平成30年3月期決算における会計上の7つの改正点

04/28/2018会計 税務

平成30年3月期から適用される会計上の主な改正内容をまとめました。上場企業が採用する会計基準に関することですので、関係者の皆様は是非ご確認ください。また、中小企業の皆さまにも関心を持っていただければ幸いです。

連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理

基準平成29年3月29日 「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」(改正実務対応報告第18号)

国内子会社又は国内関連会社が指定国際会計基準又は修正国際会計基準を採用している場合の連結財務諸表作成における取扱いが示されました。

本実務対応報告では、指定国際会計基準(「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条に規定する指定国際会計基準をいう。)に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している国内子会社等を本実務対応報告の対象範囲に含めることとされています。

また、ASBJ(企業会計基準委員会)が公表した「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」を国内子会社等が適用する場合に関しても、同様に、本実務対応報告の対象範囲に含めることとされています。

本実務対応報告は、平成29年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用します。ただし、公表日以後、適用することができます。

公共施設等運営事業における運営者の会計処理

基準平成29年5月2日 「公共施設等運営事業における運営者の会計処理等に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第35号)

本実務対応報告は、公共施設等運営事業において、運営権者による以下の取引に関する会計処理及び開示に適用されます。

  1. 公共施設等運営権(民間資金法第2条第7項に規定する公共施設等運営権をいう。)を取得する取引
  2. 公共施設等に係る更新投資(民間資金法第2条第6項に基づき、運営権者が行う公共施設等の維持管理をいう。)を実施する取引

管理者等と運営権者との間で締結された実施契約において定められた公共施設等運営権の対価(以下「運営権対価」という。)について、合理的に見積られた支出額の総額を無形固定資産として計上します。

また、運営権対価を分割で支払う場合、資産及び負債の計上額は、運営権対価の支出額の総額の現在価値によります。

本実務対応報告は、平成29年5月31日以後終了する事業年度及び四半期会計期間から適用します。

従業員等に対する有償新株予約権の付与

基準平成30年1月12日 「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」(実務対応報告第36号)

従業員等に対して本実務対応報告の対象となる権利確定条件付き有償新株予約権を付与する場合、当該権利確定条件付き有償新株予約権は、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」(以下「ストック・オプション会計基準」という。)第2項(2)に定めるストック・オプションに該当するものとするとされます。

適用時期等の取扱い

  • 本実務対応報告は、平成30年4月1日以後適用します。ただし、本実務対応報告の公表日以後適用することができます。
  • 上記の定めにかかわらず、本実務対応報告の適用日より前に従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与した取引については、本実務対応報告の会計処理によらず、従来採用していた会計処理を継続することができます。この場合、本実務対応報告第9項の定めに代えて当該取引について次の事項を注記します。
    1. 権利確定条件付き有償新株予約権の概要(各会計期間において存在した権利確定条件付き有償新株予約権の内容、規模(付与数等)及びその変動状況(行使数や失効数等))。ただし、付与日における公正な評価単価については、記載を要しません。
    2. 採用している会計処理の概要
  • 本実務対応報告の適用初年度において、これまでの会計処理と異なることとなる場合及び上記の定めを適用し従来採用していた会計処理を継続する場合、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱います

税効果会計基準の一部改正

基準

平成30年2月16日 「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号)

平成30年2月16日 「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第28号)

平成30年2月16日 「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(改正企業会計基準適用指針26号)

平成30年2月16日 「中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第29号)

税効果会計に関する実務指針として、繰延税金資産の回収可能性に関するものを日本公認会計士協会が定めています。

本会計基準等は、基本的にその内容を踏襲した上で、表示及び注記事項に関する定め及び必要と考えられる一部の会計処理について見直しを行うことを目的として公表されたものです。

改正項目 適用時期
(表示の取扱い)
繰延税金資産は投資その他の資産の区分に表示し、繰延税金負債は固定負債の区分に表示する。
平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から原則適用とし、平成30年3月31日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の年度末から早期適用できる。
(注記事項の取扱い)
・評価性引当額の内訳に関する情報
・税務上の繰越欠損金に関する情報
・連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における注記事項
(会計処理の取扱い)
個別財務諸表における子会社株式等に係る将来加算一時差異の取扱い
平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。
(会計処理の取扱い)
<分類1>に該当する企業における繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い
(中間税効果適用指針)

 

平成30年4月1日以後開始する中間連結会計期間及び中間会計期間の期首から適用する。

 

マイナス金利の取扱い

基準平成30年3月13日 「実務対応報告第34号の適用時期に関する当面の取扱い」(実務対応報告第37号)

実務対応報告第34号「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い」では、以下の取扱い「1年間」に限定していました。

その内容は、国債等の利回りでマイナスが見受けられる状況に関連して退職給付債務の計算における割引率について、利回りの下限としてゼロを利用する方法とマイナスの利回りをそのまま利用する方法のいずれかの方法によることもできる、というものです。

本実務対応報告は、「当該取扱いを変更する必要がないとASBJが認める当面の間」として延長することを目的として公表されたものです。

本実務対応報告は、公表日以後適用します。

仮装通貨の会計処理

基準平成30年3月14日 「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」(実務対応報告第38号)

平成28年に公布された「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第62号)により、「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号)が改正され、仮想通貨が定義された上で、仮想通貨交換業者に対して登録制が導入されました。

これを受けて、本実務対応報告は、仮想通貨の会計処理及び開示に関する当面の取扱いを明らかにすることを目的として公表されたものです。

仮想通貨交換業者及び仮想通貨利用者は、保有する仮想通貨(仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨を除く。)について、活発な市場が存在する場合、市場価格に基づく価額をもって当該仮想通貨の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理します

本実務対応報告は、平成30年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用します。ただし、公表日以後終了する事業年度及び四半期会計期間から早期適用することができます。

収益認識に関する会計基準

基準平成30年3月30日 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)
平成30年3月30日 「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第30号)

我が国においては、企業会計原則の損益計算書原則に、「売上高は実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」とされているものの、収益認識に関する包括的な会計基準がこれまで開発されていませんでした。

ASBJ(企業会計基準委員会)は、平成27年3月に我が国における収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討に着手することを決定した後、「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」を公表、平成29年7月20日に公開草案を公表した後、当該公開草案に対して寄せられた意見等について検討を重ね、今般、平成30年3月30日に本会計基準等を公表したのです。

収益認識基準の開発に当たって、財務諸表間の比較可能性の観点から、IFRS(国際財務報告基準)第15号の基本的な原則を取り入れることを出発点としています。また、これまで我が国で行われてきた実務等に配慮すべき事項がある場合には、比較可能性を損なわせない範囲で代替的な取扱いを追加する方針です。この方針によって、“出荷基準”はOKになるのです。

収益認識会計基準の基本となる原則は、約束した財又はサービスの顧客への移転を、当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように収益の認識を行います。

基本となる原則に従って収益を認識するために、次の5つのステップを適用します。

  ステップ1 契約の識別

  ステップ2 履行義務の識別

  ステップ3 取引価格の算定

  ステップ4 履行義務に取引価格を配分

  ステップ5 履行義務充足により収益を認識

本会計基準等は、平成33年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用します。ただし、平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができます。

なお、早期適用については、追加的に、平成30年12月31日に終了する連結会計年度及び事業年度から平成31年3月30日に終了する連結会計年度及び事業年度までにおける年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができます。

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株式等譲渡所得 (1)

令和元年分の上場株式の取引で損失が発生した。これ以外に給与所得と上場株式等の配当所得があるので、上場株式等の配当所得について総合課税を選択の上、上場株式等に係る譲渡損失の金額と損益通算して申告した。
問題はあるか?

上場株式等に係る譲渡損失の金額がある場合には、上場株式等に係る配当所得の金額と損益通算することができますが、この損益通算の対象となる上場株式等に係る配当は、申告分離課税を選択したものに限られます(租税特別措置法8の4①、37の12の2①)。

なお、平成27年1月1日以後の譲渡から、この損益通算の対象に、特定公社債等の利子所得(特定公社債等の利子、公募公社債投資信託の収益の分配等)が追加されています。

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Posted by matsui