会社再建時に悩ましい「評価損益の計上」と「欠損金の期限切れ」問題

01/12/2018会計 税務

会社が倒産する場合に、いくつかの種類があります。
倒産という言葉は、一般的には会社がつぶれるという意味で使われますが、経済実態としてはその後、会社を立て直す行為も含みます。

終結型の倒産(会社法の特別、破産法の適用)と再建型の倒産(会社再生法の適用、民事再生法の適用、私的再建)があるのです。

会社の再建

会社再生法による再建や民事再生法による再建は、法的再建(法的整理)と呼ばれます。再建手続きに公平性・透明性・確実性が確保されますが、裁判費用(予納金)を負担しなければなりません。

一方、裁判外で再建を行うことを私的再建といいます。会社と債権者との合意によって、柔軟な弁済計画・再建計画を立てることができますが、裁判所が係らないので債権者の同意を得ることは簡単ではありません。

評価損益

法人税法では、資産の評価換えによる評価損益の計上は原則として認められていません。しかし、会社更生法では、財産評価の結果にしたがって評価換えが強制されます。また、民事再生法でも、一切の財産について評価損益を計上することができます。

そのため、法人税法においても「更生計画認可の決定」及び「再生計画認可の決定」に伴う評価損益は、その事業年度の益金の額及び損金の額に算入されることになります。
更生計画や再生計画の認可決定があった場合、債権者は一定割合の債務免除を強いられます。逆に言えば、倒産会社側ではここが課税対象になります

アドバイス

倒産会社の仕訳

(借入金) 1,000/(債務免除益) 1,000

また、役員、株主等から私財の提供を受けることも考えられます。

倒産会社の仕訳

(建物) 1,000/(私財提供益) 1,000

(借入金) 1,000/(建物) 1,000

欠損金

倒産会社は、税務上の欠損金を抱えていることが多いと思います。本来ですと、法人税法では欠損金は過去9年分の繰越控除しか認められていないため、それ以前の欠損金がどれだけ多額にあろうとも切り捨てられてしまいます。これを期限切れ欠損金といいます。

しかし、会社更生法や民事再生法の適用を受ければ、先程のように債務免除益、私財提供益及び資産の評価換えによる一定の評価益が計上される<のでこれらに課税されてしまいます。この弊害を避けるために、期限切れ欠損金を含めた欠損金を損金算入できる制度が準備されています

会社更生法事再生法では、そのやり方が若干違います。

会社更生法又は金融機関等の更生手続き開始の決定があったケース

適用要件

会社更生法又は金融機関等の更生手続開始の決定があった場合において、
イ 債務免除益
債権者から債務免除又は債務が消滅したことによる利益を受けた場合
 
ロ 受贈益
役員もしくは株主等である者又はこれたであった者(連結完全支配関係がある連結法人を除く。)から金銭その他の資産の贈与を受けた場合
 
ハ 評価益
会社更生法等にしたがって資産の評価替えをした場合
損金算入額
(1)更生欠損金
①前期以前から繰り越された欠損金額の合計額
②イの債務免除益+ロの受贈益+(ハの評価益ー評価損)括弧書きがマイナスの場合はゼロ
③ ①と②のいずれか少ない方
 
(2)青色欠損金・災害損失金
①ないものとされる金額(マイナスの場合はゼロ)
(1)③-((1)①-青色欠損金・災害損失金)括弧書きは期限切れ欠損金
②青色欠損金・災害損失金ー(2)①
③別表4差引計ー(1)③の金額
④②と③のいずれか少ない方
 
(3)欠損金等の登記控除額
(1)+(2)
差引計を超える場合は、当期に新たに欠損金が発生する。

 

民事再生法等及び合理的な私的整理のケース

適用要件

民事再生法等の再生手続の開始決定・会社法の整理開始の命令。破産法の破産手続開始の決定等の事実が生じた場合において、
イ 債務免除益
債権者から債務免除又は債務が消滅したことによる利益を受けた場合
 
ロ 受贈益
役員もしくは株主等である者又はこれたであった者(連結完全支配関係がある連結法人を除く。)から金銭その他の資産の贈与を受けた場合
 
ハ 評価益
民事再生法等による資産の評定を行った場合
損金算入額
(1)更生欠損金
① 前期以前から繰り越された欠損金額の合計額
② イの債務免除益+ロの受贈益+(ハの評価益ー評価損)括弧書きがマイナスでもそのまま計算
③ 別表4差引計
④ ①~③の最小値
 
(2)青色欠損金・災害損失金
① ないものとされる金額(マイナスの場合はゼロ)
(1)④-((1)①-青色欠損金・災害損失金)括弧書きは期限切れ欠損金
② 青色欠損金・災害損失金ー(2)①
③ 別表4差引計ー(1)④の金額
④ ②と③のいずれか少ない方
 
(3)欠損金等の登記控除額
(1)+(2)

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年の途中で業務用不動産を購入するに当たり、不動産の売買代金とは別に、その不動産に係る固定資産税相当額を所有期間に応じて月割計算して売主に支払った場合、租税公課として必要経費に算入してもいいか?

業務用に供される資産に係る固定資産税は必要経費に算入するとされています(所得税基本通達37-5)。

固定資産税は、その年の1月1日における所有者に課税されますから、年の途中で不動産を売買した場合で、買主が当該不動産に係る固定資産税相当額を所有等で按分して売主に支払ったとしても、買主はその不動産に係る固定資産税の納税義務者ではないので所得税基本通達37-5は適用されません。
問いの場合、買主が支払った固定資産税相当額は、当該不動産の取得価額に算入することとなります。

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Posted by matsui