役員報酬の明示!NPO法人会計基準の改正に関する3つのポイント
NPO法人会計基準の一部が2017年12月2日に改正されました。そのポイントは大きく3つありますが、損益に影響が及ぶ内容が一つ含まれています。
本来、NPO法人会計基準の適用は強制されるものではありません。今回、改正された会計基準の適用時期も法人の任意です。
受取寄付金の収益認識
受取寄付金は、確実に入金されることが明らかになった場合に収益として計上する。
確実に入金されることが明らかになった場合とは
一般的には、実際にNPO法人に現預金として入金されたときが「確実」であるといえます。しかし、入金される前の状態でも確実に入金されることが明らかなケースがあります。
例えば、
- 債権譲渡契約に基づくクレジットによる寄付の場合
- 寄付申込書が提出されたのが年度末直前で、決算手続中に入金があった場合
このような場合には、事業年度末に入金がなくてもその事業年度の収益に計上します。
クレジットカードによる寄付の収益計上の時期
クレジットカードによる寄付は、大部分が債権譲渡契約になっています。債権譲渡契約では、まず、クレジットカード会社が寄付者に代わってNPO法人に対して寄付金を立替払いします。次に、寄付による入金を受ける債権をNPO 法人がクレジットカード会社に対し譲渡し、クレジットカード会社が代金を寄付者から徴収するという形をとります。
したがって、寄付者がクレジットカードにより寄付をした段階で、債権譲渡が完了することによってクレジットカード会社からNPO 法人に入金されることが確実になるため、その時点で収益に計上します。
たとえ、寄付者の預金口座の残高が不足してクレジットカード会社への引落しができない事態が発生したとしても、クレジットカード会社からNPO 法人への入金の不履行や、返金の請求が起こらないからです。
現物で寄付を受け取る場合の収益計上の時期
現物で寄付を受取る場合には、その現物資産がNPO 法人に引き渡されるなど、その資
産の所有権がNPO 法人に移転した時点に収益に計上します。ただし、金銭による寄付と違って、現物資産の中には、計上すべき金額を算定することが難しいものもあります。
合理的に金額を算定することが難しい場合には、所有権がNPO 法人に移転されていても、収益には計上しません。
活動計算書における役員報酬の明示
経常費用 - 事業費 - 人件費の部分に「役員報酬」を追加
役員への人件費支払いに使用する勘定科目
監事への報酬は、管理費に役員報酬として計上します。監事の職務はNPO 法18 条により監査に限定されており、スタッフとの兼任も禁止されているためです。
一方、理事は、法人のすべての業務を実施することができるので、理事が実施した業務への人件費の支払いのうち事業に直接かかわる部分は事業費に計上し、法人の運営管理にかかわる部分は管理費に計上します。この場合、いずれも役員報酬という勘定科目を使用します。
役員報酬を明示させるのは、役員、とりわけ法人の代表者が独断で自分への支払いを不当に大きくすることなどの防止に役立つとの考えるからです。
代表理事の報酬を「給与手当」で計上することの可否
NPO 法人のスタッフが理事に選任されることもあります。こうした「使用人兼務役員」の場合、スタッフ(使用人)部分の支払いは引き続き給与手当の科目で計上し、役員手当など役員としての支払の部分を役員報酬として計上します。
しかし、代表理事は使用人兼務役員に該当せず、支払われた全額を役員報酬として計上することになります。
ただ、「指定管理を受けた事業では役員報酬という勘定科目が使用できない」などの理由により、役員への支払いを給与手当という勘定科目で計上せざるを得ないような場合も実務上はあります。こうした場合には、「役員及びその近親者との取引の注記」に、役員報酬の勘定科目を使用しないで支給した役員への人件費を注記します。このようにすることによって、活動計算書に役員報酬として計上されている金額と、この注記に記載されている金額を合計して、役員に対する人件費の総額が把握することが可能になります。
注記事項「役員及びその近親者との取引の内容」の例
科目 | 財務諸表に計上された金額 | 内、役員との取引 | 内、近親者及び支配法人との取引 |
(活動計算書) | |||
給与手当(事業費) | 2,100,000 | 1,500,000 | |
地代家賃(事業費) | 1,350,000 | 1,200,000 | |
活動計算書計 | 3,450,000 | 1,500,000 | 1,200,000 |
その他事業がある場合の活動計算書における正味財産額の表示
前期繰越正味財産額及び次期繰越正味財産額を、特定非営利活動に係る事業及びその他事業並びに合計欄のすべての区分について記載するように変更
従来の表示は合計欄だけ
従来、前期繰越正味財産額及び次期繰越正味財産額の金額は合計欄だけに記載していました。これらに経理区分振替額も併せて、事業ごとに記載することになります。
記載例3 その他事業がある場合の活動計算書
科目 | 特定非営利活動に係る事業 | その他の事業 | 合計 |
・ | ・ | ・ | ・ |
経理区分振替額 | 900,000 | △900,000 | 0 |
当期正味財産増減額 | △160,000 | △140,000 | △300,000 |
前期繰越正味財産額 | 1,660,000 | 140,000 | 1,800,000 |
次期繰越正味財産額 | 1,500,000 | 0 | 1,500,000 |