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基本を学ぼう!社会福祉連携推進法人

06/14/2021社会福祉法人会計

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人口動態の変化や福祉ニーズの複雑化・複合化の中で、社会福祉法人は、運営基盤の強化を図るとともに、さまざまな福祉ニーズに対応することが求められています。

社会福祉連携推進法人は、地域共生社会の実現に向け、地域ニーズに対応した新たな取組の創出、その担い手となる福祉・介護人材の確保・育成等を進めていく観点から、地域の福祉サービス事業者間の連携・協働のためのツールとして有効に活用されることが期待されます。

「社会福祉連携推進法人の運営の在り方等に関する検討会」が提言した内容をわかりやすく解説します。

目次
  • 1. 社会福祉連携推進法人の概念
    • 1.1. 社会福祉連携推進法人の運営上のポイント
    • 1.2. 社会福祉連携推進法人設立の意義
    • 1.3. 地域医療推進法人との違い
  • 2. 社会福祉連携推進法人の業務
    • 2.1. 地域福祉支援業務
    • 2.2. 災害時支援業務
    • 2.3. 経営支援業務
    • 2.4. 貸付業務
    • 2.5. 人材確保等業務
    • 2.6. 物資等供給業務
  • 3. 社会福祉連携推進法人のガバナンス
    • 3.1. 社会福祉連携推進法人における社員の議決権
    • 3.2. 社会福祉連携推進評議会

社会福祉連携推進法人の概念

社会福祉連携推進法人は、①社員の社会福祉に係る業務の連携を推進し、②地域における良質かつ適切な福祉サービスを提供するとともに、③社会福祉法人の経営基盤の強化に資することを目的として、福祉サービス事業者間の連携方策の新たな選択肢として創設される法人です。

2以上の社会福祉法人等の法人が社員として参画し、その創意工夫による多様な取組を通じて、地域福祉の充実、災害対応力の強化、福祉サービス事業に係る経営の効率化、人材の確保・育成等を推進します。

社会福祉連携推進法人の運営上のポイント

ポイント

○ 社会福祉連携推進区域(業務の実施地域。実施地域の範囲に制約なし。)を定め、社会福祉連携推進方針(区域内の連携推進のための方針)を決定・公表

○ 社会福祉連携推進業務の実施(6業務の中から全部又は一部を選択して実施)

○ 上記以外の業務の実施は、社会福祉連携推進業務の実施に支障のない範囲で実施可(社会福祉事業や同様の事業は実施不可)

○ 社員からの会費、業務委託費等による業務運営(業務を遂行するための寄附の受付も可)

○ 社員である法人の業務に支障が無い範囲で、職員の兼務や設備の兼用可(業務を遂行するための財産の保有も可)

社会福祉連携推進法人設立の意義

社会福祉連携推進法人の設立は、既存の連携方策等と比較すると、以下の特徴があると考えられます。

〇 自主的な連携との比較
個々の法人の自主性を確保しつつ、法的ルールに則った一段深い連携が可能であること

〇 社会福祉協議会との比較
業務の実施区域が限定されていないことから、広範囲での連携が可能であり、また、連携する合意の取れた法人同士で設立ができること

〇 連携のための法人形態を社会福祉法人とすることとの比較
社会福祉事業を実施する必要がなく、法人同士の連携業務のために設立ができること

よって、社会福祉連携推進法人のメリットは、同じ目的意識を持つ法人が個々の自主性を保ちながら連携し、規模の大きさを活かした法人運営が可能となることにあります。

地域医療推進法人との違い

社会福祉法人は資産の法人外流出が禁止されていることから、出資は行うことができないこととされていることを踏まえ、社会福祉連携推進法人についても、出資を行うことはできません。
よって、地域医療連携推進法人のように、出資して子会社を持つことはできません。

社会福祉連携推進法人の業務

社会福祉連携推進法人が社会福祉連携推進業務として実施するこができるのは、以下の6つです。
地域福祉支援業務、災害時支援業務、経営支援業務、貸付業務、人材確保等業務、物資等供給業務。

地域福祉支援業務

「地域福祉の推進に係る取組を社員が共同して行うための支援」は、
・ 地域住民の生活課題を把握するためのニーズ調査の実施
・ ニーズ調査の結果を踏まえた新たな取組の企画立案、支援ノウハウの提供
・ 取組の実施状況の把握・分析
・ 地域住民に対する取組の周知・広報
・ 社員が地域の他の機関と協働を図るための調整
等の業務が該当します。

社会福祉連携推進法人の業務は法律上「支援」となっていることから、原則として、社会福祉連携推進法人自体が主体となって、地域住民等に対し、社会福祉事業その他社会福祉関係の福祉サービスを提供することはできません。

災害時支援業務

「災害が発生した場合における社員が提供する福祉サービスの利用者の安全を社員が共同して確保するための支援」は、
・ ニーズの事前把握
・ BCPの策定や避難訓練の実施
・ 被災施設に対する被害状況調査の実施
・ 被災施設に対する応急的な物資の備蓄・提供
・ 被災施設の利用者の他施設への移送の調整
・ 被災施設で不足する人材の応援派遣の調整
・ 地方自治体との連絡・調整
等の業務が該当します。

感染症等の危機的状況については、「災害」に含まれると解して、災害時支援業務に該当します。

当該業務の実施に当たって、社会福祉連携推進法人と社員は、常に社会福祉連携推進法人の活動区域内の地方公共団体(認定所轄庁以外の地方公共団体も含む。)と連携し、これらの対策と調和が保たれるよう、努めなければなりません。

経営支援業務

「社員が経営する社会福祉事業の経営方法に関する知識の共有を図るための支援」は、
・ 社員に対する経営ノウハウ等に関するコンサルティングの実施
・ 賃金テーブルの作成等人事・給与システムに関するコンサルティングの実施
・ 社員の財務状況の分析・助言
・ 社会福祉法人会計に関する研修の実施等適正な財務会計の構築に向けた支援
・ 社員の特定事務に関する事務処理の代行
等の業務が該当します。

社会福祉連携推進法人が事務処理を代行することは、特定の経営方法を社員間で共有するために、社会福祉連携推進法人が社員へ支援を行うことに該当します。

したがって、社会福祉連携推進法人は、社員の事務処理を経営支援業務として行うことができます。

貸付業務

社会福祉連携推進法人が行う貸付けの基本スキームは、以下のとおりです。

  1. 貸付けの内容に係る当事者間での検討
  2. 各社員の内部機関における意思決定
  3. 社会福祉連携推進方針の認定所轄庁への認定申請
  4. 認定所轄庁による認定
  5. 貸付原資提供社員・社会福祉連携推進法人間で貸付契約を締結
  6. 社会福祉連携推進法人・貸付対象社員間で貸付契約を締結
  7. 貸付けの実行
  8. 貸付金の使用状況の報告

社員間での貸し付けを、社会福祉連携推進法人を介して行うとイメージしてください。
資金の出し手を貸付原資提供社員、受け手を貸付対象社員と呼びます。

貸付金の使途として、施設・事務所に供する建物の修繕・改修や従業員の採用、処遇改善に係る費用を想定されています。

人材確保等業務

「社員が経営する社会福祉事業の従事者の確保のための支援及びその資質の向上を図るための研修」は、
・ 社員合同での採用募集
・ 出向等社員間の人事交流の調整
・ 賃金テーブルや初任給等の社員間の共通化に向けた調整
・ 社員の施設における職場体験、現場実習等の調整
・ 社員合同での研修の実施
・ 社員の施設における外国人材の受け入れ支援
等の業務が該当します。

社会福祉法第134条第2項に基づき、社会福祉連携推進法人が委託募集をするときは、あらかじめ厚生労働省令で定められた事項を厚生労働大臣(都道府県労働局長)に届け出なければならないこととなっています。

また、社会福祉連携推進法人が職業紹介や労働者派遣を行う場合は、別途各法令の要件を満たしたうえで、適正な手続により許可を取る必要があります。

物資等供給業務

「社員が経営する社会福祉事業に必要な設備又は物資の供給」は、
・ 紙おむつやマスク、消毒液等の衛生用品の一括調達
・ 介護ベッドや車いす、リフト等の介護機器の一括調達
・ 介護記録の電子化等ICTを活用したシステムの一括調達
・ 社員の施設で提供される給食の供給
等の業務が該当します。

社会福祉法第125条第6号にいう「当該設備又は物資を社会福祉連携推進法人が供給すること」とは、社会福祉連携推進法人が一括調達して社員に供給することのほか、社会福祉連携推進法人が生産して社員に供給することも含みます。

したがって、社員の施設で提供される給食の供給については、食品衛生法等関係法令を遵守したうえで、社員から社会福祉連携推進法人が委託を受けて、物資等供給業務の一環として行うことが可能です。

社会福祉連携推進法人のガバナンス

社員総会、理事会、代表理事及び監事がガバナンスの機関として整備されていることは、社会福祉法人と同様です。
それとは別に、社会福祉連携推進評議会という機関も準備されていることに、注意してください。

社会福祉連携推進法人における社員の議決権

社会福祉連携推進法人の社員の議決権については、社員間の公平性を保ち、適切な運営を担保するため、原則として、1社員当たりの議決権は一つとされています。

ただし、社会福祉連携推進法人の適切かつ効果的な運営を推進する観点から、以下の要件を全て満たし、社員間の合意に基づく場合は、定款の定めるところにより、原則とは異なる取扱いをすることもできます。

例外が認められるための要件

〇社会福祉連携推進目的に照らし、不当に差別的な取扱いをしないこと
 
〇 社員が社会福祉連携推進法人に対して提供した金銭その他の財産の価額に応じて異なる取扱いをしないこと
 
〇1の社員に対し、総数の半数を超える議決権を配分しないこと
 

「不当に差別的な取扱い」に該当するものとしては、例えば、
・ 特定の法人格であることを理由に議決権の配分を減らす
・ 貸付業務の貸付けを受けることを理由に議決権の配分を減らす
など、社会福祉連携推進業務にあたって社員間に生じる立場の違いを理由に議決権の配分を減らすことなどが考えられます。

上記「例外が認められるための要件」に該当しない場合であって、社員の社会福祉事業の事業規模に応じて議決権を配分することは、これだけをもって不当に差別的な取扱いとは言えないとされています。

また、社員の過半数は社会福祉法人でなければならないので、議決権行使の場面でもこれを担保するため、社員である社会福祉法人の議決権が総社員の議決権の過半数を占めていなければなりません。

社会福祉連携推進評議会

社会福祉連携推進評議会は、社会福祉連携推進法人の業務運営に地域のニーズを的確に反映させるとともに、中立公正な立場から当該法人が行った事業について、社会福祉連携推進方針に照らして評価を行うことなどを目的として設置される機関です。

社会福祉連携推進評議会の位置づけ

代表理事の意見具申機関として、代表理事が招集します。

構成員の要件

社会福祉連携推進区域の福祉の状況の声を反映できる者を必ず加えなければなりません。

当該社会福祉連携推進法人が行う業務の内容に応じ、例えば、以下のような団体から推薦を受ける者又は個人等から構成されます。 ・福祉サービスの利用者団体から推薦を受ける者
・福祉サービスの経営者団体から推薦を受ける者
・学識有識者
・介護福祉士・社会福祉士等の職能団体から推薦を受ける者
・社会福祉協議会から推薦を受ける者
・共同募金会から推薦を受ける者
・ボランティア団体から推薦を受ける者
・自治会から推薦を受ける者
・民生委員・児童委員
・福祉・介護人材の養成機関から推薦を受ける者
・就労支援機関から推薦を受ける者
・商工会議所から推薦を受ける者
・地方自治体から推薦を受ける者
・その他地域福祉に関して中立公正な立場から意見を述べられる団体から推薦を受ける者

構成員の員数

員数は少なくとも3人以上とし、社会福祉連携推進法人が定款で定めます。

構成員の選任・解任

構成員の人選を理事会で決議し、社員総会の承認を受けます。
社会福祉連携推進認定の際に、所轄庁において構成員の選任を確認します。

構成員の任期

4年(4年後の定時社員総会の終結のときまで)とし、任期の更新は妨げません。
自動更新はできません。
定款で4年を短縮することは、可能です。

社会福祉連携推進評議会の役割

社会福祉連携推進評議会は、具体的には、次の3つの役割を担います。

  1. 社会福祉連携推進法人の事業計画へ地域ニーズを反映するための意見具申(3月)
  2. 社会福祉連携推進法人の事業報告に関する評価(3月)
  3. 社会福祉連携推進評議会の構成員の定数を変更する場合の意見具申(適宜)

上記のほか、新規事業の立ち上げ、既存事業の廃止等、社会福祉連携推進法人の事業運営に関して重大な変更を行う場合、必要に応じ理事会の求めに応じて議論を行うことができるとされています。

社員総会への報告

意見具申の内容及び理事会が社会福祉連携推進評議会に諮問を行った際の議事は、社員総会に報告します。

開催頻度

社会福祉連携推進評議会の役割の①及び②の議論を行うため、少なくとも年1回以上の開催が求められます。

社会福祉法人会計

Posted by matsui


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