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公益法人において積み上がった6号財産のすべてが、遊休財産額を算定する際の控除対象財産となるか

07/03/201909/26/2019公益法人及び移行法人会計

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遊休財産額を算定する際の控除対象財産のうち、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律施行規則(以下「認定規則」という。)第22条第3項第6号に規定する財産(以下6号財産という。)において、金融資産から発生する果実が積み上がり、適切に公益目的事業に費消されていないおそれがある事例が存在しています。

公益法人が公益目的事業を行うことにより、公益の増進を行い、活力ある社会の実現を目指すという公益法人制度の目的を踏まえると、このような現状を是正することが求められていました。

平成31年3月25日の「認定規則」の改正によって、6号財産の範囲は、公益目的保有財産等から生じる果実のうち相当の期間内に費消することが見込まれるものに限ることになりました。

目次
  • 1. 公益法人における遊休財産額保有制限
    • 1.1. 遊休財産額保有制限の内容
    • 1.2. 控除対象財産
  • 2. 積み上がった6号財産を解消するための対処方針
    • 2.1. 控除対象財産の明確化
    • 2.2. 改正の具体的内容
  • 3. 「認定規則」改正の適用時期

公益法人における遊休財産額保有制限

遊休財産額保有制限の内容

遊休財産額とは、公益目的事業又はこれを行うために必要な収益事業等その他の業務若しくは活動のために現に使用されておらず、かつ、引き続きこれらのために使用されることが見込まれない財産の額をいいます。

遊休財産額保有制限は、公益法人における財務三基準の一つです。
具体的な内容は、「遊休財産額が一事業年度の公益目的事業費を超えてはならない。」ということです。
それは、以下の考え方が背景にあります。

公益法人制度

公益目的事業を行うことにより、公益の増進を図り、活力ある社会の実現を目指すという公益法人制度の目的に鑑みると、公益法人は一般国民から受けた寄附等の財産を速やかに公益目的事業のために使用すべきであり、公益目的事業の実施とは何ら無関係に法人内部に蓄積すべきではない。

一方、法人の財産の中で目的、用途が具体的に決まっている一定の財産については、公益目的事業の実施とは無関係に法人内部に蓄積されているとはいえないので、控除財産として遊休財産額の算定の際には差し引かれます。

控除対象財産

控除対象財産は、「認定規則」第22条第3項第1号から第6号に列挙されています。
この号数を略称に用いて、1号財産、6号財産と呼ばれます。

  • 1号財産
    公益目的保有財産
    公益目的保有財産は、公益目的事業財産の一部であり、次の固定資産が該当します。
     ○公益目的事業財産を支出することで得た財産
     ○不可欠特定財産
     ○法人自ら公益目的に使用すると定めた財産
  • 2号財産
    公益目的事業を行うために必要な収益事業等その他の業務又は活動の用に供する財産
  • 3号財産
    資産取得資金
  • 4号財産
    特定費用準備資金
  • 5号財産
    寄附その他これに類する行為によって受け入れた財産であって、当該財産を交付した者の定めた使途に従って使用し、若しくは保有しているもの
  • 6号財産
    寄附その他これに類する行為によって受け入れた財産であって、当該財産を交付した者の定めた使途に充てるために保有している資金

積み上がった6号財産を解消するための対処方針

控除対象財産の明確化

『平成29年度 公益法人の会計に関する諸課題の検討結果について』では、「遊休財産額算定の際に控除される財産の明確化」として、次のように記載されていました。

【費消時期の指定はないが使途の指定がある果実】これについては、公益社団法人及び公益財団法人の認定に関する法律(以下「認定法」という。)上、遊休財産額規制の対象になるかどうか、明らかではない。
そのため、当該果実を費消することを担保するため遊休財産額規制の対象とすることを認定規則及び公益認定等ガイドライン(以下「ガイドライン」という。)の改正等により明確化することが適当である。

すなわち、控除対象財産とは認めず遊休財産額規制の対象とする方向です。

【明確に費消時期及び使途が定められた果実】これについては、現状の公益法人会計基準における指定正味財産の定義及び認定法第16 条が規定する遊休財産額の定義を踏まえても、当該果実を遊休財産額の算定に含めることは困難であり、控除対象財産とする必要がある。
よって、当該果実については、従来通り6号財産とすることが可能であることとすることが適当である。
なお、この場合においても費消時期の指定については、原則として、交付者の意思を尊重すべきものであると考えられるが、ガイドラインにおいて現行の特定費用準備資金について「実施までに例えば10 年の長期を超えるような事業は、積立て対象として適当ではない」とされていることを踏まえ、10 年の長期を超える費消時期の指定は、公益の増進を担う公益法人に対する寄附金の使途指定として適当ではないと整理し、その旨を「ガイドライン」の改正等により明確化し、相当の期間内に当該果実が費消されることを担保することとすることが適当であると考える。

すなわち、控除対象財産と認めて遊休財産額規制の対象外とする方向です。

改正の具体的内容

「認定規則」に次の規定が括弧書きで追加されました。

「認定規則」第22条第3項第6号

公益目的保有財産等から生じる果実のうち相当の期間内に費消することが見込まれるものに限る。

また、これを受けて「ガイドライン」には、次のように記載されました。

「ガイドライン」Ⅰ 8.認定法第5条第9号、第16条関係<遊休財産額の保有の制限>

例えば、研究用設備を購入する旨定めがあって寄附されたが、研究が初期段階のため購入時期が到来するまで保有している資金が該当する。
「相当の期間内に費消することが見込まれる」と認められるためには、公益目的保有財産等から生じた果実についても、公益法人は寄附等を受けた財産を速やかに公益目的事業のために使用するべきであり、公益目的事業の実施とは何ら無関係に法人内部に蓄積するべきではないという遊休財産額の保有の制限の趣旨等に鑑みて、相当の期間内に財産を交付した者の定めた使途に従って全て費消することが具体的に見込まれることを要する。
したがって、例えば具体的な費消時期が明らかでない場合や、費消の時期が10年を超えるような場合には、基本的に「相当の期間内に費消することが見込まれる」とは認められない。

「認定規則」改正の適用時期

内閣府令によって、「認定規則」改正は公布の日から施行されています。
しかし、公益法人の決算月に応じて適用時期が異なりますので、注意してください。
施行後最初に開始する事業年度からの適用です。

【3月決算法人の場合】
平成31年4月から始まる事業年度から適用

【6月決算法人の場合】
令和元年7月から始まる事業年度から適用
 

主治医松井の診断

今回の改正で、相当の期間内に費消することが見込まれない財産は6号財産とは認められなくなりました。
しかしながら、現状では6号財産には「公益目的保有財産等から生じる果実」だけではなく「公益目的保有財産」そのものが含まれている場合が、少なからずあるのではないでしょうか。

このような場合に、控除対象財産から除外されることのないよう、早めに所轄庁に相談することが大切です。

公益法人及び移行法人会計

Posted by matsui


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