社会福祉法人における継続事業の前提に関する注記
「継続事業の前提に関する注記」という注記項目は、「該当事項なし」と記載されることが多いのですが、もし該当がある場合には、何をどう記載すればよいのでしょうか。
この注記項目は、記載する必要がないに越したことはありません。しかし、いざとなって慌てないように、運営が安定しているときにちょっと考えてみてください。
財務諸表利用者には、極めて重要な注記なのです。
継続事業の前提に関する注記とは何を記載するのか
以下のような規定があります。
継続事業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する場合(事業毎に判断するのではなく、法人全体の存続に疑義が生じた場合に限る)であって、当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお、継続事業の前提に関する重要な不確実性が認められるときは、財務諸表に次の事項を注記する必要があります。
- 当該事象又は状況が存在する旨及びその内容
- 当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策
- 当該重要な不確実性が認められる旨及びその理由
- 当該重要な不確実性の影響を財務諸表に反映しているか否かの別
なお、継続事業の前提に重要な疑義を生じさせる事象又は状況が存在する場合とは、例えば債務超過等を指します。
重要な疑義を生じさせるような事象又は状況とは何なのか
事務連絡Q&Aでは債務超過が例として挙げられていましたが、「事象又は状況」のケースは、さまざまな場合が考えられます。
以下に例示列挙します。
財務指標 |
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財務活動 |
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事業活動 |
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注意してください。
これらの「事象又は状況」が存在する場合の全てに注記が必要なのではありません。当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応をしてもなお、継続事業の前提に関する重要な不確実性が認められるときに、注記が必要になります。
重要な疑義を生じさせるような事象又は状況を解消・改善するための対応
債務超過の例で説明します。
まずは、債務超過を解消するための改善計画(利益計画)を作成し、実行することです。債務超過に陥った翌期にすぐ、債務超過を解消できるとは限りません。数期間において経費削減や収益の回復を織り込んだ利益計画を作成することで、継続事業の前提に重要な疑義を生じさせる事象又は状況の解消を図ることを可視化するのです。
そのためには、何といっても「当期活動増減差額」のプラスが継続しなければなりません。
なお、この改善計画は、理事会の承認を受けておく必要があります。
継続事業の前提に関する重要な不確実性が認められるときとは
債務超過の例で説明します。
先に実行している改善計画(利益計画)の達成状況が問題になります。計画の実現可能性が低い場合、実績と計画との乖離が著しい場合には、重要な不確実性が認められることになります。
計画どおり推移していれば、不確実性が存在しているとはいいません。
立派な改善計画(利益計画)を作成するだけでは意味がありません。実現可能な計画でなければならないのです。
“絵に描いた餅”ではない達成可能な計画を慎重に作成してください。
継続事業の前提に関する注記の文例
サンプル
当法人の実施する社会福祉事業において、A拠点のグループホーム「まごころ」では利用者の減少が続き、サービス活動増減差額の大幅なマイナスが続きました。その結果、当事業年度末において法人全体で××百万円の債務超過となっております。 以上より、継続事業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。 |
【当該事象又は状況が存在する旨及びその内容】 |
当法人は、当該状況を解消すべく次の施策を実施しております。 (1)収益改善策の実施 利用者の増加、経費の削減について諸施策を実施している途中であります。特に「まごころ」については、職員数の2割程度の早期退職を募集し、早急に収益の改善を図っております。 (2)債務超過の解消に向けた対応 寄附金の受入も含めた当期活動増減差額の黒字化により、一刻も早い債務超過の解消に努めてまいります。
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【当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策】 |
しかしながら、これらの対応策は実施途上であり、現時点においては継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在するものと認識しております。
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【当該重要な不確実性が認められる旨及びその理由】 |
なお、財務諸表は継続事業を前提として作成しており、継続事業の前提に関する重要な不確実性の影響を財務諸表に反映しておりません。 |
【当該重要な不確実性の影響を財務諸表に反映しているか否かの別】 |
継続事業の前提に関する注記は、「継続事業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況を解消・改善するための対応をしてもなお重要な不確実性がある」状況において記載するものです。
ということは法人の経営が危機的状況にあるわけですから、財務諸表利用者に対し法人の財政状態・事業活動の状況を適切に理解してもらえるように、詳細な説明を心がけなければなりません。
具体的な記載文言については、顧問の公認会計士等によくご相談ください。
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