NPO法人における現物寄付受取りの会計処理4つのパターン
改正後のNPO法人会計基準では、「受取寄付金は、確実に入金されることが明らかになった場合に収益として計上する」とありますが、現物で寄付を受取る場合には、収益認識時点をどのように考えればよいでのしょうか。
NPO法人会計基準の改正については、以下を参照してください。
原則として、現物で寄付を受取る場合には、その現物資産がNPO 法人に引き渡される等その資産の所有権がNPO 法人に移転した時点で収益に計上します。
ただし、金銭による寄付と違って、現物資産の中には公正な評価額(貸借対照表に計上すべき金額=収益計上すべき額)を算定することが難しいものもあります。このような場合には、所有権がNPO 法人に移転されていても、収益を計上することはありません。
使用型の現物寄付
使用型とは、活動拠点となる不動産の寄付を受けた場合のように、現物資産をNPO 法人の活動に使用する場合をいいます。
このような場合には、現物資産をNPO 法人が取得した時にその時の公正な評価額で収益計上したうえで、減価償却資産であれば、毎事業年度、減価償却を行います。
現物寄付受入時
(借方) 固定資産 ××× /(貸方) 資産受贈益 ××× 【公正な評価額】
事業年度末
(借方) 減価償却費 ××× /(貸方) 固定資産 ×××
※固定資産が減価償却資産でなければ、事業年度末の減価償却に関する会計処理は不要です。
支援物資型の現物寄付
支援物資型とは、災害時に支援物資の寄付を受けた場合のように、現物で受けた資産をそのままの形で受益者へ送る場合をいいます。
この場合には、支援物資の寄付を受けた時点で公正な評価額で収益計上した上で、その物資を受益者に届けた時に支援用消耗品費などの科目で活動計算書に費用計上します。ただし、支援物資を公正な評価額で評価できない場合には、無理に貸借対照表及び活動計算書に計上しません。事業年度末に支援物資がまだ残っている場合には、注記事項として、支援物資の内容や数量の概要を注記したり、財産目録で、金額欄には「評価せず」と記載することも可能です。
また、支援物資がNPO法人を経由しただけで、実質的にその支援物資の所有権がNPO法人に移転したと言えないようなものであれば、そのNPO法人の貸借対照表及び活動計算書には計上しません。保管責任があるために損失が発生する可能性があれば、注記をすることになります。
現物寄付受入時
(借方) 貯蔵品 ××× /(貸方) 資産受贈益 ××× 【公正な評価額】
事業年度末
(借方) 支援用消耗品費 ××× /(貸方) 貯蔵品 ×××
保存型の現物寄付
保存型とは、文化財の寄付を受けた場合のように、現物で受けた資産を保存する場合をいいます。
この場合には、公正な評価額を算定することが難しい場合もありますが、重要性の高い場合には、そうした資産を保有していることを財務諸表の利用者に知ってもらうために、1円の備忘価額で貸借対照表に計上します。
換金型の現物寄付
換金型とは、書き損じはがきの寄付を受けた場合のように、現物で受けた資産を換金して活動に充てる場合をいいます。
この場合には、その換金の主体になる者が寄付者なのか、寄付を受けるNPO 法人なのかによって会計処理は違ってきます。
換金主体が寄付者
換金主体が寄付者であれば、換金がされ、NPO 法人に入金されるまでは所有権は寄付者にありますので、NPO 法人に現預金が入金されることが確実になった時点で受取寄付金として収益計上します。
現物寄付受入時
仕訳なし
換金時・・・寄付者からNPO 法人への寄付と考える
(借方) 現預金 ××× /(貸方) 受取寄付金 ×××
換金主体がNPO法人
換金型の現物寄付については、寄付者が現物をNPO 法人に寄付をし、NPO法人が換金の主体になりNPO 法人自身で換金、あるいは仲介業者に換金を依頼して換金をする場合があります。
このような場合には、現物資産の受入時に公正な評価額で「資産受贈益」として収益計上します。ただし、公正な評価額で評価することが難しい場合、金額的に重要性が乏しい場合、寄付を受けた事業年度と同じ事業年度内に換金されている場合には、換金時に「受取寄付金」として収益に計上することも可能です。
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