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公益法人制度改革!より柔軟・迅速な公益的活動のために~財務規律面から

08/10/2023公益法人及び移行法人会計

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2023年6月に『有識者会議最終報告』が公表されました。
その一部をご紹介します。
今後、『有識者会議最終報告』に基づいて2024年に改正法案が国会に提出され、2025年度を目途に新公益法人制度が施行される予定です。

資金のより効果的な活用のための財務規律の柔軟化・迅速化

公益法人が保有する公益に活用されるべき資金については、過大に蓄積・滞留することなく、公益目的事業の実施のためにできる限り効果的に活用されることが重要です。

こうした趣旨で設けられている公益法人の財務規律について、法人の実情や環境変化に応じ、自らの経営判断と説明責任において資金を最大限効果的に活用できるよう、規律内容が柔軟化・明確化されます。

中期的な収支均衡の確保

「収支相償原則」は、一般的に「単年度の収支赤字を強いるものである」と理解されています。
しかしその本質は、公益目的事業の収入と適正な費用を透明化し比較することで、収入超が恒常化しない収支構造であることを制度上確保し、公益目的事業に充てられるべき財源の最大限の活用を促す規律です。

『有識者会議最終報告』では、以下のように呼称も含め抜本的に見直すことを指摘しています。

イ 「中期的な収支均衡」
〇「公益目的事業の実施に要する適正な費用を償う額を超える収入を得てはならない」とされている現行の規定を、公益目的事業の収入と適正な費用について中期的に均衡を図る趣旨が明確となるよう見直す。【法律】
〇「中期的な収支均衡」の判定は、公益目的事業全体について、過去に発生した「赤字」も通算した収支差額に着目して行う。その際、ロの「公益充実資金(仮称)」の積立ては費用とみなす。その上でなお「黒字」が生じる場合は、中期的に均衡状態を回復するものとする。【内閣府令・ガイドライン】
・法人が設定し認定を受けている「公1」・「公2」等の事業ごとの収支については、法人の損益計算書(内訳表)により情報開示する(構造的に収入が費用を上回る(黒字)事業がある場合は、行政庁において当該事業の公益性の確認等を行う。)。
・収支均衡の判定及び均衡状態を回復する際の「中期的」は、5年間とする。
ロ 「公益充実資金(仮称)」の創設
〇将来の公益目的事業の発展・拡充を積極的に肯定する観点から、「公益充実資金(仮称)」を創設する。当該資金の積立ては「中期的な収支均衡」の判定において費用とみなす。【法律】
〇「公益充実資金(仮称)」は、公益目的事業に係る従来の「特定費用準備資金」及び「資産取得資金」を包括する資金とし、法人の実情や環境変化に応じた柔軟な資金管理が可能となるよう、以下のような設定も可能とする。資金の積立て及び使用・取崩しの状況は、法人において情報開示することとする。【内閣府令・ガイドライン・会計基準】
・細かな事業単位ではなく大括りな設定(「公1」・「公2」等の事業単位を横断する使途の設定も可)
・いまだ認定されていない将来の新規事業のための資金の積立て
〇「指定正味財産」の「指定」における使途制約範囲の緩和
「指定正味財産」に繰入れられる寄附金の使途について、最大で「法人の公益目的事業全体」とする指定も可能とし、寄附者の意思確認を容易化する。【ガイドライン・会計基準】

最大の変更点は、過去の赤字を考慮することにあります。

従来であれば、当年度に公益目的事業会計の当期経常増減額が50の黒字になった場合、次年度以降の赤字(次年度△15、次々年度△20)と対応させます。
その結果、収支相償上の剰余金は次々年度末において15(=50-15-20)の残っていると計算します。

ところが改正案では、過去の赤字(前年度△18、前々年度△12)を含めて対応させることが可能となります。
その結果、収支相償上の剰余金は次々年度には解消している(△18+△12+50-15-20=△15)と計算します。

遊休財産(使途不特定財産)の適正管理

遊休財産規制は、公益法人が、社会経済情勢の変化等に対応しつつ、安定した法人運営を継続するため、法人にとって一定程度自由に使用・処分できる財産を確保しつつ、公益目的事業の実施とは関係なく財産が法人内部に過大に蓄積されること(死蔵)を避けるための規律です。

しかしながら、安定した法人運営の継続や不測の事態に備えるために必要な財産は、法人の事業内容や規模等によって異なり、公益目的事業費1年相当分という上限を超えた保有が必要な場合もあり得ます。
また、新型コロナウイルス感染症等の突発的な理由により、例年並みの事業を実施できなかった場合には、保有の認められる上限額が急激に変動することや、上限額となる当該事業年度の事業費が事業年度末まで確定しないことなど、変化の激しい時代において、法人にとって予見可能性が低い枠組みとなっています。

『有識者会議最終報告』では、以下のように見直します。

イ「上限」(公益目的事業費1年相当分)超過の取扱い
〇遊休財産(使途不特定財産)が合理的な理由により上限額を超過した場合、法人自ら、「超過した理由」及び「超過額を将来の公益目的事業に使用する旨」を行政庁の定める様式に記載し、開示することで明らかにする。【法律・内閣府令】
〇貸借対照表の内訳表により財務状況を透明化し、超過額が公益目的事業のために使用されることを明確化する。【ガイドライン・会計基準】
〇翌事業年度以降も上限額を超過している状態が継続している場合、そのことに引き続き合理的な理由があるか、また超過額の公益目的事業への使用状況等をフォローアップする。【ガイドライン】
ロ「上限」額の算定方法について、予見可能性の向上、短期変動の緩和
上限額の基準となる1年相当分の公益目的事業費について、現行の「当該事業年度の公益目的事業費」から、「前事業年度までの5年間の公益目的事業費の平均額」に改める。なお、法人の公益目的事業の規模を表す指標として直近の公益目的事業費がより適切である等の場合は、法人においてその理由を明示した上で、「当該事業年度の公益目的事業費」又は「前事業年度の公益目的事業費」を選択することも可能とする。【法律・内閣府令】

公益法人及び移行法人会計

Posted by matsui


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