平成31年における有価証券報告書の3大改正内容

会計 税務

有価証券報告書(有報)は、上場企業等が事業年度ごとに自社の情報を開示するために作成する外部向け報告書です。質・量とも多く簡単には読みこなせませんが、企業の情報を得るにはたいへん有効なツールとなります。

平成31年1月31日付で、「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」が公布・施行され、主に以下の観点から有価証券報告書(有報)に載せる情報が改正されました。

有価証券報告書における改正の3本柱

  1. 財務情報及び記載情報の充実
  2. 建設的な対話の促進に向けた情報の提供
  3. 情報の信頼性・適時性の確保に向けた取り組み

①と③の項目(ただし、③は監査役会等の活動状況及び監査法人による継続監査期間に限定)については、令和2年3月31日以後に終了する事業年度(令和2年3月期以降)に係る有報から適用されます。
ただし、平成31年3月期からの早期適用も可能です。

それ以外の項目については、平成31年3月31日以後に終了する事業年度(平成31年3月期以降)に係る有報から適用されます。
ただし、③のうちネットワークファームに対する監査報酬等については、令和2年2月期までは従前の記載によることができます。

改正の詳しい内容については、金融庁HPをご覧ください。

改正後の有価証券報告書の記載項目

有報の記載項目を列挙します。
なお、赤字が改正項目です。

有価証券報告書の記載項目

改正箇所

第一部   企業情報

第1    企業の概況

第2    事業の状況

1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

2 事業等のリスク

3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析

4 経営上の重要な契約等

5 研究開発活動

第3    設備の状況

1 設備投資等の概要

2 主要な設備の状況

3 設備の新設、除却等の計画

第4    提出会社の状況

1 株式等の状況

2 自己株式の取得等の状況

3 配当政策

4 コーポレート・ガバナンスの状況等

(1) コーポレート・ガバナンスの概要

(2) 役員の状況

(3) 監査の状況

①     監査役監査の状況 (新設)

②     会計監査の状況 (新設)

(4) 役員の報酬等

(5) 株式の保有状況

 

 

 

A

B

C

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

F

G

D

E

第5    経理の状況

冒頭記載

1 連結財務諸表等

(1) 連結財務諸表

(2) その他

2 事業等のリスク

(1) 財務諸表

(2) 主な資産及び負債の内容

(3) その他

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第6    提出会社の株式事務の概要

第7    提出会社の参考情報

第二部 退出会社の保証会社等の情報

 

 

 

独立監査人の監査報告書

内部統制報告書

確認書

 

 

 

有価証券報告書における財務情報及び記載情報の充実

経営方針・経営戦略等

市場の状況、競争優位性、主要製品・サービス、顧客基盤等に関する経営者の認識の説明を含めた記載が追加で求められます。⇒ 該当箇所 A

事業等のリスク

顕在化する可能性の程度や時期、リスクの事業へ与える影響の内容、リスクへの対応策の説明が追加で求められます。⇒ 該当箇所 B

会計上の見積りや見積りに用いた仮定

不確実性の内容やその変動により経営成績に生じる影響等に関する経営者の認識の記載が追加で求められます。⇒ 該当箇所 C

有価証券報告書における建設的な対話の促進に向けた情報の提供

役員の報酬

報酬プログラムの説明、プログラムに基づく報酬実積等の記載が求められます。⇒ 該当箇所 D
報酬プログラムの説明とは、業績連動報酬に関する情報や報酬の決定に関する役職ごとの方針等をいいます。

政策保有株式

保有の合理性の検証方法等について開示が求められるとともに、個別開示の対象となる銘柄数が現状の30から60に拡大されます。⇒ 該当箇所 E

有価証券報告書における情報の信頼性・適時性の確保に向けた取り組み

監査役会等の活動状況

新たな開示項目です。
ここには、提出会社が監査法人等を選定した理由や提出会社の監査役等による監査法人の評価も記載されます。⇒ 該当箇所 F

ネットワークファームに対する監査報酬等

新たな開示項目です。
提出会社及び提出会社の連結子会社がそれぞれ、監査法人と同一のネットワークに属する者に対して支払った、又は支払うべき報酬が記載されます。⇒ 該当箇所 G

有価証券報告書における記述情報の開示に関する原則

記述情報とは、経営戦略・ビジネスモデル、MD&A、リスク情報、重要な契約、ガバナンスに関する情報等を指しています。
これらの情報の開示に際して、ルールへの形式的な対応にとどまらないように、望ましい開示の考え方・内容・取り組み方をまとめたプリンシプルベースのガイダンスが策定されました

以下のような内容です。

経営目標の議論の適切な反映

  • 取締役会や経営会議における経営方針・業績評価・経営リスクに関する議論のディスクロージャーへの適切な反映
  • 経営トップによるディスクロージャーに関する基本方針の提示

重要性(マテリアリティ)

  • 情報の重要性の判断における業績に与える影響度及びその発生の蓋然性の考慮、並びに重要性のディスクロージャーへの適切な反映

資本コスト等に関する議論の反映

  • 取締役会や経営会議における成長投資・手許資金・株主還元のあり方や資本コストに関する議論、並びにそれらを踏まえた今後の経営の方向性のディスクロージャーへの適切な反映

セグメント情報

  • 経営上、事業ポートフォリオのあり方についての検討が求められている中、経営の目線を十分に踏まえた深度あるセグメント情報の開示

分かりやすさ

  • より分かりやすい開示の実現に向けた、図表、グラフ、写真等の積極的な活用

有価証券報告書の利用

有報では「経理の状況」が中心的な位置づけになると思います。
しかし、前述したように有報には、定量的な情報ばかりでなく定性的な情報も多く含まれています。数字が苦手な方は決算数値にこだわらず、関心のあるところからご覧ください。
情報提供が投資家(現在の株主だけでなく将来の株主を含む)保護の基本原則です。

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事業区分 該当する事業 みなし仕入率
第一種事業 卸売業 90%
第二種事業 小売業 80%
第三種事業 製造業 70%
第四種事業 飲食店業、その他の事業 60%
第五種事業 金融及び保険業 、運輸通信業、サービス業(飲食店業を除く)。 50%
第六種事業 不動産業 40%

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Posted by matsui