公益法人会計において検討された4つのこと
内閣府公益認定等委員会 公益法人の会計に関する研究会が、平成29年6月に『平成28年度 公益法人の会計に関する諸課題の検討の整理について』という報告書を公表しました。
その内容として、定期提出書類の別表Hに関して簡易版の策定が検討されます。また、別表Aについて記載上の留意事項や基本的な記載例が示されました。さらに、特定費用準備資金の範囲を広げることを検討していましたが、白紙に戻りました。
公益目的取得財産残額の算定方法の検討
別表Hに関して、作成の仕方や財務諸表との関係がわかりづらい等の意見が、当初からありました。このため、法人の実務負担を軽減する観点から、簡便な方法で別表Hを作成できないか、見直しが行われました。簡易版別表Hの策定の検討を始めてほしいと提言しています。
その内容は、前年度の公益目的取得財産残額に当年度の公益目的事業会計の正味財産増減額を加え、調整項目を加味した上で、公益目的取得財産残額を算出することを考えています。
定期提出書類上の記載内容の明確化
収支相償に関する定期提出書類の別表Aにおいて、剰余金の発生原因や解消計画の記載を自由様式で求めていますが、どの程度記載すればよいのかわからないとの意見があります。これに対して、法人の事務負担軽減等の観点から、記載上の留意事項や基本的な記載例を示すことになりました。
公益法人会計基準等の一覧性の向上・整合性の確保
公益法人会計基準及び会計基準注解並びに公益法人会計基準の運用指針について、これらの関連性の明確化、体系化及び一覧性の向上を図って理解しやすくするために、これらの統合版が作成されました。
また、FAQのポイントや各質問内容と会計基準等との関係が理解しやすくなるよう、「FAQ早見表」が作成されました。
特定費用準備資金の運用の点検及び遊休財産額算定の際に控除される財産の明確化
以下に『平成28年度 公益法人の会計に関する諸課題の検討の整理について』を引用します。
将来の収支の変動に備えて法人が積み立てる資金(基金)を特定費用準備資金として保有することについては、将来の支出の確実性を担保する観点から、従前と同様に、過去の実績や事業環境の見通しを踏まえて、活動見込みや限度額の見積もりが可能であるなどの要件を充たす限りで、有効に活用されるべきである。
この際に、どのような条件等が整えば当該要件に合致するかについて統一的なメルクマールを設定することは困難であり、具体的な事例を提示して参考に資することが有効であると考えられる。加えて、このような特定費用準備資金を新たに定義し直し、その具体的要件を定めることについても、同様に困難である。」
この点に関して、コメントします。
前回の『平成28年度 公益法人の会計に関する諸課題の検討項目について』には、「特定費用準備資金を積み立てる際には、将来に予定された事業の実施や事業拡大に限らず、将来の収支変動に備えて資金を積み立てることができるよう、要件の明確化等(考え方の整理、具体的な適用事例の明記等)ができないか。」と記載されていました。私は、このように特定費用準備資金の範囲を広げる立場には、反対でした。
そのブログ記事もご覧ください。
今回の『平成28年度 公益法人の会計に関する諸課題の検討の整理について』では、前回の『平成28年度 公益法人の会計に関する諸課題の検討項目について』の考え方を改め、従前のように特定費用準備資金は、対象となる活動の内容及び時期が具体的に見込まれ、積立限度額が合理的に算定されること等を要件としています。
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