資産管理の観点から見た中小企業における不正の3つのケース
中小企業においてはマンパワーが限られることから、十分な内部統制を構築するには限界があります。しかしながら、そのような不十分な状況を放置してよいわけはありません。
不正の定義を資産の不正流用をいう意味に限定してし、なぜ不正が起こるのか、不正を起こさないためにはどうすればよいのか、を考えます。
まずは、資産管理の観点から見て行きます。
経理担当者による横領
事例の概要
ある営業所において、出納業務と経理業務の双方を担当していた経理担当者が、無断で預金を解約し横領した。
営業所長は営業に関心が高く、経理業務は経理担当者に任せきりだった。
経理担当者が出納業務と経理業務の双方を兼務していたことが、一番の原因です。おカネを扱う人と帳簿をつける人を分けることは、職務分掌(担当業務を明確に分けること)の中でも最も重要なことです。
不正防止のポイント職務分掌をしっかりと行う必要があります。人手がなくてどうしても職務を分けることができない場合には、営業所長が管理者として係わることです。例えば、銀行印は営業所長が管理するとか、大口の入出金には営業所承認の求めるということです。
また、会計伝票のチェックも営業所長が行うようにします。
在庫の横流し
事例の概要
商品の出荷に際し、営業担当者からの電話一本でモノを動かすことが可能な状態にあった。物流課は正式な出荷指示に基づかない出荷を行い、商品は得意先でない場所へ運ばれていた。
数年後、これらの商品は、ネットオークションに出品されていることが判明した。
「出荷指示に基づく商品の移動」を守っていたら、このような事態は生じません。また、売上計上のない商品移動ですから、期末において商品の実地棚卸を確実に実施していたら状況が早く把握できたはずです。
営業担当者と物流課の共謀も考えられます。
不正防止のポイント出荷と売上計上が同時に処理されるシステム化が望まれます。このようなシステム化が困難な場合でも、単なる商品移動は原則として認めない(事前に顛末を明確にした場合のみ認める)という措置を講じなければなりません。
また、実地棚卸を強化する必要があります。現物と帳簿の差である棚卸差額を目に見えるようにし、その発生原因をしっかり調査することです。
実地棚卸を担当部署だけで実施せずに、本社の管理部署が立ち会うことも有用です。
収入印紙等の無断換金
事例の概要
収入印紙や切手は、購入時に費用として計上した後、総務部のロッカーに保管して入用のつど取り出していた。減り方が激しいと感じていた総務課員は、昼休みに収入印紙を大量に持ち出す総務部長をたまたま目撃した。
調査の結果、総務部長は持ち出した収入印紙を金券ショップで換金していたことを認めた。
現物の管理ができていないことが主因です。管理とは、現物の横に管理簿をおいて、受け払いの都度、日付、数量、記入者等を明確に記録することです。
不正防止のポイント現物管理を行った上で、期末に実地棚卸を行います。実地棚卸のタイミングは、月末でも週末でも、必要に応じて決めればよいのです。しかしこれで良しとせず、現物と帳簿の差である棚卸差額の発生原因を調査することも忘れないでください。
また、会社の状況にもよりますが、費用計上という会計処理を改め貯蔵品という資産として計上すると、資産管理の意識が高まります。
なお、収入印紙等はまとめて大量に購入しないで、ある程度分けて購入することが望ましいと思います。数か月間で使用する量が目安になるでしょうか。
ちなみに、以下のものも同様に資産管理が必要です。
- タクシーチケット
- 各種優待券
- 各種プリペイドカード
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