相続税を大幅に減額してくれる”小規模宅地等の特例”を徹底理解する

01/15/2018会計 税務

小規模宅地等の特例って、何のことかご存知ですか?
相続が生じたときに、条件が合えば相続税を大幅に減額してくれるスグレモノの制度です。

小規模宅地等の特例について

この制度の趣旨は、生活や商売の拠点に使用している不動産の課税価格を一定の範囲内で減額することにより、その拠点が失われることを防止することにあります。
税制改正により、平成27年1月1日以後の相続・遺贈について、基礎控除額の減額及び課税標準一定額以上の税率アップが適用されます。その中で小規模宅地等の特例は、相続税を減額できる有効な手法の一つになります。

租税特別措置法第69条の4
租税特別措置法施行令第40条の2

小規模宅地等の特例の概要 (注1)

小規模宅地等についての相続税の課税価格の特例とは、個人が、相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等又は被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の選択をしたもので限度面積までの部分(以下「小規模宅地等」といいます。)については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額することをいいます。

注1

相続開始前3年以内に贈与により取得した宅地等や相続時精算課税に係る贈与により取得した宅地等については、相続税の課税価格に加算されますが、この特例の適用を受けることはできません。この特例による「被相続人等」とは、被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族をいいます。
また、「宅地等」とは、土地又は土地の上に存する権利で、一定の建物又は構築物の敷地の用に供されているものをいいます。ただし、棚卸資産及びこれに準ずる資産に該当しないものに限られます。

小規模宅地等の特例で減額される割合等

被相続人に係る相続税の小規模宅地等については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、次の区分ごとに一定の割合を減額します。

相続開始の直前における宅地等の利用区分 ケース
被相続人等の事業の用に供されていた宅地等 貸付事業以外の事業用の宅地等 1
貸付事業(注2)用の宅地等 一定の法人に貸し付けられ、その法人の事業(貸付事業を除く)用の宅地等 2
3
一定の法人に貸し付けられ、その法人の貸付事業用の宅地等 4
被相続人等の貸付事業用の宅地等 5
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 6
注2

「貸付事業」とは、「不動産貸付業」、「駐車場業」、「自転車駐車場業」及び事業と称するに至らない不動産の貸付けその他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行う「準事業」をいいます。

 

ケースごとの減額割合は、以下の表をご覧ください。

ケース 要件 限度面積 減額される割合
1 特定事業用宅地等に該当する宅地等 A1 400㎡ 80%
2 特定同族会社事業用宅地等に該当する宅地等 A2 400㎡ 80%
3 貸付事業用宅地等に該当する宅地等 C 200㎡ 50%
4 貸付事業用宅地等に該当する宅地等 C 200㎡ 50%
5 貸付事業用宅地等に該当する宅地等 C 200㎡ 50%
6 特定居住用宅地等に該当する宅地等 B 240㎡ 80%

「限度面積」については、「特定事業用宅地等 A1」、「特定同族会社事業用宅地等 A2」、「特定居住用宅地等 B」及び「貸付事業用宅地等 C」のうちいずれか2以上についてこの特例の適用を受けようとする場合は、次の算式を満たす面積がそれぞれの宅地等の限度面積になります。

A+(B×5/3)+(C×2)≦400㎡

  • A:「特定事業用宅地等」、「特定同族会社事業用宅地等」の面積の合計
  • B:「特定居住用宅地等」の面積の合計
  • C:「貸付事業用宅地等」の面積の合計

特例の対象となる宅地等

この特例は、特定事業用宅地等(A1)、特定居住用宅地等(B)、特定同族会社事業用宅地等(A2)及び貸付事業用宅地等(C)のいずれかであることが必要です。

特定事業用宅地等(A1)

相続開始の直前において被相続人等の事業(貸付事業を除きます。以下同じです。)の用に供されていた宅地等で、次の表の区分に応じ、それぞれに掲げる要件の全てに該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます(次の表の区分に応じ、それぞれに掲げる要件の全てに該当する部分で、それぞれの要件に該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得した持分の割合に応ずる部分に限られます。)。

特定事業用宅地等(A1)の要件

区分 特例の適用要件
被相続人の事業の用に供されていた宅地等 事業承継要件 その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその事業を営んでいること
保有継続要件 その宅地等を相続税の申告期限まで有していること
被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業の用に供されていた宅地等 事業継続要件 相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等の上で事業を営んでいること
保有継続要件 その宅地等を相続税の申告期限まで有していること

特定居住用宅地等(B)

相続開始の直前において被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、次の区分に応じ、それぞれに掲げる要件に該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます(次表の区分に応じ、それぞれに掲げる要件に該当する部分で、それぞれの要件に該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得した持分の割合に応ずる部分に限られます。)。
なお、その宅地等が2以上ある場合には、主としてその居住の用に供していた一の宅地等に限ります。

特定居住用宅地等(B)の要件

区分 特例の適用要件
取得者 取得者ごとの要件
被相続人の居住の用に供されていた宅地等 被相続人の配偶者 「取得者ごとの要件」はありません。
被相続人と同居していた親族 相続開始の時から相続税の申告期限まで、引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで有している人
被相続人と同居していない親族 被相続人の配偶者又は相続開始の直前においてその被相続人と同居していた一定の親族がいない場合において、被相続人の親族で、相続開始前3年以内に日本国内にある自己又は自己の配偶者の所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。)に居住したことがなく、かつ、相続開始の時から相続税の申告期限までその宅地等を相続税の申告期限まで有している者(相続開始の時に日本国内に住所がなく、かつ、日本国籍を有していない者は除かれます。)(注3)
被相続人と生計を一にする被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等 被相続人の配偶者 「取得者ごとの要件」はありません。
被相続人と生計を一にしていた親族 相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその家屋に居住し、かつ、その宅地等を相続税の申告期限まで有している人
注3

読みにくい文章です。この要件に該当するかどうか関心のある方は、非常に多いと思いますから、平易な言い回しにすると次のようになります。

  1. 被相続人に配偶者がいない。
  2. 被相続人と同居していた親族がいない。
  3. 被相続人と同居していない親族に持家がない。あっても、持ち家に住んでいない。

相続開始前の3年間について問われます。自分名義の持家がなくても、配偶者に持ち家があれば要件を満たしません。

  1. その宅地等を相続税の申告期限まで有している。
  2. 相続開始の時に日本国内に住所を有している、又は、日本国籍を有している。

このように、同居していなかった子供も上記の要件を満たせば小規模宅地等の特例を使えます。

特定同族会社事業用宅地等(A2)

相続開始の直前から相続税の申告期限まで一定の法人の事業(貸付事業を除きます。以下同じです。)の用に供されていた宅地等で、次表の要件の全てに該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます(一定の法人の事業の用に供されている部分で、次表に掲げる要件の全てに該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得した持分の割合に応ずる部分に限られます。)。
なお、一定の法人とは、相続開始の直前において被相続人及び被相続人の親族等が法人の発行済株式の総数又は出資の総額の50%超を有している場合におけるその法人(相続税の申告期限において清算中の法人を除きます。)をいいます。

特定同族会社事業用宅地等(A2)の要件

区分 特例の適用要件
一定の法人の事業の用に供されていた宅地等 法人役員要件 相続税の申告期限においてその法人の役員(法人税法第2条第15号に規定する役員(清算人を除きます。)をいいます。)であること
保有継続要件 その宅地等を相続税の申告期限まで有していること

貸付事業用宅地等(C)

相続開始の直前において被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等で、次表の区分に応じ、それぞれに掲げる要件の全てに該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものをいいます(次表の区分に応じ、それぞれに掲げる要件の全てに該当する部分で、それぞれの要件に該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得した持分の割合に応ずる部分に限られます。)。

貸付事業用宅地等(C)の要件

区分 特例の適用要件
被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等 事業承継要件 その宅地等に係る被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその貸付事業を行っていること
保有継続要件 その宅地等を相続税の申告期限まで有していること
被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の貸付事業の用に供されていた宅地等 事業継続要件 相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等に係る貸付事業を行っていること
保有継続要件 その宅地等を相続税の申告期限まで有していること

特例を受けるための手続

この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に、この特例を受けようとする旨を記載するとともに、「小規模宅地等に係る計算の明細書」や遺産分割協議書の写し等一定の書類を添付する必要があります。

税制改正

特定居住用宅地等の適用面積の拡大

(平成27年1月1日以後の相続・遺贈について適用されます。)
特定居住用宅地等に係る特例の適用対象面積が330㎡(改正前240㎡)に拡大されます

適用対象面積の改正

(平成27年1月1日以後の相続・遺贈について適用されます。)
特定居住用宅地等に係る特例の適用対象面積が330㎡(改正前240㎡)に拡大されます
イ 特例の対象として選択する宅地等の全てが特定事業用宅地等(特定事業用宅地等(A1)、特定同族会社事業用宅地等(A2))及び特定居住用宅地等(B)である場合には、それぞれの適用対象面積まで適用可能となります。
すなわち、
A:「特定事業用宅地等」、「特定同族会社事業用宅地等」の面積の合計が400㎡
B:「特定居住用宅地等」の面積の合計が330㎡
まで、選択して各々適用を受けることができます。
ロ 貸付事業用宅地等(C)を選択する場合における適用対象面積の計算については、改正前と同様に調整を行うことになります。
ハ その結果、限度面積は最大で730㎡(改正前は最大で400㎡)まで拡大されます。

一棟の二世帯住宅に係る小規模宅地特例等の適用

(平成27年1月1日以後の相続・遺贈について適用されます。)
一棟の二世帯住宅で構造上区分のあるものついて、被相続人及びその親族が各独立部分に居住していた場合には、その親族が相続又は遺贈により取得したその敷地の用に供されていた宅地等のうち、被相続人及びその親族が居住していた部分に対応する部分が特例の対象となります。

老人ホーム入所に係る特定居住用宅地等の適用

(平成27年1月1日以後の相続・遺贈について適用されます。)
老人ホームに入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地等は、次の要件が満たされる場合に限り、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとして特例を適用することができるようになります。

  • 被相続人に介護が必要なため入所したものであること
  • 当該家屋が貸付等の用途に供されていないこと