公益法人会計基準における為替差損益の表示
公益法人会計基準の運用指針が改訂されました。
その内容は、公益法人会計基準の運用指針「12.財務諸表の科目」において為替差損益等の科目例示がなく、処理が不明確であったことを是正したものです。
この改訂は、外貨建取引等会計委処理基準及び認定法の収支相償の趣旨を踏まえて整理されました。
正味財産増減計算書における為替差損益の表示
為替差損益の表示明確化の背景
従来は、外貨建取引の会計処理について、公益法人会計基準 注解8において示されているものの、具体的な表示場所等については財務諸表の様式等で明示されたものがありませんでした。
外貨建有価証券は、子会社株式及び関連会社株式を除き、決算時の為替相場による円換算額を付し、決算時における換算によって生じた換算差額は、原則として、当期の為替差損益として処理する。
最近の低金利を反映して外貨建有価証券が保有されるケースが増え、処理を明確にするために、具体的な表示場所を示す必要が生じたのです。
一般正味財産増減の部における表示
時価法を適用した投資有価証券以外の財産に係る為替差損益は、経常収益の雑収益の直前、事業費の雑費の直前、管理費の雑費の直前に表示されます。
一方、時価法を適用した投資有価証券に係る為替差損益は、評価損益等調整前当期増減額の直後の各評価損益等に含めて表示されます。
正味財産増減計算書
(単位:円)
科目 | 当年度 | 前年度 | 増減 |
Ⅰ 一般正味財産増減の部
1 経常損益の部 (1) 経常収益 基本財産運用益 特定資産運用益 ・ ・ 受取寄付金 為替差益 雑収益 |
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経常収益計
(2) 経常費用 事業費 給料手当 ・ ・ 為替差損 雑費 管理費 役員報酬 給料手当 ・ ・ 為替差損 雑費 |
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経常費用計 | |||
評価損益等調整前当期経常増減額 | |||
基本財産評価損益等
特定資産評価損益等 投資有価証券評価損益等 |
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当期経常増減額
・ ・ |
指定正味財産増減の部における表示
時価法を適用した投資有価証券に係る為替差損益は、基本財産評価損益等、特定資産評価損益等に含めて表示されます。
正味財産増減計算書
(単位:円)
科目 | 当年度 | 前年度 | 増減 |
・ ・ 一般正味財産期末残高 Ⅱ 指定正味財産増減の部 受取補助金等 当期指定正味財産増減額 基本財産評価損益等 特定資産評価損益等 指定正味財産期首残高 指定正味財産期末残高 Ⅲ 正味財産期末残高 |
為替差損益を処理する勘定科目
為替差損益の処理に関連する勘定科目を説明します。
一般正味財産増減の部における表示(時価法)
基本財産評価損益等 | 一般正味財産を充当した基本財産に含められている投資有価証券に時価法を適用した場合における評価損益、売却損益及び為替差損益を計上 |
特定資産評価損益等 | 一般正味財産を充当した特定資産に含められている投資有価証券に時価法を適用した場合における評価損益、売却損益及び為替差損益を計上 |
投資有価証券評価損益等 | 資有価証券に時価法を適用した場合における評価損益、売却損益及び為替差損益を計上 |
一般正味財産増減の部における表示(その他の為替差損益)
為替差損益 | 為替差損益は原則として経常収益及び経常費用に計上することとし、運用指針の科目例示に為替差益及び為替差損を追加 |
指定正味財産増減の部における表示
基本財産評価損益等及び特定資産評価損益等 | 科目例示において、基本財産評価益、特定資産評価益、基本財産評価損及び特定資産評価損を削除し、基本財産評価損益等及び特定資産評価損益等を追加
基本財産評価損益等については、基本財産に係る為替差損益も含めて計上し、及び特定資産評価損益等については、特定資産に係る為替差損益も含めて計上 |
非営利法人委員会実務指針 第38号
主な処理方法をまとめます。
・満期保有目的の外貨建債券については、外国通貨による償却原価(又は取得原価)に決算時の為替相場による円換算額を付する(外貨建債券について償却原価法を適用する場合における償却額は、外国通貨による償却額を期中平均相場により円換算した額による。)
この場合に生じる換算差額は、「経常増減の部」の為替差損益として処理する。
・満期保有目的の債券並びに子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券(1年以内に満期が到来する債券等)及び投資有価証券のうち市場価格のあるものについては、外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算した額を付する。
この場合に生じる換算差額は、「経常増減の部」の評価損益等として処理する。
・満期保有目的の債券並びに子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券(1年以内に満期が到来する債券等)及び投資有価証券のうち市場価格のないものについては、外国通貨による取得価額を決算時の為替相場により円換算した額を付する。
この場合に生じる換算差額は、「経常増減の部」の為替差損益として処理する。
・満期保有目的の債券並びに子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券のうち売買目的有価証券については、外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算した額を付する。
この場合に生じる換算差額は、「経常増減の部」の有価証券運用損益として処理する。
・時価の著しい下落又は実質価額の著しい低下により帳簿価額の引下げが求められる場合には、外国通貨による時価を決算時の為替相場により円換算した額を付する。
この場合に生じる換算差額は、「経常増減の部」の投資有価証券減損損失の科目により処理する。
さらに上記の内容を図示します。
満期保有目的の債券 | 子会社株式及び関連会社株式 | 満期保有目的の債券並びに子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券 | |
原価法又は償却原価法を採用している場合の換算差額 | 為替差損益 |
― (換算差額の発生なし) |
為替差損益 |
時価法を採用している場合の換算差額 | 評価損益等
(売買目的有価証券の場合は、有価証券運用損益) |
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時価の著しい下落又は実質価額の著しい低下の場合の換算差額
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投資有価証券減損損失(経常外費用) |
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