国民目線での現行税制の改善点 2021年

会計 税務

近畿税理士会は、『令和4年度税制改正に関する意見書』という提言をまとめました。
その中から、皆さまの関心が高いと思われる項目を抜粋して、コメントを加えます。
前年度の意見書からは、配偶者控除・扶養控除、給与所得控除、雑損控除、消費税を限定的に取り上げました。

日々の暮らしがキツクなってくると、今まで考えてもみなかったことに気づくことがあります。税も、その一つかもしれません。
普段から税金に関心を持つきっかけになれば幸いです。

所得税 少子高齢問題に対応するための税額控除の創設

我が国の重要課題である少子高齢問題を解決するための税制における政策的支援として、以下の税額控除の創設を提案します。

ひとり親家庭や共働き家庭の子育て費用に対する税額控除

少子化の原因はさまざまに考えられますが、収入面での不安が最大の要因ではないかと思われます。

子供を産み育てるということは大きな負担を伴います(育児によって得られる幸福感はここでは置いておいて)。
そのような負担を軽減し、仕事と育児の両立を推進する観点から、子育てに係る費用についての税額控除を創設すべきです。

介護を要する高齢者を経済的に支援する家庭の介護費用に対する税額控除

介護問題は年々、深刻化しています。
老老介護(高齢者が高齢者を介護)、介護離職(介護するために退職)、ダブルケア(子育てと親の介護の同時進行)という社会現象が実際に起こっています。
現代では、高齢の親と同居していなくて自分の家庭を持っているケースが多いですから、介護が始まると大きな負担を抱えることになります。

また、介護を要する期間が長くなると支える側の経済的疲弊も覚悟しなければなりません。
子ども世帯の親の介護に係る経済的負担の緩和を図る観点から、介護費用に対する税額控除を創設してもらいたいのです。

法人税 中小法人等の欠損金の繰越控除制度の維持

中小法人等の欠損金の繰越控除制度については、引き続き現行制度を維持すべきです。
法人税率の引き下げに伴う課税ベースの拡大策として、平成27年度税制改正により中小法人等以外の法人について、欠損金の控除限度額が段階的に引き下げられることとなり、平成30年度以降は繰越控除前所得金額の50%となりました。

事業年度に区切って法人税の所得金額を計算するのは、徴税の便宜を図るためです。
法人の担税力は単年度の所得金額のみで判断するのではなく、長期的な経営成績及び財政状態を正確に捉えたうえで判断する必要があります。
特に経営基盤が脆弱である中小法人等は、なおさらです。

したがって、中小法人等については控除限度額を設けることなく、現行の欠損金の繰越控除制度を維持すべきです。

相続税 遺留分侵害額請求に関する課税関係の見直し

遺留分侵害を請求された者が金銭以外の相続財産で弁済した場合には、譲渡所得として課税することに変更されています。
これを元に戻すべきではないでしょうか。

遺留分侵害請求の制度は、相続人が自己の相続財産に係る最低限の権利である遺留分を主張できる制度です。
令和元年の民法改正におけるこの制度の導入により、遺留分の権利が金銭債権へ変わったため、金銭に代えて相続財産で代物弁済を行った場合に譲渡所得として課税が行われることとなりました。

しかし、遺留分侵害額請求による相続財産の移転は、受遺者が遺贈を放棄して、遺留分権利者がその財産を遺産分割により取得したに等しいのです。
したがって、従来のように当該相続財産を遺留分権利者が相続したと考え、相続税だけで課税関係が終わるようにすべきです。

消費税 事業者免税点制度の見直し

適格請求書等保存方式の導入により免税事業者の取引排除等の懸念があることから、すべての事業者を課税事業者とし、事業者免税店制度を以下のように取り扱うことが望ましいと考えます。

  1. 基準期間における課税売上高による納税義務の判定を廃止すること。
  2. 小規模な事業者への手当として、課税期間における課税売上高が500万円以下の事業者については、申告不要とする制度を創設すること。

令和5年10月から適格請求書等保存方式が導入されることにより、小規模な免税事業者が取引から排除されたり、実質的な値引きを強要されることが懸念されます。

一方で、小規模事業者の納税事務負担あるいは税務執行面への配慮から、消費税法には一定の基準以下の小規模事業者の納税義務を免除する規定が設けられていますが、この規定では、課税期間と基準期間が異なることから、小規模事業者とはいえない事業者にも適用されてしまうという問題があります。

そこで原則として、基準期間における課税売上高による納税義務の判定を廃止し、すべての事業者を課税事業者としたうえで、小規模な事業者については経理事務能力が乏しい場合もあることから、事業者の課税売上高が一定額以下、例えば、課税売上高が500万円以下の場合には、申告を不要とする制度を創設するのです。
この見直しは、近時の過度な節税対策を防止するため複雑化してきた法令体系の簡素化にも資するものです。

地方税 固定資産税の課税明細書の記載事項の整備

固定資産税の課税明細書について、以下のようにすべきです。

  1. 記載事項を統一すること。
  2. 税額の計算過程を明示すること。
  3. 共有者ごとの持ち分を記載すること。

近年、課税団体(地方自治体)における計算不備や評価誤り等により課税誤りが指摘され、固定資産税の課税に対する納税者の関心が高まっています。
賦課課税方式である固定資産税においては、納税者にとって、課税明細書が課税状況を確認する希少な資料であるにもかかわらず、現状の記載事項では、固定資産税評価額と算出される税額との関係性が明確に示されないこと等により、納税者の信頼を得られていません。

したがって、固定資産税の課税明細書について、以下のように改めればよいのです。

① 地方税法で定められている記載事項以外の事項を記載している市町村もありますが、その内容は各々で異なるため、記載事項を統一すること。

② 負担調整措置による課税標準額の計算過程を納税者が検証できるように、税額の計算過程を明示すること。

③ 共有者がいる場合には、共有者間の利便性向上に資するため、各人の氏名及び持分を記載すること。

ランダムな税金豆知識(目を通してみよう)

消費税 (1)

賃貸マンション売却の際に、買主との合意に基づき固定資産税の未経過分を別途買主から受領した。
これは課税標準に含めるべきか?

未経過分に相当する金額を、当該資産の譲渡について収受する金額とは別に収受している場合であっても、当該未経過分に相当する金額は当該資産の譲渡の金額に含まれることになります。
したがって、固定資産税の未経過分を含めた譲渡金額のうち、建物部分が課税の対象になります(消費税基本通達10-1-6)。

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Posted by matsui