕訳を入れる形で処理します。

会計基準移行年度の事業活動計算書及び貸借対照表における前年度との対比

新会計基準では、事業活動計算書、拠点区分事業活動計算書、貸借対照表及び拠点区分別貸借対照表について、当年度と前年度の比較形式で作成しなければなりません。

しかし、基準=ものさしが変わっているため、比較することに意味がありません。よって、前年度欄の数値の記載は不要です。

会計基準移行年度における過年度分の収益又は費用の取扱いについて

基準が変わることで、計算結果に差が生じます。移行前の会計年度に生じていた収益又は費用若しくは収入又は支出(新基準を移行前の会計年度に適用した場合の会計数値と現行の数値との差を調整するという意味です。以下「過年度の収益又は費用」といいます。)は、原則として、事業活動計算書上は特別増減による収益又は費用として計上します。
また、資金収支計算書上は、その他の活動による収入及び支出として計上します。

勘定科目としては、「会計基準移行に伴う過年度修正額」等を使ってまとめることもできますが、その場合には、内訳科目を設けるか、内訳を注記する必要があります。

注意の必要な点があります。
新会計基準では、拠点区分別に貸借対照表を作成します。拠点区分(現行でいえば、経理区分)ごとの貸借が残っていれば、拠点区分ごとの貸借対照表においてその相殺前の残高が表示されてしまいます。従来の会計基準では会計単位全体でしか要求されていなかったため、経理区分ごとに貸借残高があるか否かは、明らかではありません。

拠点区分別に貸借対照表残高を分解することは、必要な作業であり、また、骨の折れる作業になります。

新基準において新設

事業区分・拠点区分・サービス区分の設定

新会計基準及び運用指針を参照して、適切に事業区分、拠点区分、サービス区分を設定してください。
実務的には、判断に困る場合が多く発生すると思われます。

貸借対照表の組替え

以下の事項に留意してください。

ポイント

① 拠点区分ごとの期首貸借対照表における支払資金の概念と拠点区分ごとの移行年度の資金収支計算書の前期末支払資金残高を一致させること。

② 拠点区分ごとの期首貸借対照表における次期繰越活動収支差額と拠点区分ごとの移行年度の事業活動計算書の前期繰越増減差額を一致させること。

③ (移行年度を向かえる前に試してみて)上記が一致しない場合には、移行年度の直前事業年度において現行会計基準にて処理することが望ましいこと。

従来基準からの変更

有価証券に係る調整

① 満期保有目的の有価証券
取得価額と債券額が異なる場合には償却原価法を採用し、移行年度の期首において、過年度の収益又は費用等として仕訳処理します。

② 満期保有目的以外の有価証券
市場価額のあるものは時価で評価し、移行年度の期首において、過年度の収益又は費用等として仕訳処理します。

市場価額のないものは取得価額のままです。

ファイナンス・リース取引に関する調整

ファイナンス・リース取引について、現行基準における賃貸借処理ができなくなります。
以下の調整方法があります。

① 原則的な方法
リース取引開始時から売買処理を適用した場合の会計基準移行年度期首までの減価償却累計額をリース料総額(現在価値へ割引後)から控除した金額をリース資産に、未経過リース料相当額(利息相当額控除後)をリース債務に計上する方法です。
この場合、リース資産計上額とリース債務計上額の差額は、移行年度の期首において、過年度の収益又は費用等として仕訳処理します。

② 簡便的な方法
会計基準移行年度における未経過リース料残高相当額(利息相当額控除後)を取得価額とし、会計基準移行年度期首に取得したものとしてリース資産、リース債務を計上する方法です。
この場合、利息相当額のリース期間中の各期への配分は定額法で構いません。

③ 例外
リース取引開始日が会計基準移行年度前の所有権移転外ファイナンス・リース取引で、従来賃貸借取引を行っていたものについては、当該リース契約が終了するまでの期間、引き続き賃貸借処理によることができます。

退職給付引当金に係る調整

① 従来会計基準での処理方法
A 退職共済預け金=掛金累計額、退職給与引当金=期末要支給額
B 退職共済預け金=退職給与引当金=期末要支給額
C 退職共済預け金=退職給与引当金=掛金累計額

② 新会計基準での処理方法
D 退職給付引当資産=掛金累計額、退職給付引当金=期末要支給額(*)
E 退職給付引当資産=退職給付引当金=期末要支給額(*)
F 退職給付引当資産=退職給付引当金=掛金累計額

(*)新会計基準における期末要支給額とは、退職共済制度における約定の給付額から被共済職員個人が既に拠出した掛金累計額を差し引いた額であることに留意してください。

従来Aを選択していた法人はDを、Bを選択していた法人はEを、Cを選択していた法人はFを選択することを原則としますが、他の方法への変更も可能です。
なお、独自に退職金制度等を設けている場合には、「運用指針」に留意して退職給付引当金を計上してください。

第4号基本金計上金額に係る調整

新会計基準では、基本金の種類を3つに限定されています。第4号基本金を計上している場合には、全額取り崩す必要があります。

その場合、事業活動計算書上、繰越活動増減差額の部に計上するのが原則ですが、例外的に、貸借対照表上、直接「次期繰越収支差額」若しくは「積立金」に組み替えることも可能です。

国庫補助金等特別勘定積立金取崩額の計算

平成19年3月31日以前に取得した固定資産については、残存価額10%として減価償却計算をしていました。一方、国庫補助金等特別勘定積立金取崩計算上は、残存価額をゼロとしていました。

新会計基準では、国庫補助金等特別勘定積立金は固定資産の取得価額に対する減価償却費の計上割合に相当する額を取り崩すと規定されていますので、10%の残存価額を残して取崩計算をする必要があります。移行年度の期首において、上記の差額を過年度の収益又は費用等(この場合、損失)として仕訳処理します。

設備資金借入金元金償還補助金に係る国庫補助金等特別積立金の設定

新会計基準では、設備資金借入金元金償還補助金は国庫補助金等特別積立金の積立対象になりました。そのため、調整が必要です。

① 原則的な方法
当初より設備資金借入金元金償還補助金に係るが計上されていたものとして、国庫補助金等特別積立金の期首残高を計算します。

② 簡便的な方法
会計基準移行年度においては特段の調整をせず、移行年度以降の会計年度において受領する設備資金借入金元金償還補助金について、受領会計年度で国庫補助金等特別積立金を積立て、移行年度以降において入金が予想されている設備資金借入金元金償還補助金の合計額を基礎とした金額を取崩す方法です。

社会福祉法人会計

Posted by matsui


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