公益法人定期提出書類「別表H」なんて全然怖くない!
公益法人の経理に携わる方で、「別表Hの記載の仕方がよくわからない。」というお気持ちの方が大勢いらっしゃいます。そこで、完全理解を目的に図解による解説を試みました。
この図解を手元に置いて今回の解説をお読みになれば、完璧です。別表Hを克服できます。
図解は、こちらです。じっくりとご覧ください。
何のために別表Hを作るのか
公益法人は、事業計画、事業報告等に関する書類(定期提出書類)の作成・提出・開示が必要になります。そのうち、毎事業年度経過後3箇月以内に行政庁に提出する事業報告等に関する定期提出書類のひとつに「別表H 公益目的取得財産残額について」があります。
似かよった用語が多く出てくるため別表H上を作成しながら、結局何をしているのか、どうしたら作り上げることができるのか、考えれば考えるほどわからなくなってしまいます。
作成目的は、必ず押さえておいてください。
それは、公益認定を取り消されたときに、類似の事業を目的とする他の公益法人等に贈与すべき額(公益目的取得財産残額)を算定することにあります。
別表Hでは、「公益目的増減差額」という概念がよくわからないと思います。
わからなければ気にしなくても構いません。最終的に公益目的取得財産残額が算定できれば、O.K.なのです。
後にご覧になる図解の例では、第1期末における公益目的取得財産残額は、
イ+ロ-ハ=80と求めます。
イ 前事業年度の公益目的保有財産(100)
ロ 当事業年度における公益目的事業の収益(10)
ハ 当事業年度における公益目的事業の費用(30)
別表Hの様式にとらわれずに、このように考えればわかりやすいと思います。
同様に第2期末における公益目的取得財産残額は、ニ+ホ-ヘ=55と求めます。
ニ 前事業年度の公益目的保有財産(80)
ホ 当事業年度における公益目的事業の収益(40)
ヘ 当事業年度における公益目的事業の費用(65)
これがわかれば、もう心配は要りません。
結果がわかっているのですから、それに合うように別表Hを記載してあげればよいのです。
別表Hに出てくる似かよった用語
とはいえ、似かよった用語がたくさん出てくると混乱しますから、次のように整理してみます。
公益目的事業財産(A)
公益目的事業に関して得た寄付金、補助金、対価収入等の財産をいいます。
公益目的事業のために使用、処分しなければなりません。
公益目的保有財産(B)
公益目的事業財産(A)の一部であり、次の固定資産が該当します。
- 公益目的事業財産を支出することで得た財産
- 不可欠特定財産
- 法人自ら公益目的に使用すると定めた財産
貸借対照表等では、固定資産に区分表示されます。継続して公益目的事業のために使用さなければなりません。
公益目的増減差額(C)
当該事業年度における公益目的増減差額は、 ①+②-③で求めます。
① 前事業年度末日における公益目的増減差額
② 当該事業年度中に増加した公益目的事業財産
③ 当該事業年度中の公益目的事業費等
図解の例では、第1期末における公益目的増減差額は、100+10-150=△40と求めます。
同様に第2期末における公益目的増減差額は、△40+45-65=△60と求めます。
公益目的取得財産残額(D)
毎事業年度末における公益目的事業財産の未使用残高のことです。
公益目的取得財産残額(D)は、当該公益法人が所得したすべての公益目的事業財産(A)から公益目的事業のために費消・譲渡した財産を除くことを基本として算定します(認定法30条2項)。しかし、実際に公益認定の取消等が行われた時点で、当該法人の公益目的事業財産(A)の取得や費消・譲渡の状況を過去に遡って正確に算定することは、実務上非常に困難であると考えられます。
そこで、認定法施行規則で、その算定方法を定めています(認定法施行規則48条、49条、50条)。この中の、各事業年度の末日における公益目的取得財産残額(D)の算定計算を様式として定めたものが、別表Hです。
公益目的事業財産(A)から、公益目的事業の実施のために使った財産を差し引いた残りが公益目的取得財産残額(D)です。公益目的取得財産残額(D)は、資金として保有すると公益目的増減差額(C)であり、固定資産として保有すると公益目的保有財産(B)になります。
上記を踏まえた上で、改めて過去記事の図解をご覧になってください。
明確に理解することができるはずです。
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