公益法人会計基準が見直されると定期提出書類も変わる
2024年5月に『令和5年度 公益法人の会計に関する諸課題の検討状況について』が公表されました。財務諸表読者の「わかりやすさ」に重点を置いて、公益法人会計基準の見直しを検討しています。
その内容を簡単明瞭にまとめました。スゥーと頭に入るはずです。
公益法人会計基準の見直しの必要性及び意義
今般の制度改革に伴い、公益法人会計基準(平成20年4月11日 内閣府公益認定等委員会。以下「平成20年会計基準」という。)を見直すことについては、以下のような必要性及び意義があります。
財務規律の柔軟化・明確化に伴う情報開示への対応
公益認定法の改正法(以下「改正法」という。)では、公益法人が自らの経営判断で資金を最大限効果的に活用できるよう、財務規律(収支相償原則及び遊休財産規制)が柔軟化・明確化さます。これに伴い、公益法人は従来以上に、資金の管理や活用などの公益法人の財務状況について、利害関係者や国民に対する説明責任を果たさなければなりません。
このため、財務諸表における情報開示を充実していく必要があるのです。
財務規律の柔軟化・明確化に関しては、こちらを参照してください。
区分経理の実施を原則化
公益法人の財務情報の透明性を向上させる観点から、「改正法」では、区分経理の実施が原則化されます。それによって、公益目的事業、収益事業等及び法人運営の区分別に、公益法人の活動状況や財政状態が明らかなります。
特に、これまで一部の公益法人に限られてきた貸借対照表の会計区分別情報の開示が原則となることで、各公益法人における公益目的事業財産(公益目的事業のために使用・処分することが義務付けられている財産)の状況が可視化されるほか、この情報によって公益目的取得財産残額(以下「財産残額」という。)を把握する方式に改められます。
つまり、不評だった定期提出書類における別表Hの作成が不要となります。
定期提出書類の簡素化
区分経理が原則化され、財務諸表における情報開示が充実することに伴い、公益法人の行政庁に対する定期提出書類を、上記の別表H以外も簡素化することが妥当です。
このため、会計基準の見直しと定期提出書類の見直しが一体的に検討される予定です。
財務諸表全体をわかりやすい形に
「平成16年会計基準」に、平成18年の公益法人制度改革関連三法による現行の公益法人制度に対応させる形で「平成20年会計基準」が策定され、現在の公益法人の会計実務における規範となっています。
しかしながら「平成20年会計基準」には、公益法人特有の会計処理の考え方が含まれているため、一般の利害関係者にはわかりにくい状況です。
公益法人会計基準を見直す際には、単に新制度への対応を図るだけにとどまらず、従来の公益法人会計特有の考え方について整理し、わかりやすい財務諸表になるように全体が見直されます。
公益法人会計基準の見直しの基本的な考え方
公益法人会計基準の見直しの必要性及び意義を踏まえて、以下のような基本的な考え方のもとに見直しが実施されます。
本表は簡素に、詳細情報は注記等で
今般の制度改革に伴い、公益法人の財務諸表における情報開示の拡充が求められる一方で、多様な利害関係者にとって財務情報の開示がわかりやすい形に改められます。
「貸借対照表、活動計算書等の財務諸表本表はできるだけ簡素でわかりやすいものとし、詳細情報(法令の要請に基づき開示すべき事項等)は注記及び附属明細書で開示する」ということが、基本的は考え方です。
公益法人会計特有の考え方の整理
以下のような事項について、本表において表示するものと注記等において開示するものを区別して、整理を行います。
- 指定正味財産と一般正味財産の区分(これを拡張した「使途拘束」の有無による区分の導入についての検討を含む)
- 貸借対照表における資産の区分(基本財産、特定資産の表示)
- 正味財産増減計算書の名称・記載事項(「活動計算書」への変更)
- 活動計算書における表示方法(財源区分別の表示、指定正味財産から一般正味財産への振替処理の取扱い、費用科目の分類など)
- 貸借対照表内訳表及び正味財産増減計算書内訳表の位置付け、表示方法
- 財産目録に記載すべき情報
- 公益認定法に基づく財務規律への適合性を判断するための情報の開示
- 公益法人の取引等における透明性の確保に関する情報の開示
制度改革の整合性確保
新会計基準は、新たな公益法人制度と整合性が取れていなければなりません。
改正法成立後に、内閣府公益法人行政担当室において、政令・内閣府令の改正や、公益認定等ガイドラインの見直しの検討を進めていくに当たり、会計の観点から考慮すべき事項については、「公益法人の会計に関する研究会」が意見を述べることになります。
定期提出書類の見直し
財務諸表における情報開示が充実することに伴い、現行の定期提出書類における各種別表については、できる限り廃止・簡素化が行われます。
各種別表に代わる注記や附属明細書における財務規律適合性に関する情報と、各種別表の内容とが重複することがないような整理がなされます。
公益目的取得財産残額の新たな把握方法
今般の制度改革により、区分経理の実施が原則化され、貸借対照表の会計区分別内訳が作成されることから、別表Hを廃止し、認定取消し等の時点で直近の決算における公益目的事業会計の貸借対照表における純資産の額を基礎として算定する方式に改められます。
この見直しを念頭に、「改正法」では、公益目的事業財産及び「財産残額」の定義が改められます。
「改正法」の成立後、公益目的事業財産及び「財産残額」に関する内閣府令等が発出される際には、会計上の観点からは、以下の点に留意しておいてください。
公益目的事業財産の定義(改正後の公益認定法第18条第7号・第8号関係)
公益目的事業会計の貸借対照表における純資産額を基礎として財産残額を把握するためには、公益目的事業財産と公益目的取得財産残額は等しいものとして再定義されます。
公益目的事業会計における負債の取扱い(改正後の公益認定法第30条第2項第3号、第3項関係)
「財産残額」を公益目的事業会計に係る貸借対照表の純資産額を基礎として算定することとする場合、同会計の負債額は基本的には控除されることとなります。
従来の「財産残額」とは内容が異なるため、再定義が必要です。
経過措置
新制度施行後、区分経理の原則化についての経過措置により、公益目的事業会計に係る貸借対照表の純資産の額の算定や貸借対照表の会計区分別内訳(現行会計基準における貸借対照表内訳表を含む)の作成が猶予される間は、従前の別表Hにより財産残額を算定する方法を続ける経過措置が講じられます。
消費税 (1)
卸売業を営んでいる者が事業に使用していた固定資産を譲渡した場合、この事業用固定資産の譲渡も、第一種事業に該当するのか?
事業者が自己において使用していた固定資産の譲渡を行う事業は、第四種事業に該当します(消費税基本通達13-2-9)。
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