介護業界に群がるファンドの功罪
介護もビジネスとして成り立ちます。では、“介護とファンドが結びつくのか”。
ファンドとは、一言でいえば、多くの人(投資家)から集めたお金のこと、あるいは、そのお金を運用する組織のことを言います。「ハゲタカファンド」という言葉もあるように、ファンドの一般的なイメージは良くありません。
介護とファンド
バブル崩壊後、日本の財産(企業、施設等)を安く買いたたき、後に第三者に高く売って、利ザヤを稼いだ外資系ファンドが想起されます。ところが、ファンドがやったことは経済行為としては正しいわけです。「安く仕入れて高く売る」は、商売の鉄則です。ただ、「何を」が問題になってくるわけです。
介護は「人が人に提供するサービス」です。介護保険サービスとは、介護保険法に基づき、施設または自宅で生活し介護を必要とする高齢者等が受けられる、食事・入浴等の介助、その他日常生活において必要な援助のことです。
在宅系介護として、訪問介護(ヘルパー)、訪問入浴、通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)、訪問看護、居宅介護支援(ケアマネジメント)等があります。施設系介護としては、特別養護老人ホーム(特養)、老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設、グループホーム、有料老人ホーム等があります。人が生きることに関する基本的な営みを、非常に近い距離で助けてもらえます。
介護保険制度は、2000年に始まりました。今後、高齢化が進むなかで、新たな対応を求められることが多くあると思われます。介護費用は、2013年度予算では9.4兆円でした。2000年度の2.6倍です。2015年度実績は10兆円目前です。このまま介護費用、ひいては社会保障費が増え続けて行くことに歯止めをかけたい、というのが国の政策の根本にあります。ですから、特養の利用を制限、新たな有料老人ホームの設立を制限、という流れが出て来ます。
ファンド→介護
一昔前から、「これからは介護だ。介護は儲かる。」という考えで、いろんな事業者が介護事業に乗り出しました。しかし、多くの場合は「失敗」しているのではないかと思います。介護のニーズ(需要)は非常に多くあります。そこを見込んで介護事業に乗り出すわけですが、ニーズがあるだけで商売として成り立つわけではありません。
そこには必要性が要ると思うのです。
必要性とは、「こちらでお世話になりたい。」という利用者やその家族の気持ちのことです。従来の介護事業参入者が「失敗」した理由は、まさにここにあるのではないでしょうか。経営のことばかりで、利用者のことを考えていなかったのです。話題になったファンドの登場も、全く同じ動機によるものです。しかし、本来的にファンドは経営者ではありません。投資家から集めたお金を増やすことを目的に行動するのが、ファンドです。この点は、重要です。“いつまでも安定した経営を”という考えはありません。
ファンドが買収した介護事業は、いずれ他の介護事業者に売却されるのです。そのために「企業価値」を高めようとします。具体的には、利用者を多く集めるということです。「利用者の視点」を持たなければ利用者を多く集めることはできません。
この点では、先ほどの従来の介護事業参入者とは違うのではないかと考えます。
介護→ファンド
有料老人ホームは、多くの場合、民間会社(普通の株式会社)が運営しています。他の老人福祉施設と異なり、社会福祉法人に限定されません。施設数の急増による入居者確保の競争激化等で経営環境は厳しくなっています。今後、さらなる競争激化が予想されます。その時に、規模の拡大を図る大手介護事業者に対抗すべく、中堅の事業者がファンドの力を借りて“共闘”を組む形で、ファンドが介護事業に登場しました。
以下のようなスキームです。
- ファンドが全額出資の持ち株会社を作ります。
- 既存の事業者に声をかけ、共同事業への参加者を募ります。
- 参加する事業者は、自分の介護事業会社の持ち株とファンド保有の持ち株会社株式を交換します。
つまり、株式交換によって既存の事業者は、持ち株会社の株主になります。そして、何らかの形で事業会社の経営に関与することになると思われます。また、既存の事業会社は持ち株会社の100%子会社になります。このスキームは、持ち株会社を上場させるなどをして、ファンドが事業から撤退する環境を作ることを「ゴール」にしていると想定されます。
他にも、介護事業者の営む施設のうちの一つをファンドが買う形で、ファンドが介護事業に進出する方法もあるかもしれません。これをいくつか繰り返せば、複数の施設を運営する立派な介護事業者です。しかし、最後には他の介護事業者に売るわけですが。
以前に、さまざまな事業を手掛けられている、ある経営者に尋ねたことがありました。「いろいろな事業をされていますが、介護事業への進出も考えられているのですか。」お返事は短いものでした。
「介護は人を扱うものです。簡単ではありません。」
不採算な会社の従業員は他のグループ会社へ異動させ、決してリストラをしない経営者でさえ、このように仰います。「企業価値」を高めて短期に事業を転売しようとするファンドが介護事業をすることは、本質的に無理がある気がしてなりません。
介護も事業として実施される限り、ファンドと結びつくことはあり得ます。しかし、提供するサービスは「介護」なのです。人が生きるということに密接に関わっています。介護は単なる「金儲け」の手段ではありません。どこを見て、何のために経営するのか。介護事業者には、それ相応の覚悟が要るのではないかと思います。使命感と言い換えても良いかもしれません。
介護事業所が多くでき、競争が激しくなることは、利用者にとっては良いことかもしれません。しかし、それによって、「介護の質」が下がるようでは、本末転倒です。現状よりサービスが良くなることが、競争の結果であるべきです。
結局は、「介護の質」が問われると思います。
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自立いきいき村の創設する。楽しい人生100までいきる。健康でいっまでも仕事をしたい。
①健康型有料老人ホーム400名の施設
②介護付有料老人ホーム85名の施設
③レストラン・診療所・歯科診療所・薬局・コンビニ・学童保育所・理美容室・リハビリテーション
カラオケ・社交ダンス・茶道・華道・陶芸・木工・ガラス工房・英会話・映画鑑賞・オーデオルーム
書道・コインランドリー・ハソコン教室・囲碁・将棋・マジャン・カメラ教室・編物・絵画教室
音楽教室・健康体操・ヨガ・スタッフ研修センター
日本の超高齢化社会を生き抜くには、新しいシステム自立いきいき村「都市型CCRC」が必要である。
50歳前後の、元気な高齢者から介護の必要な人まで入居できる施設の開発計画です。