大阪の企業会計の主治医

非営利法人のスペシャリスト松井公認会計士のブログ

  • ホーム
  • 中小企業会計
  • 公益法人及び移行法人会計
  • 社会福祉法人会計
  • NPO法人会計
  • 会計 税務
  • 税金豆知識
  • 事務所概要
  • サイトマップ
  • お問合わせ
  1. ホーム>
  2. NPO法人会計

「特定収入があった場合には仕入消費税の全額を控除できない」の正しい解釈

11/07/201810/02/2023NPO法人会計

  •  Twitter
  •  Pin it

NPO法人等の非営利法人は、補助金等の収入を受け取って活動の原資にしている場合が多くあります。

補助金等については消費税が課されません。一方で、経費には消費税が課されます。課税売上に係る消費税がほとんどないにもかかわらず、課税仕入に係る消費税をすべて税額控除できるならば、一般法人との間で不公平が生じます。

なぜなら、一般法人は通常、課税売上に係る消費税の方が多いからです。

そこで特例として、特定収入に対応する課税仕入等の仕入税額控除が制限されます。

目次
  • 1. 特定収入に係る仕入税額控除の特例
  • 2. 特定収入とは
    • 2.1. 不課税収入
    • 2.2. 特定収入に該当しない収入
    • 2.3. 特定支出にのみ使用される収入
    • 2.4. 特定支出
    • 2.5. 特定収入以外の収入
  • 3. 特定収入に係る仕入税額を控除する理由

特定収入に係る仕入税額控除の特例

通常、消費税額は、売上に対する消費税額から仕入に対する消費税額を差し引いて計算します。

消費税額=課税標準額に対する消費税額-課税仕入れ等の税額

特定収入に係る仕入税額控除の特例は、簡易課税を適用する場合を除き、課税標準額に対する消費税額から控除することができる課税仕入れ等の税額の合計額は、通常の計算に基づく課税仕入れ等の税額の合計額から特定収入に係る課税仕入れ等の税額を控除して求めます(消費税法第60条第4項)。

つまり、次のようになります。

消費税額=課税標準額に対する消費税額 -(課税仕入れ等の税額 - 特定収入に係る課税仕入れ等の税額)

また、上式の括弧がマイナスになる場合は、そのマイナス額を課税資産の譲渡等に係る消費税額とみなして課税標準額に対する消費税額に加算します(消費税法第60条第5項)。

なお、特定収入に係る仕入税額控除の特例が適用されるのは、以下の特定収入割合が5%を超える場合です。

特定収入割合=特定収入の額/(税抜課税売上高+非課税売上高+免税売上高+特定収入の額)

特定収入とは

以下のように定義されています。

消費税法基本通達 16-2-1

法第60条第4項《国、地方公共団体等に対する仕入れに係る消費税額の計算の特例》に規定する「特定収入」とは、資産の譲渡等の対価に該当しない収入のうち、令第75条第1項各号《特定収入に該当しない収入》に掲げる収入以外の収入をいうのであるから、例えば、次の収入(令第75条第1項第6号《特定収入に該当しない収入》に規定する特定支出のためにのみ使用することとされているものを除く。)がこれに該当する。

  1. 租税
  2. 補助金
  3. 交付金
  4. 寄附金
  5. 出資に対する配当金
  6. 保険金
  7. 損害賠償金
  8. 資産の譲渡等の対価に該当しない負担金、他会計からの繰入金、会費等、喜捨金等

わかりにくい説明ですので、図解します。

収 入

課税売上

非課税売上

不課税

収入

特定収入に該当しない収入
特定支出のみに使用される収入 特定収入

特定収入とは、補助金のような資産の譲渡等の対価に該当しない収入(不課税収入)のうち、借入金、出資金、預金・貯金及び預り金、貸付回収金、返還金及び還付金(特定収入に該当しない収入)以外の収入で、明確に不課税支出又は非課税仕入のみに使用されたもの(特定支出にのみ使用される収入)を除いた収入をいいます。

不課税収入

資産の譲渡等の対価に該当しない収入のことです。

特定収入に該当しない収入

消費税法施行令 第75条第1項第1号から第5号に規定されている借入金等、出資金、預貯金及び預り金、貸付回収金、返還金及び還付金をいいます。

消費税法施行令 第75条第1項

法第六十条第四項に規定する政令で定める収入は、次に掲げる収入とする。

一 借入金及び債券の発行に係る収入で、法令においてその返済又は償還のため補助金、負担金その他これらに類するものの交付を受けることが規定されているもの以外のもの(第六号及び次項において「借入金等」という。)

二 出資金

三 預金、貯金及び預り金

四 貸付回収金

五 返還金及び還付金

六 次に掲げる収入(前各号に掲げるものを除く。)

イ 法令又は交付要綱等(国、地方公共団体又は特別の法律により設立された法人から資産の譲渡等の対価以外の収入を受ける際にこれらの者が作成した当該収入の使途を定めた文書をいう。)において、次に掲げる支出以外の支出(ロ及びハにおいて「特定支出」という。)のためにのみ使用することとされている収入

(1) 課税仕入れに係る支払対価の額(法第三十条第一項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額をいう。第四項において同じ。)に係る支出

(2) 法第三十条第一項に規定する特定課税仕入れに係る支払対価の額並びに同項に規定する特定課税仕入れに係る消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額(これらの税額に係る附帯税の額に相当する額を除く。)の合計額(第四項において「特定課税仕入れに係る支払対価等の額」という。)に係る支出

(3) 課税貨物の引取価額(課税貨物に係る第五十四条第一項第二号イに掲げる金額をいう。第四項において同じ。)に係る支出

(4) 借入金等の返済金又は償還金に係る支出

ロ 国又は地方公共団体が合理的な方法により資産の譲渡等の対価以外の収入の使途を明らかにした文書において、特定支出のためにのみ使用することとされている収入

ハ 公益社団法人又は公益財団法人が作成した寄附金の募集に係る文書において、特定支出のためにのみ使用することとされている当該寄附金の収入(当該寄附金が次に掲げる要件の全てを満たすことについて当該寄附金の募集に係る文書において明らかにされていることにつき、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成十八年法律第四十九号)第三条(行政庁)に規定する行政庁の確認を受けているものに限る。)

(1) 特定の活動に係る特定支出のためにのみ使用されること。

(2) 期間を限定して募集されること。

(3) 他の資金と明確に区分して管理されること。

特定支出にのみ使用される収入

消費税法施行令 第75条第1項第6号に規定されている収入のことです。
特定収入ではありません。

特定支出

課税仕入れ、課税貨物(あわせて課税仕入れ等という。)及び借入金の返済に係る支出以外の支出をいいます。

代表的なものには、利子、土地購入費、人件費等があります。

特定収入以外の収入

「特定収入に該当しない収入」+「特定支出にのみ使用される収入」

特定収入に係る仕入税額を控除する理由

NPO法人等は公益性、公共性のある事業を行っている場合が多く、補助金、寄附金、会費等の特定収入が活動財源になっています。課税仕入れの一部もここから賄われています。

特定収入で課税仕入れを行った場合、その課税仕入れに対価性はありません。したがって、特定収入によって賄われた課税仕入れ税額は、課税売上に係る消費税額から控除することはできません。

一般に、仕入税額控除が認められているのは、課税仕入れに含まれる消費税額が売上のためのコストという性質をもっているからです。

だからといって仕入税額控除を無制限に認めると、課税売上に係る消費税額に比べて課税仕入に係る消費税額が大きい場合には、常に消費税が還付されることになってしまいます。

このような事態を避けるために、課税売上税額から控除できるのは課税売上の対価としての課税仕入税額に限ることとしたのです。

NPO法人会計

Posted by matsui


よろしければシェアお願いします

  •  Twitter
  •  Pin it
130万円の壁、150万円の壁、さらに201万円の壁。疑問をまとめて一挙解決!
Next
法人税法における交際費課税の3大ポイント
Prev

関連記事

NPO法人会計基準が簡単にわかるための4つのこと

NPO法人は、市民による公益的な活動を進める組織です。市民に活動実態を知ってもら ...

NPO法人に特有の取引に関する会計処理の解説

NPO法人には営利企業とは異なる特有の取引が存在します。その処理方法について、N ...

NPO法人が遺贈寄付を受ける2つのケースの会計処理

「NPO 法人××に○○財産を寄付する。」という遺言を遺してお亡くなりになった方 ...

役員報酬の明示!NPO法人会計基準の改正に関する3つのポイント

NPO法人会計基準の一部が2017年12月2日に改正されました。改正の理由を知る ...

認定NPO法人の認定基準は全部で9つ

一定の基準を満たし、国税庁長官から認定を受けた認定NPO法人は、税務上の優遇措置 ...

メニュー

  • ホーム
  • 中小企業会計
  • 公益法人及び移行法人会計
  • 社会福祉法人会計
  • NPO法人会計
  • 会計 税務

新着記事

いち早く公益法人会計基準見直しの具体的内容をお届け!

公益法人会計に関して用語の概念、財務情報の開示場所が大幅に変わるため、事前の準備 ...

公益法人会計基準が見直されると定期提出書類も変わる

公益法人の制度改革に伴って、公益法人会計基準も見直されます。見直しの究極の目的は ...

社会福祉法人指導監査でよくある指摘事例

指導監査に同行して感じるのですが、社会福祉法人の管理レベルは法人によってさまざま ...

改正された暦年課税制度と相続時精算課税制度

贈与税の暦年課税と相続時精算課税は、いずれも改正されました。一概にどちらが有利と ...

公益法人制度改革!より柔軟・迅速な公益的活動のために~行政手続き面から

公益法人制度が変わります。 公益法人が、法人自らの経営戦略に沿って、社会的課題の ...

公益法人制度改革!より柔軟・迅速な公益的活動のために~財務規律面から

公益法人制度が変わります。 公益法人が、法人自らの経営戦略に沿って、社会的課題の ...

令和5年度税制改正大綱の注目ポイント3つ

インボイス制度が当初のものから見直され、従来の免税事業者であった者には負担軽減措 ...

カテゴリー

  • NPO法人会計 (8)
  • 中小企業会計 (6)
  • 会計 税務 (24)
  • 公益法人及び移行法人会計 (20)
  • 社会福祉法人会計 (13)

税金豆知識

  • 税金豆知識

Copyright © 2025 大阪の企業会計の主治医 All Rights Reserved.