暗号資産(仮想通貨)は使うだけで課税される!
ひところ仮想通貨がもてはやされたことがありました。
銀行を通さずにスムーズに送金できること、送金時の手数料が安いこと、資金決済が簡単なこと、が仮想通貨のメリットといわれています。その上に、値上がりを大いに期待して。
しかし、デメリットもあります。価格変動が激しいので資金決済手段として定着するのか疑問です。仮想通貨をやり取りする場を”交換所”とは呼びますが、本当に信頼できるものかどうか、これまた疑問です。つまり、ハッキングや紛失の可能性が高いといえます。
仮想通貨を持っているとどのような場合に税金がかかるのか、一度考えておきましょう。
なお、資金決済法の改正によって、仮装通貨の正式名称は暗号資産になります。
暗号資産(仮想通貨)とは
「暗号資産(仮想通貨)」とは、インターネット上でやりとりできる財産的価値であり、「資金決済に関する法律」において次の性質をもつものと定義されています。
- 不特定の者に対して代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる
- 電子的に記録され、移転できる
- 法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない
代表的な仮想通貨には、ビットコインやイーサリウム等があります。
暗号資産は、銀行等の第三者を介することなく、財産的価値をやり取りすることが可能な仕組みとして高い注目を集めています。
仮想通貨は法定通貨ではありませんがら、裏付け資産を持っていません。利用者の需給関係等のさまざまな要因によって、時価が大きく変動する傾向にあります。
仮想通貨取引に係る個人の税金
仮想通貨取引に税金がかかる場合
【仮想通貨を売却したとき】
仮想通貨を売却した時点で売却価額が購入価額よりも高ければ、その差額に対して課税されます。
例えば、10万円で購入した仮想通貨を20万円で売却
売却価額 | ― | 購入価額 | = | 課税対象 |
20万円 | 10万円 | 10万円 |
【仮想通貨で買い物をしたとき】
買い物に使った仮想通貨の時価が仮想通貨の購入価額よりも高ければ、その差額に対して課税されます。
例えば、10万円で購入した仮想通貨で18万円の時計を購入
時計購入価額 | ― | 仮装通貨購入価額 | = | 課税対象 |
18万円 | 10万円 | 8万円 |
【仮想通貨で他の仮想通貨を購入したとき】
他の仮想通貨を購入した時点の元の仮想通貨の時価が元の仮想通貨の購入価額よりも高ければ、その差額に対して課税されます。
例えば、10万円で購入した仮想通貨で15万円分の他の仮装通貨を購入
他の仮想通貨購入価額 | ― | 仮想通貨購入価額 | = | 課税対象 |
15万円 | 10万円 | 5万円 |
【仮想通貨をマイニングによって入手したとき】
仮想通貨取引の承認作業(マイニング)を行うことによって、対価として仮想通貨を得ることができます。
この場合には、対価として受け取った仮想通貨の時価からマイニングに要した経費を差し引いた額に対して課税されます。
仮想通貨取引にかかる税金
仮想通貨取引で得た利益は、雑所得として取り扱われます。
雑所得とは、他の9種類の所得(事業所得、不動産所得、給与所得、退職所得、配当所得、利子所得、山林所得、譲渡所得、一時所得)のいずれにも当たらない所得をいい、公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金などが該当します。
仮想通貨取引で利益が上がる等20万円以上の雑所得が発生すると、所得税がかかります。
税金がかかるといっても、給与所得のように源泉徴収されるわけではありません。
仮想通貨取引による利益を自分で計算して確定申告をし、納税する必要があるのです。
仮想通貨取引にかかる税金の計算方法
雑所得は、給与所得等ほかの所得と合算した額に応じて税率が決まります。このため、利益が多額になれば、累進課税によって所得税の税率は最大45%までアップします。
【所得税の速算表】
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
仮想通貨同士の損益や雑所得内での損益は差し引きが可能ですが、他の所得とは損益通算はできません。
損益通算とは、各種所得金額の計算上生じた損失のうち一定のもの(不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得)についてのみ、一定の順序にしたがって、総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額等を計算する際に他の各種所得の金額から控除することをいいます。
また、株式投資では損失が発生している場合、向こう3年は損失を繰り越すことができます(繰越控除)。しかし、仮想通貨取引による損失は繰越控除できません。
仮想通貨取引に係る法人の税金
法人の場合、個人の税金と違う点は保有しているだけでも課税されるということです。
すなわち、仮想通貨を時価評価して、その評価損益に対しても税金がかかるのです。
仮想通貨の譲渡損益
法人が仮想通貨の譲渡をした場合には、その譲渡に係る譲渡利益額又は譲渡損失額は、原則として、その譲渡に係る契約をした日の属する事業年度の損益の額又は損金の額に算入されます(法人税法第61条第1項)。
この場合の譲渡原価の額は、移動平均法又は総平均法により算出した一単位当たりの帳簿価額にその譲渡した仮想通貨の数量を乗じて計算されます(法人税法第61条第1項第2号)。
仮想通貨の時価評価損益
法人が事業年度終了の時に有する仮想通貨のうち活発な市場が存在する仮想通貨(以下、市場仮想通貨という)については、時価法により評価した金額をその時における評価額とし、自己の計算において有する場合には、その評価益又は評価損(以下、時価評価益又は評価損という)をその事業年度の益金の額又は損金の額に算入します(法人税法第61条第2項、第3項)。
なお、その事業年の益金の額又は損金の額に算入された仮想通貨の時価評価益又は評価損に相当する金額は翌事業年度の損金の額又は益金の額に算入(洗い替え処理)されます(法人税法施行令第118条の9第1項)。
【仮装通貨の評価方法等】
区分 | 評価方法 | 評価損益の取扱い | |
市場仮想通貨 | 自己の計算において有する仮想通貨 |
時価法 |
益金(損金)算入 |
自己以外の者の計算において有する仮想通貨 |
益金(損金)算入しない |
||
市場仮想通貨に該当しない仮想通貨 |
原価法 |
株式等譲渡所得 (1)
過去3年の各年分に生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額があり、当年も上場株式等に係る譲渡損失が生じている場合、当年の上場株式等に係る配当所得からこれらの損失を差し引く順序は、納税者に有利なように、一番古い年分からと考えていいか?
損益通算と繰越控除の両方がある場合、上場株式等に係る配当所得等(上場株式等に係る利子所得又は申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得)から損失を控除する順序は次のとおりとなります(租税特別措置法37の12の2⑤、租税特別措置法施行令25の11の2⑧)。
① 本年分(損益通算)
② 本年の3年前分
③ 本年の2年前分
④ 本年の前年分
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