6号財産との関連性から見た公益法人の特定資産の本質とは
特定資産とは、特定の目的のために使途、保有又は運用方法等に制約が存在する資産をいいます。特定資産には、預金や有価証券等の金融資産のみならず、土地や建物等も含まれます。
会計的には上記の説明で十分なのですが、収支相償や遊休財産規制という公益法人制度に影響を与え得る問題ですので注意が必要です。
特定資産の源泉
特定資産はその名前から明らかなように貸借対照表上、資産として計上されます。
「源泉」とは、資金調達の方法を意味し、次の3類型が考えられます。
一般正味財産
特定費用準備資金を思い起こしてください。
法人が自らの判断で、公益事業に関連して特定の目的のために自己資金を使うわけです。
この場合には、何のために、何を、いつ、いくら、が法人内でオーソライズされていなければなりません。
例えば、創立50周年を記念して特別な事業を考えているならば、創立50周年記念で(何のために)、記念式典の開催や記念品の配布を(何を)、5年後に(いつ)、1,000万円(いくら)をかけることが明確になって初めて「創立50周年記念事業積立資産」という特定資産を計上することになります。
将来5年間にわたって、毎年度200万円ずつ積み立てていきます。
流動資産の預金とは別にしておきたいという理由だけで、目的、内容、時期、金額等があいまいな状態で特定資産にすることはできません。
指定正味財産
寄付によって受け入れた預金や有価証券を想定してください。
「公益目的事業のために使ってほしい。」という指定が寄付者からあれば、正味財産増減計算書上、その寄付金は指定正味財産の部の収益に計上します。
その結果貸借対照表上では、特定資産(資産)と指定正味財産(正味財産)が同額増加します。
負債
退職給付積立資産を思い起こしてください。
負債に計上されている退職給付引当金を資金面で担保したい場合に、特定資産を計上します。
指定正味財産から一般正味財産への振替と特定資産
公益法人会計基準では、指定正味財産を財源とする資産について使途の指定が解除されるとき、正味財産増減計算書において指定正味財産増減の部から一般正味財産増減の部の収益へ振り替えて、一般正味財産増減の部の費用と対応させます。
指定正味財産から一般正味財産への振替の会計処理に関しては、こちらを参照してください。
指定正味財産から一般正味財産への振替は、法人運営が基本財産や特定資産の運用益で成り立っている場合に採られる処理方法です。
この方法を採用する場合に、注意すべきことがあります。
正味財産増減計算書上、指定正味財産増減の部において一般正味財産への振替を行った結果なお、当期指定正味財産増減額が正数になっていれば(指定正味財産増減の部で利益が出ていれば)、その額と同額を特定資産を増やす処理をしておくことです。
「処理をしておくこと」とは、貸借対照表の表示の問題です。
特定資産と6号財産との関係
定期提出書類において、別表C(2) 控除対象財産「6.交付者の定めた使途に充てるために保有している資金」を通称、6号財産と呼びます。
6号財産は、寄附その他これに類する行為によって受け入れた財産であって、当該財産を交付した者の定めた使途に充てるために保有している資金、と定義付けられます。
指定正味財産を源泉とする特定資産 = 6号財産
(果実も含む)
先日、立入検査に関して対象法人の財務諸表を見たときに、この点がモヤっとしました。
その法人は、流動資産の預金は持たずに預金はすべて特定資産に計上していました。
基本財産等の運用益は特定資産の○○積立資産という預金で受けて、事業費・管理費は同じく○○積立資産から払われるのです。
まさに指定正味財産を源泉とする特定資産です。
しかし、一般的には多くの法人が流動資産の預金を持っています。
基本財産等の運用益を流動資産の預金で受けることによって、そこに6号財産が混じってしまったらどうなるのか?
そんな場合でも、指定正味財産を源泉とする部分は6号財産として認めてくれるのか?
いえいえ、そんなことはあり得ません。
指定正味財産を源泉とする限り、特定資産の預金として扱うのです。
- 基本財産として計上されている有価証券(1号財産)の配当金で、事業を実施する。
- 受取配当金は、指定正味財産増減の部において収益計上する。
- 事業費・管理費に見合う額を、正味財産増減計算書において、指定正味財産から一般正味財産へ振替える。
- 配当金の額の方が多く資金が余った(指定正味財産増減の部で利益が出た)場合は、同額を特定資産として扱うため、6号財産に該当する。
流動資産の預金に6号財産が混じるということは、指定正味財産増減の部において収益計上していないと推定されるので、あり得ないのです。
行政と議論して、スッキリしたのでした。
ただし、果実としての特定資産がたまり続けることは公益事業を実施する上で好ましいことではないため、一定の制限が課されています。
6号財産の蓄積制限に関しては、こちらを参照してください。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません