平成30年度税制改正大綱の注目3税制
平成30年度税制改正大綱では、働き方の多様化を踏まえて個人所得税の見直しが行われました。また、中小企業の事業承継を促進するために事業促進税制の拡充、一般社団法人を使用した相続税回避への対策が盛り込まれました。さらに、賃上げ・生産性向上のための税制上の措置及び中小企業の設備投資を促進するための税制上の措置が講じられています。
以下に注目点をピックアップしました。
税制改正大綱は政権与党が協議して作成するものなので、必ず政策に反映されます。
個人所得課税
給与所得控除・公的年金控除から基礎控除への振替等
給与所得控除及び公的年金等控除の控除額を一律10万円引き下げ、その代わり基礎控除額が一律10万円引き上げられます。給与所得者のみでなくフリーランス、起業家、在宅で働く育児ママ等の存在を意識したものです。
また、給与所得控除額の上限となる給与収入を850万円に引き下げ、その際の控除額が195万円に引き下げられます。ただし、子育てや介護に配慮する観点から、23歳未満の扶養親族や特別障害者である扶養親族を有する者等に負担が生じないような措置が講じられます。
公的年金等控除は、公的年金等収入1,000万円を超える場合の控除額に195.5万円という上限を設けられます。なお、公的年金等以外の所得金額が1,000万円超の場合は、公的年金等控除額がさらに引き下げられます。
基礎控除については、所得金額2,400万円超で控除額の逓減が開始し、2,500万円超で消失する仕組みに改められます。
なお、基礎控除の引き上げ及び給与所得控除の引き下げに伴い、基礎控除及び給与所得控除の金額を踏まえて設定されている税制上の金額基準について必要な調整が行われます。
上記の改正は、いずれも平成32年1月から施行されます。
影響を受ける対象者が多いことから、早めに周知されているのです。
NISA(個人投資家のための税制優遇制度)の見直し
NISAの口座数は相当数ありますが、一度も取引をしていないものも多く存在するようです。その理由の一つに、投資家がNISA開設を申し込んだ日には買い付けができないことが挙げられることから、これを可能とする見直しが行われました。
具体的には、非課税口座を開設しようとする居住者は、金融商品取引業者の営業所長に対し、非課税適用確認書の添付を要しない「非課税口座開設届出書」の提出をすればよいことになります。
また、非課税期間が終了したNISA口座内で保管する金融商品について、同金融機関に特定口座が開設されていれば、特段の手続を経ずにその特定口座に移管することができるようになりました。
平成33年1月1日以後。
土地・住宅税制
次の特例は平成29年度末で期限が到来しましたが、延長されます。
- 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算等の適用期限の延長
- 特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算等の適用期限の延長
- 特定の居住用財産の買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用期限の延長
なお、特定の居住用財産の買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例は、買替資産の範囲に一定の非耐火既存住宅が追加されました。
平成30年1月1日以後に譲渡資産の譲渡をし、同年4月1日以後に買替資産を取得する場合に適用。
平成31年12月31日まで。
支払調書等の提出義務制度
電子情報処理組織(e-Tax)又は光ディスクによる提出が可能な範囲が拡大されます。その判定基準が、対象となる年の前々年の支払調書の枚数が100枚以上(現行:1,000枚以上)に引き下げられることによるものです。
該当する会社は事務作業の省力化が図れるため、朗報です。
平成33年1月1日以後の提出分から。
資産課税
事業承継税制の特例の創設
事業承継の円滑な完了を目指して、事業承継税制の特例として次の措置が創設されます。
- 猶予対象の株式の制限(総株式数の2/3)の撤廃
- 納税猶予割合の引き上げ(80%から100%へ)
- 雇用確保要件の弾力化
- 複数(最大3名)の後継者に対する贈与・相続に対象を拡大
- 経営環境の変化に対応した減免制度
- 相続時精算課税の適用範囲の拡大
平成30年1月1日から平成39年12月31日までの間に贈与等により取得する財産に係る贈与税又は相続税について適用。
一般社団法人等に関する相続税・贈与税の課税の見直し
一般社団法人には持分が存在しないため、一族で実質的に支配している一般社団法人に財産を移転した後に役員が亡くなると、相続税を課されることなく実質的に財産をその親族に代々承継させることができる余地がありました。
そのため、平成30年度改正により、同族関係者が理事の過半を占めている一般社団法人(非営利型法人等を除く。)について、その同族理事の一人が死亡した場合、当該法人の財産を対象に当該法人に相続税が課税されることになりました。
課税対象額は、一般社団法人の純資産額を死亡時の同族役員の数(被相続人を含む。)で除して計算した金額です。
平成30年4月1日以後に贈与又は遺贈により取得する財産に係る贈与税又は相続税について適用。
小規模宅地等に係る相続税の課税価格計算の特例の見直し
小規模宅地等の減額特例は、被相続人等の居住又は事業の用に供されていた宅地について、相続税の課税価格を減額する特例です。
この制度が悪用されているという指摘を踏まえ、次の規制措置が適用されました。
1 居住用宅地の見直し
相続開始前3年間にその者の親族等が所有する家屋に居住していた者と、相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していた者を除外。
2 貸付事業用宅地の見直し
相続開始前3年間以内に貸付けを開始した宅地を除外。
簡単に言うと「3年以上賃貸暮らしをしてきた別居親族や3年以上貸付事業として使っていた宅地」しか特例を受けることができなくなるのです。
小規模宅地等の特例については、以下を参照してください。
平成30年4月1日以後の相続等から。
ただし、改正法案の附則には、税制改正大綱に記載されていない経過措置が盛り込まれています。注意してください。
法人課税
賃上げ及び投資の促進に係る税制
十分な賃上げや設備投資を行った大企業について、賃上げ額の一定割合の税額控除ができる措置が講じられました。
次の場合に、3年間の措置として、給与支給増加額の15%を税額控除できます。ただし、居所税額は、当期の法人税額の20%が上限です。
- 1人当たり平均給与が対前年度比3%以上の増加
- 国内設備投資額が減価償却費総額の90%以上
なお、中小企業については従来から同様の措置が講じられていましたが、次のように変更されました。
通常、1人当たり平均給与が対前年度比1.5%以上増加した場合に、給与支給増加額の15%を税額控除できます。上乗せとして、1人当たり平均給与が対前年度比2.5%以上増加し、かつ、一定の要件を満たした場合には、給与支給増加額の25%を税額控除できます。
平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度。
競争力強化のための税制措置
産業競争力強化法の改正を前提に、法人が、その所有する株式を譲渡し、特別事業再編計画の認定を受けた事業者から株式の交付を受けた場合には、その株式譲渡益の計上を繰り延べることができます。
産業競争力強化法の改正法の施行日から平成33年3月31日までの間に受けた認定について適用。
法人税における収益の認識等の見直し
企業会計における収益認識基準の設定を契機として、法人税においても法令上の明確化が実施されます。
また、返品調整引当金及び長期割賦販売における延払基準の選択制度が廃止されると伴に、それによる影響の緩和を目的として経過措置が設けられました。
その他
次の制度は平成30年度末で期限が到来しましたが、延長されます。
- 交際費の損金不算入制度
- 中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用制限
- 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
平成32年3月31日まで。